「お客様こちらの武器はいかがでしょうか??」 〜サラリーマンから異世界で伝説の『鍛治師』専属のセールスマンに転職してヒドイ目にあう珍道中〜

佐渡の鹿

【プロローグ】

バキンッーッ


 火龍の爪を弾き返す代償に、伝説のドラゴンキラー『フェラリュスティ』が半分に折れる。


「ジェッダッ、退却しよう!!その剣じゃもう戦えない、死んじゃうよ!!」


「だめだ!!ここでこいつを倒さなければ麓の村がこいつの犠牲になる、俺は勇者だ!!逃げない!!」


「でももう武器がないわ!!お願い今なら。」


 勇者の腕にしがみつく女魔法使い、そんな二人をよそに火龍はとどめのブレスを溜める。


そして竜の口からまばゆい光と灼熱の炎が放たれる。


「「キャァぁぁぁ・・・・・?」」


二人の前には黒い布の服を着た男が、


「お客さま!!ご覧ください。こちらの商品はあの伝説の鍛治師『ハバキ』の作った伝説級の武器その名も

 素材は鉄と持ち手は樫でお玉にコーティングしてあるのはミスリルでございます。

火龍のブレスもこの通り!!通常価格5,000タクルス金貨のところなんと大特価!!

1,980タクルス金貨で販売いたします!!」


「なっっ、お前何を考えている!!ここは戦場だぞ!!こんなところで商売をっ、しかもおたまだと!?」

「お客さまがご不満なのはわかります!!おまけで伝説の鍋の蓋も・・・」


「「ふざけるなッッ!!」」


 涙目で男を睨みつける勇者と女魔法使い、火龍はブレスをやめて爪を振り下ろす

男は懐から鍋の蓋を取り出す、ガキィィィ


「お客さま!!ほらご覧くださいこの強度。傷の一つもつかないし、軽い!!

盾も武器もございませんのでしたら今回はこの二つ合わせて1,880タクルス金貨でどうでしょう。」


ガキィンッ


「勇者がっおたまだと!!」「では1,800タクルス金貨」 「傷がなくても今使われてるし・・・」


ガガガッー


「そんな勇者がいてたまるかぁ!!」 「1,780」 

「勇者は黙ってて!!1,300!!」


ドゴォっ ガガガ


「1,750」「1,400」「1,700」「1,500」


ドゴォぉぉぉぉ


「1,550」「買ったわ!!」


 おたまと鍋の蓋を受け取った勇者は火龍の攻撃を弾き返しながら苛烈なたたきを繰り広げている、後ろでは金貨の枚数を数える男と女魔法使いの姿。


「剣技!!『スターライトストライク』ッッッッッ」


 頭上に飛んだ勇者が急降下し火龍の頭におたまを振り下ろす。

グワヮヮヮンとおたまが鳴り火龍の額が大きくへこむ。


「お〜い峰央。帰るぞ〜。」


「はい、ハバキさん。毎度ありがとうございました〜。はははは」


 俺は「山崎峰央みねお」24歳サラリーマンだった俺は、会社で残業中に突然眠気に襲われて。

なんだかんだあって伝説の鍛治師の武器を売り捌くセールスマンに転職ジョブチェンジしてしまった。

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