【なろう日間1位獲得】クラスの白ギャルがニマニマしながら俺に彼女を紹介してくる【1話目読了後タイトルの本当の意味が分かる!】

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

二人に片思い

二人の人に同時に片思いするというのは「二股片思い」でいいのだろうか!?

これは、不誠実な感情なのだろうか。




俺には『好きな人』というか、『気になってる人』が2人いる。

これは平凡な高校生の俺が、同時に2人に失恋し、そして付き合うことになるまでの物語だ。




■クラスの白ギャル蒼さん

俺が好きな人は、全くタイプが違う2人。

一人目はクラスの女子、蒼(あおい)さん。


すごい人気でちょくちょく告白されてるらしい。

かなりの頻度で、他のクラスの人からも告白されているという話。

とにかく人気だ。

俺には、そんな真似できないから、遠くから見てるだけの存在。


だけど、かわいい!

とにかく、かわいい!

特に笑顔がかわいい!!


ギャルっぽいけど、全然黒くない。

むしろ美白という感じ。

こういうのを『白ギャル』とか言うのだろうか。


髪はちょっと茶色で全体的にウェーブしてる感じで、背中くらいまでの長さ。

友達も多くて、いつも周りに人がいる。


典型的なリア充で、カーストで言うと最上位のグループに存在していると言っていいだろう。




白ギャルなのに天文部に入ってて、ここはちょっとイメージが違う。

ただ、天文部はきっと偽装だと俺は睨んでいる。


天文部になれば、屋上の鍵が使えるのだ。

昼休みには、屋上で何人かと弁当を食べているみたい。


天文部には、あの本田もいる。


『あの』というのは、校内に知らないものは無いくらい有名ということ。

本田は、校内一のイケメンともっぱらの評判だ。

校内で1番モテているのは間違いない。


本田が天文部に入ったから、女子が6人も入部して廃部を逃れたって話を聞いたことがある。

蒼さんは、この『本田ハーレム』の一人か、それとも、本妻か……

どちらにせよ、俺にとっては面白くない話だ。


同じ天文部でも、クラスの増本さんは、元々天文部だったから、ハーレム要員かは微妙なところだろう。




俺としては、やっぱり蒼さんと本田がどうなっているのか、気になっていて以前、昼休みに屋上に行ってみたことがあった。

屋上の扉の鍵は見事に閉まってた。

鉄の扉は俺には開けられない。


俺と蒼さんを隔てる物理的な壁だった。

心も近づけないのに、物理的にも近づけない。




この扉の向こうでは、蒼さんと本田がキスしているのかもしれないのだ。

それだけでも、俺の心は落ち着かないのに、もっとすごいことをしてるのかもしれない……

俺は、ドアに耳を当てて、向こう側の音を聞いてみたことがあるが、外の音は聞こえなかった。





放課後の蒼さんは、2秒後には教室に姿がない。

きっと、屋上に行ってるんだろう。


屋上の『本田ハーレム』に直行って訳だ。

天文部が、日々明るい空を見て、どんな活動があるというのか……

そんな活動なんてある訳がない。


答えは明らか。


蒼さんは、『白ギャルでビッチ』という訳。

俺の手には余る存在だった。


それでも、見た目が好みで、とてもかわいい。

俺の心は彼女に惹かれてしょうがない。



恋というのは厄介だ。

気付いたら目で追いかけているのだから。

俺は、誰にも気づかれないように心がけている。



好きだけど、好きになれない。

これだけ可愛ければ、人生楽しいだろうなぁ、という憧れ半分。

俺の面白みのない人生と交換してほしいという、やっかみ半分。


俺の頭の中では処理しきれない存在。

『タグ』を付けようとしても、ちょうどいいタグを思いつかない存在。

それが蒼さんだった。






「蒼さぁ、誰だったら付き合うの!?例えばこのクラスだったら誰がタイプ?」



また告白を断ったという話を聞いて、増本さんが蒼さんに聞いた。


二人は天文部で、この日は天文部組が全員教室にいた。

外が、雨なのが理由だろう。




俺は、机で寝たふりを決め込んでいた。

本当に寝られればいいのだが、周囲でがやがやしている中、寝られるほど俺の神経は図太くない。

ただ、弁当も食べてしまったし、することがないのだ。

こんな時は、寝たふりだ。


ただ、増本さんの質問内容には興味があった。

あの蒼さんの好みのタイプとは、どんな男なのか。


かなりの人数に告白されているみたいだが、全部断っているらしい。

どんな男なら、そのお眼鏡にかなうのか。

興味があるのはしょうがない。




俺は、寝たふりのまま、耳だけは二人の会話に集中した。



「2組の本田は?」


「えー、イケメンはちょっと……」


「イケメン超よくない!?」


「高級料理は消化不良起こしそう……」


「庶民派か!」



蒼さんと本田とは、いつも天文部で一緒ではないのか!?

