0.【コードネーム『死神』1】
「ふわぁぁ」
大きな欠伸を一つ出しながら僕は、スーツに袖を通す。
茶色い革の鞄を持ち、制服と揃いの制帽を被る。
僕は「
自室の扉を開けて振り返る、玄関脇に置いてある写真立てを見る。
「行ってきます。雪一兄さん。」
そう言って静かに扉を閉める。
◆
「おはようございます。」
そう言いながら会社の扉を開ける。
忙しそうに書類をまとめる人、コーヒーを片手に談笑する男達で賑わっている。
「春ニくんおはよう。相変わらず眠そうね〜。あっボタン掛け違えてるよ。」
「えっ!!ほんとだ気付かなかった。」
後ろから声をかけられる。白くてウェーブがかかった髪を揺らして笑いかけてくる。
『
優しくて、頼れる先輩であり、美しく可憐な容姿はこの会社の男性陣を虜にしている。
「そんな感じで仕事の方は大丈夫かな?」
「た・・・多分?」
少し頬を膨らませて怒った仕草をしながらまどの外を指差す。
「いい?君はあの列車『つばめ』の添乗員なのよ。今日は客室が満員で、いつもよりもお客様が多いから失礼の無いようににするんだよ。君はすぐボーっとしちゃうから心配よ。」
窓の外にはボォォォっと黒い煙を吐く蒸気機関車『つばめ』が停車している。
車両は計7車両で食堂、客室に展望車両まである最新鋭の列車だ。
僕は『
「本当に大丈夫かな〜?」
「だっ‥大丈夫ですよ、多分」
「春ニ君って結構見てると心配。変なトラブルに巻き込まれるもの、車両に入り込んでた鳩に追い回されたりドワーフの酔っ払ったおじいちゃん達に孫と勘違いされてどんちゃん騒ぎを起こすし‥あれでしょ‥これ‥」
「さ〜てお仕事始めようかな〜」
立ち去ろうとすると麗奈さんがあっ!!と声を上げる。
「おっはようございまーす!!」
ガンッー 勢いよく開けられた扉が僕の側頭部を殴った。
「いっっっ〜、もう竹田先輩!!もっと優しく扉を開けてくださいよ〜。」
「わりぃわりぃ、小さくてわからなかった。ははは。
あっ三船!!さっきお前宛の手紙を預かったぞ。」
そう言って竹田先輩は、手紙を渡して颯爽と駆け去っていく。
手紙の差出人はー 三船 ー
僕は孤児院の出で、4歳になったばかりの時に三船家へ引きとられ、育ててもらった。
霧江大陸鉄道会社に入ってからは手紙でのやりとりのみになっている。
封筒の中には3枚の手紙がはいっていた2枚は三船家の近況と自分を心配する内容。3枚目は白紙だった。
どう見ても白紙、目を凝らすようにみても、何も書いていない。
手紙を内ポケットへとしまいホームへの扉を開けた。その瞬間に、意識が途切れた。
◆
線路内のコンテナ置き場。車両とコンテナで周囲から目撃される心配の無い関係者しか立ち入らない場所。
右側からザッザッ、誰かが近づいてくる。トレンチコートにハンチング帽子を被った茶髪の男が近づいてきた。
「あんたが死神か?思っていたよりも若いな。」
「」
「あぁそういうことか…。この棒だ、俺専用の“武器兼暗号ツール“だ。ほら、確かめてくれ。」
男から渡された棒はペンぐらいの大きさで中身は直径5mmほど、手のひらに隠れるぐらいのサイズだ。
両端の形状は異なっていて、片方は針になってる。
もう一方は端が六角形に切られている、手紙の点字にピッタリ当てはまる。単なる点字であれば自分が打ったという証明ができないため、保身から六角形に加工したんだろう。
「お前が『本田勝矢』か。156番で合っているな。」
男に棒を返しながら確認を取る。
「内容は司令書で確認した。どこまでお前はわかっている?」
「僕の方も確認させてくれよ。お前が本物である証拠をな。」
「」
ポケットから封筒と司令書を出して本田に見せる。そして、この二つを細かく破いていく。
「白紙には所々に穴が空いていたよく見ないとわからない程に。目を凝らしてわかったとしても我々にしか通じないモールス信号で書かれていた。ここまではあっているか?」
「ああ、俺にはその暗号の解き方だけは知らされているからな。わかった認めよう。それで?内容は?」
「キジと一緒に、三匹の子豚を加工しろ。あとはお前の番号が書いてあった。」
ポケットからマッチを取り出して手紙を焼き尽くす。
「今回のコードネームは『キジ』か。それで?これからどうする。」
鞄から紙を出して本田に渡す。腕時計で時刻を確認すると8時54分を指していた、そろそろ行かないとこいつがまた怒られてしまう。
「その紙に書いた事をやればいい。俺は仕事をしながら任務を遂行する。」
「頼もしい死神さんだ。でもそろそろ教えてくれよ。俺も名前を教えたんだぜ、……なぁ。」
「そもそも俺にコードネームも番号も無い。……俺は–」
俺は『
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