第4章　マールの町

　サランサのもとに白フクロウが戻ってきた。もちろんリーカーの伝言を持っていた。

「おかげで私とエミリーは無事だ。私たちは敵の目が多いオースの森を出ることにした。マールの町に向かう。ではまた。」

　サランサはリーカーとエミリーが無事なのを知ってホッとした。しかしリーカーが森を出るという・・・

（人の多いマールの町に行かれて大丈夫なのかしら・・・。）サランサはそう思った。

　リーカーとエミリーはマールの町に到着した。そこは多くの旅人が集まるにぎやかなところだった。

（なるほど・・・これなら人ごみで紛れることができるかもしれない・・・）リーカーはそう思った。だが人の多いのに比例してやくざ者も多く集まっていた。

「おい！　ここを仕切っているのはヤニマの親分だ。金が出せないって言うのかよ！」大きな声が聞こえた。そこを見ると小さな旅館の前で若い女将がやくざ者に絡まれていた。

「そうおっしゃられても・・・。しがない商売ですので。」女将は恐怖で顔を青ざめながら言った。

「そんな言い訳が通るかよ！　さあ、出せ！　出さないとこの旅館をぶっ潰すぞ！」やくざ者が脅してきた。女将は震えて答えることができなかった。

「何か言えよ！」やくざ者が女将の胸ぐらをつかんだ。

「きゃあ！」女将が悲鳴を上げた。するとすぐに、

「痛っ！」と今度はやくざ者が悲鳴を上げた。女将をつかんだやくざ者の手が、何者かの手で捕まれてひねられていた。

「よせ！」それはリーカーだった。

「貴様！　誰だ！　邪魔すると痛い目に合うぞ！」そばにいた別のやくざ者が言った。近くにいたほかのやくざ者もリーカーを睨みつけた。

「大の大人が集まって若い女性を脅すとはどういうことだ！」リーカーは放り投げるようにやくざ者の手を放した。

「何を！　やっちまえ！」やくざ者たちが拳を振り上げてきた。リーカーはそれをかわして素手でやくざ者たちを叩きのめしていった。

「うわっ！」「痛っ！」やくざ者たちは悲鳴を上げて倒れていった。リーカーは息も乱さず、その場に傲然と立っていた。とても敵わないと思ったやくざ者たちは、

「覚えていろ！」と捨てセリフを残して逃げて行った。

「ありがとうございます。」女将が礼を言った。

「いえ、礼を言われるほどのことは・・・。しかしなぜあのような者たちがこの町にのさばっている？」リーカーは尋ねた。

「普段なら王宮から派遣された魔騎士様が守ってくださるのですが、なんでも妻を殺して我が子を人質にして逃げ回るという極悪な男がいるらしいのです。その探索のため魔騎士様はしばらくこの町を出ておられます。そのためにあんな男たちがこの町を我が物顔で歩いているのでございます。」女将が言った。

「そうであったのか・・・」リーカーの探索のためこの町には彼を狙う魔騎士はいないようだった。

「助けていただいたお礼にこの旅館にお泊りください。そんな極悪な男がこの町に来ているかもしれません。お代はいいですからしばらくご逗留ください。小さなお子さんをお連れでもありますし。」そう女将は言ってくれた。

「それは助かる。しばらく厄介になる。」リーカーは頭を下げた。これでしばらく魔騎士の探索を逃れられると。

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