どんな付き合いなんだよ。



「じゃあ、逆に橋本は?」



橋本とは、俺のことだ。

突然、自分の名前が出て心臓が飛び出るかと思った。


ただ、『逆に』が気になる。

『逆』とはなんだ、『逆』とは。



「うーん、普通に『良い人』って感じ」


「え!?どこが?私、全然印象ないけど」



じゃあ、なぜ聞いた!?



「ふっふっふっ、私は橋本くんの秘密を知っているのだよ」



なんの話だ!?

俺はお前と交流などない。



「なーんてね」



単なる思わせぶりだった!

リア充はこういう冗談を平気で言って、俺の様な下々の者を振り回す。


俺の『慌て心』を返せ!

すまん、『慌て心』ってなんだ?



「じゃあ……」



クラスの男子を次々リコメンドしてく増本さん。

気にしていないフリをしていたが、多くの男子はその会話の内容に聞き耳を立てていたに違いない。






■ダサメガネ双葉さん

俺のもう一人の片思いの相手は、帰りがけのコンビニの店員さん。

双葉さん。


多分、フリーターだろう。

俺はほとんど毎日、このコンビニに行くけど、ほとんど出勤している。

外から見て、双葉さんがいる日は店に入って買い物しているのだ。


名札で名前はチェック済み。

背はちっちゃくて、制服の帽子が似合っていて、髪はピンで止めてる感じ。

制服のシャツはピシッと着ていて、好印象。


メガネで、垢抜けない感じ。

だけど、そこがかわいい!

癒される。

半年かけて、一言二言話せるようになった。


話しかけるために、何か買うときは、他の客がいないタイミングで買うようにしてる。

俺の挙動はおかしく見えるかもしれないから、時として、万引き少年と間違われるかもしれない……


まあ、声はかけられたことがないからよしとしよう。




双葉さんも、時々挙動がおかしくなるのが魅力の一つ。

純真そうで、付き合うなら絶対双葉さんがいい。


本当は、俺もこのコンビニでバイトをしたいくらいだ。

だけど、うちの学校でバイトは厳しく禁止されている。

見つかったら、退学もあり得るらしい。


そこまでのリスクを負ってまでは、働きたくない。

別の方法で仲良くなればいいのだ。






「今日は温かいですね」


「そうですね。レジ袋はお付けしますか?」


「あ、いらないです」


「ありがとうございした~」


最後の『ありがとうございました~』の後の笑顔がかわいいのだ。


この程度の会話。

でも、『店員と客』よりはちょっとだけ、仲が良い会話をしている!


……しているよね?




双葉さんを好きになったきっかけは、別にたいしたことじゃない。

もう何か月か前の話だけど、会計の時に、双葉さんがレジ周りの不要レシート入れを倒したのだ。

たまたま手が当たっただけ。


そしたら、要らないレシートがレジ前にバラまかれてしまった。

双葉さんは慌ててレジから飛び出してきて拾っていた。

目の前でそんなことが起きたのだから、俺も当然一緒に拾った。




言ってみればゴミなのだから、そのまま捨ててもよかったのだろう。

双葉さんは、不要レシート入れにまた戻した。

律儀というか、まじめというか……


その時に『ありがとうございます』って言われた。

その笑顔にやられた。


普段地味な感じなのに、あの輝くような笑顔。

一発で恋に落ちた。

密かに愛でる俺の天使だ。

それが双葉さん。




俺の物語は、日常の推しを密かに愛でる日常だ。

それで満足。

それ以上は、高望みというものだ。






■ある日のコンビニ

俺の充実した日々に、ちょっとした事件が起きた。


いつもの様に双葉さんのいるコンビニに行くと、おばちゃんがレジの双葉さんに文句を言っていた。

俺は、会計に行きたいが、他の客がいないときを狙って買い物していたので、おばちゃんが文句を言うのが終わるのを待っていた。


ところが、このおばちゃん、いくら待っても文句が止まらない。

肉まんの具がいつもより小さかったとか、熱すぎるとか文句を言っていた。


双葉さんはどう考えてもバイトだから、肉まんなんて作っている訳がない。

せいぜい温めただけだろう。

『お店の人』ということで、文句を言いたいのは分かるけど、もう15分は文句を言い続けている。




レジは、もう一人のバイトが一人で対応しているので、常に渋滞している。

おばちゃんの文句はまだ続いている。

待てども待てども文句は終わらない。


俺の双葉さんにクレーム付けているだけでも頭にくるのに、もうかれこれ30分は文句を言い続けている。

よくそれだけ言うことがあるな!


