17.【追憶2】
映画関係者が昼にもう一度来て詳細な打ち合わせを行った。
その際に選ばれた社員には撮影度の詳細が渡され、春ニが今自室で読んでいる。
メンバーは俺を含み六名
三船春ニ・鈴島麗奈を添乗員兼連絡係二名、機関士二名、調理スタッフ二名が撮影スタッフと連携をしながら撮影を行うことになる。
俺は春ニが眠りについた後で『忍さんからの手紙』にもう一度目を通した。
正確には『手紙に細工が施された指令書』に目を通す、虫眼鏡で拡大する。
といくつかの文字に小さな穴が開けられている。
穴が空いた文字を全て繋げると指令が完成する。
『女優を守れ、あちらはお前を知っている。『こどく』をかぎまわれ。』
「いつもいつも曖昧な指令だ。俺が神通力でもを持っていると思っているのか?」
この司令書で撮影旅自体が何らかの作戦に利用される事を察した。
これから残り五十分弱で調査を行う。
いつも通り変装してから社員寮を抜け出す、今回は茶髪にメガネの一般男性を装う。
映画関係者は利用されるだけだから調べる意味はない。
司令の通り『こどく』を調べる。
裏街へと入り適当な奴らに聞き回る、できるだけ目立つように。
反応としては毒物屋を紹介されるくらいだった。
ここまでは想定内だ。
それでから適当な料理屋に入り軽く茶を飲みながらあたりが来るまで待つ。
ここまでで大体残り四十分くらいだろう。
一杯飲んだら近くの出口へと向かう。物陰から男達が五人出てくる。
「よぉ兄さん裏街はどうだった?楽しかったかい。」
「えぇ、初めて来ましたけれど楽しかったですよ。」
「そうかい。あんたは何をしにここに来たんだい?女か?土産か?」
「はははまあ前者ですかね~。」
男の一人が近づくと匂いを嗅いでくる。
「兄貴こいつは嘘ですぜ。汗もあまりかいていないし香水の匂いも薄い・・・本当は何をしに来た?」
「実は、お兄さん達に会いに来たんですよ。知ってるんでしょ『こどく』。」
「なんのことだかさっぱりだ。」
男達がジリジリと周りを囲んでくる。前後左右を囲み、兄貴と呼ばれた男は少し離れたところで様子を見ている。
「なぁ~兄さん。かりにその『こどく』っていうのが見つかったらどうするんだ?使うのか、何をするんだ。」
「別にどうもしません、知りたいだけなので。」
「あぁもう面倒臭ぇ~。身ぐるみ剥いでからゆっくり聞くとするか。」
背後の男がナイフを取り出し、周りの男達も拳を構える。
目の前の男がこちらめがけて殴りかかってくる。
ヒュッー
左に避けざまに頭を掴んで右膝に引き寄せて男の顔面に衝撃を与える。
ガンッー
男の顔面から盛大に鼻血が噴き出す。
背後の男がナイフを振り抜く、一振りしたら肩めがけて右足で蹴りを一発。
後ろによろめいた男の顔面をそのまま右足で蹴り飛ばす。
「ぐぉっ、てめ~」
左に立っていた男が掴みかかろうと飛び込んでくる、そのまま押し倒される勢いを利用して転がる。
男の腹部に足を当てて後ろの壁に叩きつける。
残りは目の前に残っている男と兄貴と呼ばれた男のみ。
様子を伺っていた男が近づいてくる、その顔が怒りで歪み、叫ぶ。
「てめぇ!!よくも俺の子分をやりやがったな、許さねぇ!!」
二人揃って懐からリボルバーを取り出す。
右の男がこちらに銃口を向けた瞬間に左手でリボルバーを叩き落とす。
間髪入れずに右手で男の首を掴んで盾にする。
男が撃つのを躊躇ったその一瞬に盾にしていた男の首を離してから、
男の方に向かって蹴り飛ばす。
男の体が避けようとかわした瞬間に一気に距離を詰める。
右手で男の右手を掴み、左手は男の胸ぐらを掴む。
腰を男の腹部に当てながら浮かして、背中を丸めるようにして地面に叩きつける。
ズバァンー!!
「ッッハァッ・・・ぐぅぅぅ~なっなんなんだよお前は!?」
「時間がない、さっさと『こどく』について答えろ。」
男の上に馬乗りになって顔面を一発殴る。
ガンッ
鼻が曲がり鼻血を垂れ流す、胸ぐらを右手で掴んで引き寄せる。
「おぉ教える!!組織だよ!!この国で古株の組織だ!!」
「お前はその組織の人間か?」
もう一発顔面に叩き込む。
「ちっ違う!!誰が組織の人間かなんてしらねぇ~よぉ。
俺はここら辺の賭場の使いっ走りだ、親分の命令で『蠱毒』を嗅ぎ回っている奴を襲えって・・・」
「『蠱毒』をどこまで知っている。何をしている。知ってることは全部話せ。」
「しらねぇ~!!何も!!いや一つ知ってる!!でも噂だぜ・・・」
「時間がないって言ってんだろ。」
男の顔面を左手で殴る。
「ひぎぃ、わかったぁ~。
いいか噂話!!に、二年の事件!!
あれ唆したのが『蠱毒』っていう話だ。理由わわからない!!
武器を売るだの邪魔な組織を潰しただのって言われてる!!」
「その組織と接触するには?」
「無理だ!!親分だって探してんだよ!!」
胸ぐらから手を離す。
「わかった、十分だ。」
「はぁっはぁ」
男の胸ぐらから手を離して立ち上がる。
男に背中を向けると背後から金属音がする。
「はぁッ、ハァッ、許さねぇ。面子ってのがあるんだ!!卑怯だと言われてもお前を殺ッー」
ズバァァンッツ
右足を回し蹴りを放ち、男の右手のリボルバーを叩き落とす。
「じゃあな。」
男の首がカクッと項垂れて男の股の辺りに水溜りを作る。
男に背をむけて走り出す。
残り十分弱、不味いギリギリだ。急いで寮へと向かう。
社員寮から五分の位置にある裏街の出口から顔を少し出して周囲を見回す。
残り九分。
社員寮の壁に開けておいた抜け道から中に入る、服を着替えている時間は無い。
今回はベットの下にでも隠そう。
残り四分。
急いで木を登って部屋の窓に飛び移る。
部屋に入って服を脱ぐ。
コンコン
音を立てないように扉の覗き穴を覗く。
「・・・・もう寝ちゃってるかな。」
寝巻き姿の先輩が部屋の前に立っている。
息を潜める。
残り二分。
トッ トッ ッ ッ
歩き去ったのを確認する。まずい服を着る時間がない。
残り三十秒。
◇
「クシュんっ・・・あれ?なんで!?」
布団を剥がすと僕の状態に驚いた、全裸だった。
「さっ寒い!!」
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