第七章 双子の姉弟登場
ついにイベントが発生する部活動選びの日となった。
「さて、あの女の泣きっ面でも拝みにまいりましょうかしら」
(ついに来た。早くイベント見たいな)
エルシアが不敵に笑う横について歩きながら、リリアーナはにやける顔を必死にこらえる。
「会長達が相手じゃ、あの女も敵わないでしょう……おほほほほっ」
(いやいや、それが双子の活躍によって助かっちゃうわけなのよね。クイズ対決で大活躍するわけよ)
彼女の言葉にリリアーナは内心で突っ込みを入れて早く双子に会いたいと思った。
「ちょっと、リリア。さっきから黙り込んで、私が話しているんだから何か答えなさいよ」
「も……ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて……」
エルシアが不機嫌そうに言ったので「申し訳ありません」と言おうとして彼女がさらに機嫌が悪くなったのを見て慌てて言い直す。
「考え事? いったいどんなことを考えていたのか知りませんけれど、私の言葉にちゃんと答えなさい。……別に貴女が返事をしないから寂しいとかじゃなくてよ」
「はい。……すみません」
「ふ、ふん。分かればいいんですわ。さぁ、着きますわよ」
二人でそんなことを話していると生徒会とメラルーシィの姿が見えてきた。
「メラルーシィさん。貴女が来てからというものこの学園では騒動が起こっている。エルシアさん達ともめもごとを起こしたと聞いてますわよ」
「そこで、生徒会もこれ以上黙って見過ごすわけにはいかなくなった。ことが大きくなる前に君には退学してもらおうという話だ」
「そんな……待ってください。私は何もしていません」
「そうだ。悪いのはすべてエルシアだろう。なんで、メルを責めるんだ」
セレスがきつい口調で言い放つとエドワードもそう話す。
その言葉に彼女が慌てて口を開くと、アルベルトも待てと言わんばかりに言い放った。
「アルベルトさん。いくら婚約者といえど、生徒会の決定したことに逆らうと貴方も退学させられることになるんですよ」
「だからって、何も悪いことしていないメルを黙って退学させられるかよ。俺は物申す」
キールの言葉に彼がそう言って食らいつく。
「言って分かってもらえないなら仕方ない。……では、私達と勝負して優秀な成績を収められたなら今日のところは引き下がってあげます」
「勝負……ですか?」
「勝負って一体どんなことをするんだ?」
会長の言葉にきょとんとした顔になるメラルーシィの横で、どんな無理難題が出てくるのだろうといった感じでアルベルトが尋ねた。
「そんなに不安にならなくても大丈夫ですよ。ただのクイズ対決です。ね、簡単な勝負でしょ」
くすりと笑いキールが言った言葉に二人はそれなら大丈夫かもしれないといった顔をする。
「そうですね。グループ戦で、私達生徒会の四人と勝負することそれが条件です」
「グループ戦ですか」
「ちょっと待て、グループって……」
「そうね、あと二人誰か誘わないと無理ですわね。流石は生徒会長ですわ」
グループ戦と聞いてほうほうといった感じの彼女とは対照的に、いきなり窮地に立たされたことに気づいた彼が待てと言わんばかりに口を開く。
その様子を高みの見物しているエルシアが「勝負は決まったも同然ね」といった感じににやりと笑った。
(さあて、そろそろ双子が登場するわね。ふふっ)
そんなエルシアの横で別の意味でにやにや笑っているリリアーナは次の展開が訪れるのを待つ。
「あれ、メルさん。こんなところで何をなさっているんですか?」
「一緒に部活動を見に行く約束だったじゃないか。……って、なにこの空気。何かあったの」
穏やかな口調の少女が声をかけてくるとそっくりな顔の少年が嫌な空気間に顰めっ面をする。
「お前達ちょうどいいところに。これから生徒会とクイズ対決するんだがお前達メルを助けると思って手伝ってくれ」
「わ~。クイズ対決ですか面白そう」
「……かまわないよ。でも事情は後で説明してもらうけどね」
アルベルトが助かったといった感じに二人を引き込む。それに彼女達は快く引き受けてくれた。
「あんなのありですの?」
「ルーティー・ベステリアさんにマノン・ベステリアさん。メラルーシィさんと一緒にいるだけであなた達も生徒会に目を付けられることになりますよ」
セレスがヒステリックに叫ぶと会長へと意見を求めるように見やる。
その視線を受けたキールが二人へ向けて諭すように話す。
「何があったかわかりませんが、メルさんは私のお友達です。お友達が困っているなら助けるのがお友達です」
「生徒会が目をつけるような悪いことは一切やっていない。それとも、メルが何かしたって言いたいの」
双子がまじめな顔をしてそう答えた。
「そう……なら、今後何があっても知りませんよ。さて、ではクイズ対決を始めましょう。ルールは簡単です。先に五問正解したほうの勝ちです」
(ついに始まった!)