どんだけ肉まんに思い入れがあるというのか。






さすがに堪忍袋の緒が切れた。


「おばちゃん、さすがに文句言いすぎじゃない?店員さんも困ってるし、客も困ってるよ?警察呼ぶ?」


「え?私、文句言いすぎ!?」



おばちゃんは周囲のことが見えなさ過ぎているようだ。



「俺の目には異常に見えるけど?ちょっと待って、今、警察呼んであげるから」



俺がスマホを取り出し、『110』と入力するふりをする。



「い、いえ、大丈夫!大丈夫だから!」


「いや、大丈夫とかじゃなくて、店員さんもこんなに小さくなってるし、あんたも納得いかないんでしょ!?」


「い、いえ、ごめんなさいね。おほほほほ……」



おばちゃんは、誤魔化すようにして逃げ帰ってしまった。






「あ、ありがとうございました……」



目が合うと、双葉さんからお礼を言われてしまった。



「あ、いえ、目に余る感じだったので……俺もすいません。でしゃばって」


「そんなことありません。助かりました」



双葉さんとお話ができた。

しかも、お礼を言われた。

ここ数カ月で一番いい日だな。




気分良く、買い物を済ませて、俺はコンビニを出た。

良いことをした後は気分がいい。


コンビニを出たところで、双葉さんがコンビニの裏の方から駆け寄ってきたことに気づいた。

どうしたんだろう?



「あの……すいません」



ダサメガネの双葉さんが話しかけてきた。



「さっきは、ありがとございました !」


「あ、いえ、ちょっと目についたから…」


「学校じゃ全然話さないのに、決めるときは決めるね! キュンとしちゃったよ?」


「いや〜、それほどでも〜……ん?!」



いま、なんつった!?



「あれ?もしかして、気づいてなかった?」



双葉さんが眼鏡をはずした。

いやいやいや、なに?

この謎行動。


眼鏡をはずしたらなに?

確かに、かわいいけども。



「あれ?まだピンと来てないよね?」


「え?はい?」



双葉さんが帽子を取って、ヘアピンを外した。

すると、ぐしゃぐしゃながら、少し茶色いふわふわヘアーが出現。

双葉さんは、髪の毛を手櫛で整えていった。


あれ?え?あれ?



「あ、蒼さん!?」


「はい、蒼さんです。てか、急に名前呼び!?」


「え!?双葉さんが、蒼さん!?」


「いやいやいや、双葉蒼さんだから!」






「はあぁ~~~~~~~~~~~っっ!?」






近所に俺の声は響き渡った。



「いや~、ほら、『お客様は神様』だから、理不尽なクレームでも、言い返せないから助かったよ~」



俺と双葉さんは、コンビニ裏のコンクリートの出っ張りに座って話した。

缶コーヒーを双葉さんがおごってくれた。



「いや、俺は、双葉さんが、蒼さんという事実をまだ受け止めきれてない……」


「あ~、よく買い物に来てくれてるとは思ったけど、やっぱり気付いてなかったかぁ」


「そりゃあ、クラスメイトがコンビニで働いてるとか思わんし!」


「普通に働いてるし!」


「俺の純愛、返してくれよぉ……」


「なに?純愛って」


「はーーーっ、何でもない」



俺は深いため息をついた。

絶望から、取り返しがつかないようなことを言ったような気もするが、それはもうどうでもいい。



「あれ?ちんちくりんの方が好きだった?帽子かぶってメガネかけようか?」


「もう、いいよぉ。俺の好きだった『双葉さん』は、もうこの世にいない……」


「え?私のこと好きだったの!?このダサメガネなのに?」



双葉さんが、帽子とメガネを自分の顔に当てて言った。



「素朴な感じが好きだったけど、ビッチのコスプレだと分かったらピクリともこないわ……」


「あ!ひっど!ビッチって!それはひどくない!?」


「でも、昼休みとか、放課後とか、屋上で『本田ハーレム』でしょ……」


「ぶっ…『本田ハーレム』ウケる!」


「ビッチ萎えるわぁ……」


「昼休みの屋上は、女の子しかいないよ?みんなお弁当食べてるだけだし」


「じゃあ、放課後はぁ!?」


「放課後は、知らんけど、私ここのバイトあるから、チャイムダッシュだし」


「あ……」



そうだ。

双葉さんは、ほとんど毎日コンビニにいる!

