第十四章 主人公組とお友達になりました
冷汗を流しこれからどうすれば正解なのかと考えるリリアーナ。
「これでお姉様はもう大丈夫ですね。ふふ、私お姉様と普通にお話ができるようになって嬉しいです」
「よし、それじゃあこれからリリアと友達記念パーティーを開きましょう」
嬉しそうに微笑むメラルーシィの横でフレアが提案する。
「なら、私パイを焼きます」
「それじゃ俺達は部屋の飾りつけだな」
ルーティーが言うとアルベルトがそう続けた。
「部屋はわたしの部屋でやりましょうか」
「フレア様のお部屋ならみんな入れるからね」
王女の言葉にマノンが答える。
そうしていつの間にかリリアーナのための歓迎パーティーが開かれることとなり、逃げ道を失った彼女は彼等に連れられ寮へと戻った。
「こほん! ……それでは、これよりリリアとお友達記念&リリア奪還おめでとうパーティーを開催します」
リックが一つ咳払いをするとそう言ってジュースの入ったグラスを掲げる。
「それじゃおれのヴァイオリンを披露しよう」
(そういえばルシフェルはヴァイオリンを幼いころから習っていて得意だったわね。彼のルートじゃないと出てこないんだけど、メルがルシフェルのヴァイオリンの演奏を聞く場面があったな)
ルシフェルが言うとヴァイオリンを構える。その様子を見ながらゲームの内容を思い出したリリアーナは内心で呟く。
「……」
彼が一呼吸おくとヴァイオリンを奏で始める。しばらくの間部屋中に心地よい音色が響き渡った。
「おぉ、さすがはルシフェルね。素晴らしい演奏だったわ」
(生でこの演奏が聴けれるなんてゲームのファンとして最高の気分だわ!)
盛大な拍手の嵐に彼が綺麗にお辞儀をする。そんなルシフェルへとフレアが声をかけた。
リリアーナも内心で絶賛し拍手を送る。
「お待たせしました。パイが焼けましたよ」
「ルーティーのパイは絶品だから是非みんなで食べてみて」
ルーティーが焼きたてのパイを持って入って来るとマノンが取り皿をみんなの前へと配りながら話す。
(ルーティーの手作りパイ。それも彼女との友情イベントで出てきたのよね。メル達美味しそうに食べていたから私も食べたい物ランキングのうちの一つだったのよね。あぁ、まさか本物を食べられる日が来るとは!)
人数分に切り分けられたパイが取り皿に乗せられる様子を見ながら彼女は内心で声をあげ生唾を飲み込む。
「い、いただきます……」
逸る気持ちを抑え上品にパイを切り一口分を放り込ませる。
(ん、ん~ん! 美味しい。ルーティーのパイ美味しすぎる)
「ふふ。お口に合ったようで良かったです」
幸せそうな笑顔を浮かべ一心不乱にパイを食べ続けるリリアーナの様子に、ルーティーが嬉しそうに微笑み言う。
そうして滞りなく歓迎会は進んでいき気が付いたら彼女はすっかりメラルーシィ達と打ち解けていた。
「今日は楽しかったです。また皆でこうやって集まってパーティーをしたいですね」
「なら今度やる時はメルの手作りクッキーも食べたいわ」
「メルの手作りクッキーは美味いからな」
メラルーシィの言葉にリリアーナがそう言うとアルベルトも納得した顔で頷く。
(いや~。今日は楽しかった。ルシフェルのヴァイオリン演奏を生で聞けたり、ルーティーの手作りパイが食べられたり。主人公組とお友達になれたし……って、何か忘れているような)
皆と別れて自室へと向かいながら彼女はふと何か忘れているような気がして立ち止まる。
「リリア!」
「っ!? ……エル、様」
血相を変えて駆けつけてくるエルシアの姿にリリアーナは驚くのと共に何か仕打ちを受けるのではないかと身構えた。
「貴女だけ置いてみんな逃げてしまったって聞いて……あの女達に何かされなかった?」
「え?」
こんな取り乱した様子の令嬢の姿などゲーム画面では見たことがなかったので驚いて固まる。
「べ、別にあなたが全然戻ってこないからって心配していたわけではなくてよ。ただ、貴女を奪還するとかなんとかってリックが言っていたって聞いて、あの女達に連れて行かれたまま帰ってこないんじゃないかって思ったのは確かですわ。でも、決して心配していたわけではないんですわよ」
「エル、様……」
腕を組み弁解するように話をするエルシアの様子にリリアーナは状況がつかめず呆けた声をあげた。
「また……私と二人きりの時はエルさんって呼んでいいといったはずですわよ」
「ご、ごめんなさい。エルさんが私の事を心配してくれていたなんて思ってなくて……」
(むしろこのまま主人公達と友達になった事を知って酷い仕打ちを受けるのではと思っていた)
不貞腐れる令嬢へと彼女は答えながら内心で口に出して言えない言葉を呟く。
「だから心配なんてしていないって言ってるじゃありませんの。と、とにかく。今日はもう遅いですので部屋に帰ってもいいですわ。それからこれからしばらくの間はあの女達に近づかないように。貴女はおとなしくしているように。いいですわね」
「は、はい」
言われた言葉に素直に返事をするしかなくて承諾するとエルシアが安堵したような顔になる。
「話はそれだけですわ。いい、明日からはあの女達に見つからないように過ごすんですわよ」
「はい。……では、私はこれで」
念を押され頷くと自室へと向けて歩く。
(エル様ってあんなキャラだったっけ?)
疑念を抱くも答えが出てくるはずもなく疑問を抱いたままこの日は床に就いた。
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