【開示可能な情報】

新兵にむけたハイテンション教官のざっくり世界史

 ここは基地内の大講堂、すり鉢状になっていてその底にはステージがある。

ステージには両面に地図が貼られた黒板があってその目の前に一人の若い男が立っている。


「やぁ新兵諸君。諸君は『バサナシア共和国』の軍事力の一端を担う優秀な兵士の端くれになったわけだ。

俺の名前かい?えぇ~どうしようかな~。

まあそのうち知れ渡ることになるから教えちゃおうか~。

デェディー・クロースターだよ。よろしくよろしく。」


「最初に言っておくけどちょっっっと長い授業だから聞きたくない人は聞かなくてもいいよ~。

だけど『そういう感じ!!』『へ~』ってなりたい人だけ聞いてくれればいいから。」


目の前の男が黒板の地図を棒で指し示す。


「さっそく眠たい授業を始めようか。

まずこの世界。


バサナシアはこの地図の左っの方の島、大陸の半分くらいの大きさね。

この大陸を四等分して、その中心の四分の二が『バサナシア共和国』。そう!!マイホーム!!


ここから右に行くとなんか四角いパウンドケーキをネズミがかじったみたいなのあるでしょ。

これが大陸『アールグランド大陸』。


ここで質問、そこのメガネ君。

この大陸の最西のこの部分とここの上の方にちょびっとある島が領土の国は?」


目の前の席のメガネの男が起立して答える。


「『ウィンダルーシア王国』です。」


「そう!!その通り!!いい眼鏡をしている!!


ここは島が本土、その他は何だかんだで手に入れた所。島には純血の美人エルフ!!

エルフははるか昔からいます。

この人たちが昔に存在してた魔素を使って魔法とか編み出しました。

今ほとんど使えないけど・・・でも!!研究が凄い!!

今の文明の源の蒸気機関とか、近年使ってる燃料系の機関とか作った本場。


 そうそう、燃料系の兵器とかも最近というかここ二十年?くらいからどんどん開発されてるけど・・・

いまいちピンとこないよね~。

水とか石炭から別のやつに変えただけとかおもってない?すごさがよくわからない?その原因がこちら。」


 男が懐から細長いガラスの筒を取り出す。両端には穴が空いていて筒の中心に小さな石が浮いている。


「これが魔素変換器!!ざっくり言うと蒸気機関と同じで物質が放つ熱とかのエネルギーを魔素に変換します。

あっれ~、魔素無くなったんちゃうん?


違う違う無くなったのは世界から。


この世界の魔素は二種類ありました、一つは空気に混じってた超ヤバい量。

もう一つは物質の微量に内蔵されている魔素。


エルフ達がなんかハッスルして無理やり作ったのがこれ、これを使うとあら不思議何でもかんでも性能アップ。


動力だったり通信だったり、放出系ならなんでもアップ。

けどちょー高い。

この石がどこにあるのかわからない、金とか石油とかと同じ・・・・はい今これがめっちゃあるのはどこ?

はいそこのナイスバディの嬢ちゃん!!」


 ホール中央のスタイルのいい金髪のクールビューティーがメガネをクイっと上げながら答える。


「上官殿先程の発言はセクハラです。あと、答えは『ウォーレン連合王国』です。」


 男が身震いしながら続ける。


「あっれ~。今の発言ダメなやつ?軍法会議?やだよぉぉぉ。

 俺この前も叱られたんだからぁぁ。


それはさておき、この大陸の最東ここウォーレンは元々一つの国だったけどいろんな資源が出たりとか王宮がてんやわんやでいろんな地域にいる統治軍のボスが実質国みたいに管理してます。


まあ群雄割拠的なやつ、今は落ち着いてるけど。


 まぁそんな国を他の国が放っておかないから、それぞれにバックアップがついてます。

はいその中でも人気No.1海運、陸運何でもあって商売繁盛。

 おまけに大陸の鉄道の主力があるのが・・・・


『霧江』って地域。

エルフ、ドワーフ、獣人が夢と自由を求めてやってくる。


ここの後ろ盾は・・・・この大陸からちょっと離れたこの島。ちっさ。

はいそこのマッチョメン。」


 目の前の筋肉質な男が答える。


「『月照帝国』です。」


「そう!!正解。

 この国ちょっと前まではあんまり有名じゃなかったけどこの魔素変換装置の改良化に大成功して兵器に取り付けまくったの。


 大砲につけたら超飛ぶし威力やばいし。なんだかんだで有名になったわけ。

えっ!!じゃあ魔素変換しまくり?生活パネぇってなる?

いやいや。

 

 魔素変換器は貴重だから戦艦とかそういう系に運用されるので生活的にはうちらと同じ?かな。

一般兵の武器はボルトアクションのライフル銃でちょっと古い、だけどめっちゃ切れる剣持ってる。


 なんでかみんな格闘技やってる国民多い。

この前ナンパしようとした女の子の出身がここで・・・綺麗に投げられたよね!!


で・・・何でもかんでもつけまくったらやっぱ出来上がるものっておおきくなるでしょ~。」


 男は口を窄めて空気をシューシュー吐きながら懐からおもちゃを取り出してステージを走り回る。


「じゃーん『つばめ』。これ結構でかいらしいよ。

さっき言ってた魔素変換器を蒸気機関とくっつけたから機関自体がデカくなって、それに合わせて巨大化。

水も燃料もその分必要になるかな~って思うじゃん。

なんとなんとどういう仕組みかは知らないけど半分くらいに抑えてるらしいよ。


その分をなんとシャワーとかトイレとかに使うらしいよ!!凄くない!!列車に付いてんの!!


この秘密を暴こうとしてるけど中々あばけないのよ~。

個室も多くて早くて泊まれる観光列車、その割に一般の人もそこそこのクラスなら乗れちゃうの。」


 男は懐から懐中時計を取り出すと大げさに口を開ける。


「ワァオ!!もうこんな時間じゃないか!!

フレースとのデートの時間だ!!っとい・う・わ・け・で。わかったかな~!!

 これがこの大陸の大体の地理だよ~。

君たちがこの基地にいる間にいろんな情勢が変化するからそれを理解するために今後もこうやって授業をしますからね~!!」


 そう言って男は階段を駆け上がり大講堂の扉を開ける。すると男は猛スピードで駆け抜ける。


「おい!!デェディーが脱走したぞ!!犬持ってこい!!」

ワンワンワン


「おいイヌッコロどもこの俺様の恋路を邪魔するのか!!このお尻食らうか!!ぁぁぁ!!やっぱやめっぇぇ!!」


 僕の後ろにある扉から見えたのは兵士二人に両脇を抱えられた男、その尻には犬が二頭右と左別々に噛み付いている。


ーこうして『バサナシア軍学校兼陸軍駐屯地』の新兵オリエンテーションが終了した。

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