俺は、双葉さんってフリーターだと思っていたくらいだし。




「ビッチは誤解だってわかった!?」


「ごめん……学校のイメージが強くて……」


「わかればよろしい」



双葉さんのドヤ顔が見れた。

そうか。

『蒼さん』は、放課後すぐにコンビニのバイトに行っていたのか……


チャイムが鳴ったら、2秒後には教室から姿を消していた。

てっきり屋上の「本田ハーレム」直行だと思っていた。


それが、実は勤労少女だったとは……



「あと、名前は!?偽名でバイト!?」


「違うわっ!『双葉蒼』が名前。なんか変な誤解してるでしょ!?クラスメイトの名前くらい覚えときなよ!」


「俺、クラスでは『蒼さん』だと思ってた…みんなそう呼んでたから……」


「リア充なめんな。名前呼びがデフォでしょ」



双葉が苗字で、蒼が名前か……

紛らわしい名前にすんなよ。


誰に言ったらいいんだ!?

双葉さんの親か!?蒼さんの親か!?



「双葉さん、なんでそんなにバイト入ってるの?」


「え?私、卒業したら働くし。今からお金貯めて一人暮らしすんの」


「まじめか!」


「褒めんなし」



白ギャル『蒼さん』とダサメガネ『双葉さん』が同一人物という衝撃事実が発覚し、俺は精神的に疲れた……


双葉さんが蒼さんで、双葉蒼さんで……なんか俺、失恋してないか?

俺の好きだった双葉さんはもういない…… (涙)






■翌日からの学校

翌日の学校の昼休み、蒼さんが話しかけてきた。



「橋本くんさぁ、屋上行かない?おベント持って。」



蒼さんが自分の弁当箱の包みをぶら下げているのを俺に見せる。


クラスの男子たちが一斉にざわざわし始めた。

分かる。


クラスの『ザ・平凡』の俺に、ヒエラルキートップの白ギャルでいらっしゃる蒼さんが話しかけた上に、屋上に弁当を持って一緒に行こうと誘ってきたのだ。

ただ、これはそういう色っぽい話じゃなくて、いじめなのだ。


口封じ的にシメられるのだ。

『私がバイトしてること絶対に誰にも言うなよ』みたいな。


ついに呼び出しを喰らうまでになってしまった。

これは完全にいじめの予感だ。

きっと、弁当を屋上の地面にバラまかれて、這いつくばって食べろとか言われるに違いない。



「あれ?橋本くんも連れてくの?」


「うん、ちょっとね」



増本さんは、俺が連れていかれることを知らなかったらしい。

いじめは蒼さんの単独犯らしい。


日記に書いておこう。

まあ、日記つけてないけど。




(ガターン)大きな音を立てて屋上の鉄製の扉が開けられた。


これまで、俺が開けることができなかった、俺と蒼さんを遮る物理的な扉。

扉の向こうは抜ける様な青空だった。



「はい、ここが『本田ハーレム』だよ」



蒼さんが右手で『どうぞ』のポーズをした。

俺がドアをくぐると、そこには数人の女子がいて、ポカーンとしていた。


俺はなんて言っていいか分からず、止まった。



「橋本くんが、天文部に興味あるって」



俺の後ろから、蒼さんの声が聞こえた。

そんな話は知らないぞ。

一言でも言っただろうか!?



