美術館の幼馴染

バブみ道日丿宮組

お題:戦争と美術館 制限時間:15分

美術館の幼馴染

「よく来たね」

「来なさいっていったのはあなたでしょう」

 あたしは、幼馴染に誘われて、美術館へと足を運んだ。

「くるときとこないときがあるけど、なんで?」

「あたしにだって予定ぐらいあるわよ」

「そうなの?」

「そうわよ」

 堂々巡りしそうなので、一呼吸。

「美術館集合だなんて、なんか意味あるの? デートにしては味気ない」

 高校生で美術のよさを知る人間のほうが少ないだろう。

「面白いものが入ってさ。さあ、入って入って」

 入場ゲートをスルーして、中で手招き。

 幼馴染はこの美術館を経営してる両親の子どもなので、顔パスとなってる。そうとはいっても、誰が入ったかの記録はとられてる。

 監視カメラにあたしの映像はびっしりと映し出されて、またあいつかという話題になってることだろう。

 美術館は決して高い入場料を求めてるわけじゃない。

 けれども、その入場料で給料が払われてるので、多少なりとも影響はある。

「ここだよ」

 幼馴染に連れてこらえたのは、倉庫だった。

 ここでは飾られる前の作品が置かれてたりするから、一番セキュリティが高かった気がするのだが、

「入っていいの?」

 その扉は簡単に開けられた。

「いいよ。今回のは僕の買い物だったからね。ステージに飾られることにはなると思うけれど、その前に君に見せたくてね」

 なんだ。彼氏らしいこともできるんじゃないか。

「ふ、ふーん。そう」

 手を握られ、そのまま倉庫内へ。

 そういえば、ここでこないだ繋がったのよね。映像は消してあるって言ってたけれど、本当かしら? 幼馴染の両親にあたしのあられもない姿が晒されてないだろうか。

 不安は、不安だった。

 でも、幼馴染はできるタイプ。なら、信じるしかない。

「どう、これ」

 大きな金庫の前に連れてこられ、中身を見せられる。

 そこには、A3サイズの絵が入ってた。

「戦争を主体にした作品なんだ」

 見るポイントを口と手を使って、教えてくれる。

 良さが全然わからなかった。

「こういう作品はね。国に壊されたりしてしまうことがあるんだ。踏み絵みたいなものだね。異教徒のように扱われたりもしたんだ」

 ふーん。そうなんだ。

「次はこっち」

 金庫を閉めると、手をつなぎ次の場所へ。

「これはどうかな? 君に似合いそうだけど」

 小さな金庫から取り出したのはーー金色の……どうみても下着だった。

「なにこれ? ここに連れてきたのもこれが目的?」

 思わず身体を守るよう抱きしめる。

「これはおまけで入ってさ。普段遣いには使えないし、えっちのときにきてもらおうかなって思ってさ」

 何万円するんだろうか。この金色のは、本物なの? 着て大丈夫なやつ?

「はい。あげる」

「え、えぇ……? 美術品でしょ? 飾らなくていいの?」

「これは一応一般販売してるやつだからね。かなりの高額商品であるけどね」

 そんなものをもらっていいたのだろうか。

「今履いてみて」

「えっ?」

「ダメかな?」

「ここで?」

「そう。具体的にいえば、さっきの戦争の絵の前で下着を見せて欲しい」

 どういう思考をしてるのだろうか。

「……ちょっと考えさせて」

 幼馴染からのプレゼントは嬉しいが、痴女にまたなるのだと思うと、ちょっとあれだった。

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美術館の幼馴染 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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