エピローグ

 色々とあったがリリアーナはようやく穏やかな日々を過ごしていた。


「お姉様、このドレスなど宜しいのではないでしょうか?」


「あきらかに安物じゃありませんの。良い事、貴族の社会では流行遅れの服やどこにでも出回る安物の服なんか着ていたら笑い者ですわよ」


赤いドレスを手に取り見せてくるメラルーシィへとエルシアが呆れた顔でそう説明する。


「リリア。どれでも好きなドレスを選んでくださいね、わたくしが買って差し上げますわ」


「ねぇねぇ、これなんてリリアに似合うんじゃないかな?」


相変わらずお姉さんぶるセレスの横から黄色のドレスを手に持ってきたフレアがそう尋ねた。


「それはフレア様の好きな色だからではありませんか。リリアさんにはもっとこう落ち着いた色の方のが。そう青色なんかどうでしょう?」


「じ、自分で選ぶので、大丈夫ですわ」


ルーティーが言うと鮮やかな青色のドレスを見せてくる。そんな彼女達へとリリアーナは断る様に言ってドレスを探す。


それから数時間後にようやく皆欲しいドレスが見つかったようで購入し店から出る。


「お、やっと来たか」


「女性は買い物が長いとは聞いていたが……さすがに待ちくたびれたぞ」


アルベルトが言うとエドワードが待ちぼうけを食らいつかれたといった感じで話す。


「でも、いいドレスが買えたんでしょ? 早く見たいなリリアのドレス姿」


「今日の晩餐会で見れるんだからもう少し待てばいいだろう」


リックの言葉にルシフェルが呆れた顔で言う。


「それじゃあ次はぼく達の買い物に付き合ってもらうからね」


「町に出歩いていい時間帯は夕方十八時までだから、急いで買い物を済ませた方が良いでしょう」


マノンの言葉にキールがそう言って皆を促した。


「リリア、俺に似合う礼服はどんなものだと思う?」


「え、ええっと。落ち着いた色なら似合うんじゃないかしら」


(まさか、フレンがお兄ちゃんの生まれ変わりだったなんて、始めは本当に驚いたけど、でもフレンがお兄ちゃんって知っても結局付き合い方はあんまり変わらないのよね)


フレンの言葉に聞かれたリリアーナは慌てて答える。と同時に内心で彼が前世で幼いころに死に別れた兄であると分かってはいるものの、どうしてもぎくしゃくしてしまう関係に溜息を零す。


「そうか、リリアがそう言うならそれでいい」


「そういえばどこかの町には王国一の仕立て屋さんがあるそうですよ」


フレンが小さく頷いた時何かを思い出したメラルーシィがそう言ってきた。


「私も聞いたことがありますわ。そこで仕立ててもらった服はとても素晴らしいと評判らしいですわね」


「今度皆で服を仕立ててもらいに行きましょうよ」


エルシアの言葉にフレアが良いねと言いたげに話す。


「学園の規則で旅行するなら親の許可が必要です。それと学生だけでの旅行は禁止されています。誰か親族もしくは付き人が一緒に行くのなら問題はないですが」


「許可を貰えば問題ないなら、決まりだね!」


「親族はちょっと厳しいけれど、付き人を連れていけれるなら問題ないですよね」


リックの言葉にルーティーも手の平を叩いて喜ぶ。


「まだ、許可が下りていないというのに……まったく君達糠喜びになったって知らないからな」


(穏やかな日々というより、なんか賑やかで楽しい日々と言ったほうが良いのかもしれないけれど……でも、この世界の人達と仲良くなれて、友達もいっぱいできて学園生活が送れるなんて私今とっても幸せだわ)


エドワードの話を聞きながらリリアーナは内心で呟き満足そうに微笑む。


こうしてリリアーナ・カトリアーヌはシナリオにない未来を歩み始めたのである。

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