「えー!ホント!?男子部員助かるー!」

「男手は大歓迎!」



なんか歓迎ムードだけど、俺は全くその気がない。



「とりあえず、一緒におベント食べようと思って連れて来たー」


「なるほどね」



増本さんが妙に納得していた。




とりあえず、段のところに座ったが、隣に蒼さんが座った。

『なにそのお弁当、お母さん作?』とか聞いてきたので、ふたで隠しつつ弁当を食べた。


蒼さんは、ちっこいお弁当箱にこじんまりとおかずが入っている可愛い弁当だった。

もしかしたら、自分で作ったのかも。



「今度、お弁当作ってあげようか!?」


「ふっ……」


「あー!鼻で笑った!傷つくー!」



蒼さんには揶揄われてばかりだ。


座る場所の関係で、みんな横並びで座って弁当を食べる。

変な光景だ。


本当に、天文部の女子だけで弁当を食べているだけみたいだ。

そもそも本田がいない。


増本さん情報によると、本田は放課後だけ屋上に来るらしい。

それも、時々だけ。


まあ、この女子だけの空間に男が一人いると考えたら、普通にいづらいだろうな。

実際、今、俺が現在進行形でいづらいし。


しかも、何人かは本田目当てで天文部に入っていると聞いた。

俺だったら落ち着かない。



「どう?『本田ハーレム』だった?」



蒼さんが、ニシシといたずら顔で聞いてきた。



「ごめんって、昨日謝ったろ?」



ふてくされ顔で答えた。

昨日謝ったのに、わざわざ現場を見せるなんて。

よっぽど俺に謝らせたかったのか。



「元々廃部の危機だったから、マスモーに言われて私、入部したの」



『マスモー』は増本さんのことだろう。

彼女は元々天文部だった。

蒼さんが頼まれて入部したってことか。



「でも、その後、本田くんが入ってくれたから、女子が増えちゃって、廃部の危機は回避したの」


「へー」



ほとんど毎日バイトに入っているなら、部活は邪魔だろうに。

必要なくなったなら、辞めればいいのに。



「蒼さんは辞めなかったの?」


「うん、お昼に大自然でお弁当食べられる特典付きだからね!」



外ではあるが、『大自然』ではない。

蒼さん、中々に面白い人だ。



「橋本くんも天文部入ったら?蒼さんとお弁当一緒に食べられるよ?」


「言ってろ」


「あー、橋本くん、私に興味ないんだぁ」



少し不満そうな蒼さん。

可愛いとは思うけど、付き合いたいかと言われれば、答えに困る。

蒼さんはモテまくりだし、俺はやきもち焼きちらかすだろう。


その点、『双葉さん』は……



「はーーーーーーっっ」



『双葉さん』のことを思い出した。

あの『双葉さん』は、目の前の、『蒼さん』と同一人物だった……


『双葉蒼さん』だった……

俺の双葉さんはもういない……



「あー!目の前でめちゃくちゃ深いため息!これまでに経験のないリアクションなんだけど!」



蒼さんはオコでいらっしゃる。



「ふーん、橋本くん的には、『双葉ちゃん』の方が好き的な?」



俺の顔を覗き込んでニマニマする蒼さん。

めちゃくちゃ揶揄ってる。

これだから、リア充は嫌なんだ。



「なになに?『ふたば』って誰?蒼と同じ名前?」



他の天文部員が食いついた。



「私がねぇ、橋本くんのキューピットになってあげようって話!」


「マジ!?恋バナ!?聞きたい!聞きたい!」



周囲が前のめりで聞いてくる。

俺のテンションは底まで下がりっぱなし。


蒼さんが、俺の肩に手を回して耳元で言った。



「『双葉ちゃん』を週末デートに誘ったら?あの子絶対OKするよ?」


「……」



どんなマッチポンプだ。

双葉さんは、蒼さんだし、その事も俺は知っている。


蒼さんが、自ら俺にそのことを話したんだし……

絶対揶揄ってる。

そして、めちゃくちゃ楽しんでる。


その証拠に、いたずら顔が輝いている。

めちゃくちゃイキイキしてる。



「『双葉ちゃん』ね、今日のシフト10時までだから、その頃、迎えに行ってあげなよ!きっと喜ぶよ?」


「……」


「なになに?その『ふたばちゃん』が橋本くんの好きな人!?」


「……」



もうね、なんていいっていいか……

蒼さんと周囲ばかりが盛り上がり、俺のテンションは反比例してダダ下がり。



「橋本くんに助けられて『双葉ちゃん』キュンってきたらしいよ!?デートに誘ってあげなよ?絶対OKすると思うよ?言ってたもん!」



頭が痛くなってきた。

クラスの白ギャルがニマニマしながら俺に彼女を紹介してくるんだが……


きっと俺は、言われるがままに、今日の10時にあのコンビニに『双葉さん』を迎えに行くんだろう。

そして、週末のデートに誘うのだろう。


ついでに、天文部にも入るのだろう。




目の前でニマニマしている蒼さんの顔はむかつくけど、むちゃくちゃ可愛くて好きな顔立ち。

『双葉さん』と付き合うためには、『蒼さん』とも付き合ってくことになりそうだ。



「ねえねえ、どこにデート連れて行くの?蒼さんが一緒にコース考えてあげようか?」


「あぁ、はいはい、お願いします」


「あ、私も私も!」



天文部総出で俺の週末のデートコースを考えてくれるらしい。

イマイチ納得はいかないけれど、俺も多分笑っていたはずだ。

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