会長の言葉にリリアーナは興奮した気持ちのまま内心で声をあげる。
「では、出題は私がいたしますわ」
「エルシア!?」
「あ、お姉様」
エルシアが名乗りをあげるといつの間にといった感じでアルベルトが驚く。
メラルーシィがリリアーナの姿をとらえ微笑む。
「クイズ対決をするんでしょ。ですから私が出題して差し上げます」
「とか言って、生徒会贔屓な出題をするつもりだろう」
彼女の言葉に彼が睨み付けながら言う。
「ご安心を。私ちゃんとした出題をしますわ。それでは早速行きますわよ。第一問……この学園の創立者の名前を答え、さらに創立理念を答えよ」
「はい……創立者の名前はロンザレス・リヒティン・シュベルツ。創立理念は自分にも他人にも恥じぬ立派な人格者となるために学びを通して豊かな心と知性をもちこの国の未来を担う若者を育てるそんな学び舎を……です」
エルシアが出題したとたんキールが挙手しすらすらと答える。
「正解ですわ。では続いて第二問。この国の歴史から出題です。この国を作り上げた国王の名前とこの国が祀る神の名前を答えよ」
「は~い。……国王の名前はギルベルト・ロバート・ルーカス。神の名前は女神マーレルと英雄王アレクレスですわ」
「……正解ですわ」
ルーティーが手を上げると答える。それにエルシアが正解だと頷く。
「まだまだ勝負はわからなくてよ。では続いて第三問。経済から出題です。この国の昨年の年収はいくらか答えよ」
「はい。年収は一兆五億六千万ですわ」
彼女の言葉にセレスが素早く手を挙げて答える。
「正解ですわ。では続いてこの国の通貨を答えよ」
「はい。コールです」
(一コールが日本円にして十円で百コールが千円なのよね)
エルシアの出題した言葉にそれなら簡単だとばかりにメラルーシィが答えた。
その言葉を聞きながらリリアーナは内心で呟く。
その後も何問か出題されていき生徒会もメラルーシィ達も四問正解とお互い一歩も譲らない戦いを繰り広げる。
「では、最後の出題ですわ。この国の人口を答えよ」
「はい。六万二千四百五十六人だね」
エルシアの問いかけにマノンがあっさりと答えた。
「…………正解ですわ」
「やったぁ~」
エルシアが苦虫を噛み潰したような顔で呟く。その言葉にメラルーシィが喜んだ。
「なかなか、やりますね。今回は約束通り引き下がります。ですが、次は負けませんよ」
「ちょっと待て、クイズ対決に勝ったら退学処分はなしになるんじゃないのか」
キールの言葉にアルベルトが叫ぶ。
「私はクイズ対決でよい成績を収められたのならば今日のところは引き下がってあげますといいました。つまり退学処分をなしにするとは一言も言ってはいません」
「っ!」
会長がにこやかな笑顔で言うと彼は渋い顔をした。
「では、また今度お話ししにまいります」
「お姉様。応援してくれてましたか。私達クイズ対決に勝利しましたよ」
会長がそう言うとセレスがメラルーシィ達を睨みつけてからキールの後に続いて立ち去って行った。
彼等がいなくなるとリリアーナへとむけてメラルーシィが嬉々とした顔で話しかけてくる。
「ちょっと、うぬぼれているんじゃありませんことよ。ほとんど答えたのはそこの双子じゃないの。つまり、貴女は一問しか答えれていないくせにいい気になるんじゃないわよ」
「たしかに、それについて異論は唱えられないな」
そんな彼女から隔てるようにエルシアが前へと出てくるとメラルーシィへと睨みつけながら言い放つ。その言葉にアルベルトが呟いた。
「それで、どうして生徒会に目を付けられることになったのか教えてもらおうか」
「メルさんも大変ですね。大丈夫。私達がついてますよ」
マノンが腕を組み言うとルーティーも握り拳を作り話す。
「お前、いつまでエルシアと行動してるつもりだ? 何か弱みでも握られてるんなら俺達が助けてやるから安心ししろって」
「お姉様。私が必ず助け出して見せますから、待っていてくださいね」
「あなた達、私に喧嘩を売ってるんですの? いいですわ、受けてあげましてよ」
話を聞いていないのかアルベルトとメラルーシィがリリアーナへと話しかける。その言葉にエルシアが激怒してそう言い放った。
(ルーティーとマノンってやっぱり頭がいいよ。生でこのイベントが見れてラッキー)
周りの状況など気付いていないかのようにリリアーナは一人にやにやと笑うとそう内心で声をあげる。
また彼女の周りに新たな登場人物が増えて更ににぎやかになった。そしてこの二人の登場がリリアーナを悩ませることとなるのはもう少し後になってからである。
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