第37話 立ちはだかる敵
サランサが案内して、リーカーとエミリーは王宮への抜け道を通っていた。暗く狭い道を潜り抜け、ようやくかすかな光が見えてきた。
「もう少しです。」サランサはその光の方に進み、そこの小さな戸を開けた。そこは王宮の倉庫に通じていた。3人はやっと穴を出て、静かに倉庫の外に出た。幸いなことにそこには誰もいなかった。サランサは先頭に立ってそこから庭に出て王宮の建物の裏口の前に出た。「あらっ? 誰もいない・・・」サランサは意外だった。不思議なことに、ここに警備の兵はいなかった。
「どうかしましたか?」リーカーが尋ねた。
「いえ、警備の兵がいなかったものですから・・・。でもここから裏の通路を通って女王様のもとに向かえます。」サランサが言った。
「ではサランサ殿はここで待っていてください。ここからは我らだけで。この先は戦いが待っております。」
「いいえ、ここまで来たからには・・・」サランサが言いかけた時、辺りに物音がした。すると裏口が開き、ザウス隊長が現れた。警備の兵は中で眠らされていた。
「待っていたぞ。ここを通すわけにいかぬ。貴様たちはここで死ぬのだ。」ザウス隊長が言った。サランサはリーカーの前に立って、
「そこをどきなさい。ザウス隊長。無礼は許しません。」と凛とした声で言った。
「サランサ様こそお退きください。私はそこの2人に用がある。巻き添えになる前に王宮にお戻りください。そうしなければサランサ様でも容赦は致しませんぞ。」ザウス隊長は威嚇するような強い口調で言った。
「サランサ殿。お下がりください。ここからはもう我らの戦い。あなたの親切には感謝する。さあ。」リーカーはサランサに言った。
「わかりました。でもエミリー様は私がお守りします。それだけはお許しください。」サランサはエミリーの手を引いて後ろに下がった。リーカーは深くうなずき、そして身構えた。
「貴様はもう死んだことになっている。すぐにここで殺してやる!」ザウス隊長が言った。
「今度はやられぬ。」リーカーは剣を抜いた。
「また同じことだ。
「またしても!」リーカーは剣を構えた。邪悪な気を放つ黒龍がリーカーに鋭い爪を向けてきた。剣で何とか防いだが、黒竜の執拗な攻撃は続いた。
「貴様はこれまでだ!」ザウス隊長はそう言って剣を抜いた。またリーカーに背後から必殺技を放とうとしていた。
「リーカー様。助太刀いたします。
「貴様など、俺の剣だけで十分だ!」ザウス隊長はリーカーに向かってきて剣を振り下ろした。リーカーはとっさに避けて後ろに下がった。
「漆黒の
「うむっ。」リーカーはそれを剣で何とか受けとめた。それは何度も何度も襲ってくるがそのたびにはね返し、ザウス隊長との間合いを少しずつ詰めていった。かえってなかなか決めきれないザウス隊長に焦りの色が見えていた。
「おのれ!」業を煮やしたザウス隊長は斬殺魔法をかけた。そして一気に決めようと剣を振り上げて向かって来た。剣が黒い光を放っていた。
「いくぞ!」リーカーも剣を握り締めて向かっていった。そして呪文を唱えて
「***
を発動し、その剣は光った。そのすれ違いざま、「バーン!」と閃光が一瞬、きらめいた。そしてそのまま両者は通り過ぎて止まった。しばらくの静寂の時間が流れた。
「ドサッ!」いきなりザウス隊長が倒れた。空中に浮かんでいた黒竜も消えた。リーカーは息を吐くと、剣を下ろしてゆっくり振り返った。足元のザウスは目を見開いたまま無念そうな顔で死んでいた。
「これほどの使い手が悪に染まるとは・・・。必ずワーロンを倒さねば!」リーカーはそうつぶやいた。
王宮の中から、なにやら慌ただしく人が動き回る音がしていた。
「さあ、今のうちに。誰も来ないうちに。」サランサはせかすように言った。
「ああ、行くぞ!」決意を新たにしたリーカーは王宮に入っていった。その後をサランサがエミリーの手を引いて続いた。
ワーロン将軍とマークスの激しい斬り合いが始まった。それは見たことがないほど苛烈なものだった。お互い五分と五分、なかなか決着がつきそうになかった。
「いつまでも貴様の相手などしておられぬ!」ワーロン将軍は呪文を唱えた。すると体に邪悪な気が集まってきた。
(こんな魔法を・・・いや、これは闇の魔法。禁忌とされるものをどうして奴が・・・)それは王家に伝わっているが邪悪なものとして封印されているはずだった。
「いくぞ!」ワーロンは剣を振るって来た。その剣は邪悪な気を放ち、強い力を持っていた。マークスは魔法の剣で何とか受け止めたが、2度3度と何度も打ち合ううちに傷の癒えていないマークスに限界が来た。それでも気力を絞って剣を振るっていたが、その邪悪な剣の強い衝撃に体ごと弾き飛ばされ、向こう側の壁に叩きつけられた。
「う、ううう・・・」マークスは体に大きなダメージを受けて動けなくなった。そんなマークスを放っておいてワーロン将軍はエリザリー女王の部屋に向かった。
「女王様・・・お逃げください・・・」マークスはそう言うのがやっとだった。
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