第五章 生徒会との結託

 リリアーナはエルシアに連れられてある部屋へと向かっていた。


(生徒会から呼び出しだなんて……少し展開がちがうけど、これってエルと生徒会が結託するあのイベントが発生するってことなのかな?)


生徒会室へと向かいながら彼女は内心で考えたことを呟く。


「失礼します」


「し、失礼します……」


堂々とした態度で扉の前に立ち、その取っ手をひき開けるエルシアに続いてリリアーナも入室する。


「「「……」」」


入室した彼女達の前には生徒会のメンバーが立っていて、リリアーナ達の事を品定めするような目で見ていた。


「よく来てくれたね」


「私を呼んだという事は、この前の話の件承諾頂けるという事かしら?」


生徒会長だと思われる水色の髪の青年が上座の席に座りにこりと微笑む。


その様子を見ながらエルシアが腕を組み尋ねた。


「君の話が事実なのかどうかはこの前確かめさせてもらった。たしかにメラルーシィ君達がいるとこの学園に波乱を起こしそうだ」


「では、私と組んであの女を追い出す事に合意して頂けるという事ですわね」


静かな口調で青年が語ると彼女がにやりと笑い尋ねるように言う。


「私達は前々からリック君の問題行動に目をつけていてね、彼と友達だというメラルーシィ君の事も見逃すことはできない。彼女とリック君が一緒になる事でこの学園にかつてない大問題でも巻き起こったりしたら大変な事になる」


「生徒会としては見逃せないという事ですわね」


彼の話を聞いていたエルシアが自分にとって都合の良い展開に持っていけれていることに不敵に笑った。


「……エルシア君。君と手を結ぶのはあくまでこの学園のためだ。目的が果たされたその時は君との結託は解除させてもらうよ」


「ええ、生徒会が手を貸してくれるなら願ったり叶ったりですわ」


青年がそう言ってにこりと笑う。それを聞いた彼女が生徒会と手を結べることになったことを喜ぶ。


「自己紹介がまだだったね。私は生徒会会長のキール・ミンティアードだ」


「俺はエドワード・ケイシェル。副会長を務めている」


「わたくしは書記のセレス・ゲーモンドですわ」


「……フレン・ケルビル」


生徒会のメンバーが自己紹介したのでエルシアとリリアーナも自己紹介する。


(ここから生徒会と手を結んだことによって物語が進展するのよね)


目の前にいる生徒会のメンバーを見ながら彼女は内心で呟きを零した。


生徒会のメンバーと結託した翌日。


「失礼します」


リリアーナはなぜか一人だけ生徒会室に呼ばれ何事だろうかと思いながら部屋の前へと立つ。


(エル様が呼ばれるなら分かるけど、何で私が?)


「い、いらっしゃい。リリア、よく来てくれたわね」


疑問を抱きながらも扉を開けて中へと入ったリリアーナの前には書記のセレスが出迎えてくれる。


「お呼びがあったので……あの、何の御用でしょうか?」


「今日貴女を呼んだのはわたくしよ。一緒にお茶でもどうかと思って」


緊張した面持ちでリリアーナが尋ねると彼女がそう言って微笑む。


「え?」


「で、ですから。お茶を用意したの。貴女と飲もうと思って」


(なぜ、お茶を?)


聞き間違いかと思ったがセレスが再びお茶をすると言ったので疑問を抱く。


「あ、お茶を飲みながら大事なお話をするという事ですね」


「ち、違うわ。普通にお茶を楽しむだけよ」


まったく意思疎通ができていない二人はぎくしゃくしながらお互いの言葉を理解しようと必死になる。


「えっと、お茶をするためだけに呼んだってことですか?」


「そうよ。貴女にわたくしのお茶の作法を見てもらおうと思って」


今までの言葉を理解するのに時間がかかったがそう尋ねたリリアーナに彼女が肯定する。


そしてよく分からないままお茶会が始まりセレスが入れてくれた紅茶を飲みながらクッキーを食べる。


「リリア。何か困った事とか無い? わたくしが力になってあげてよ」


「え、えっと。有り難いのですが、特に困った事はありませんので大丈夫ですよ」


しばらく沈黙がつづいたがそれを打ち破るようにセレスが口を開く。


その問いかけにリリアーナは挙動不審になりながら答えた。


(セレスってこんなキャラだったっけ? もっと高飛車でわがままなイメージだったんだけど……)


ゲームの中で見た彼女とイメージがちがうなと思いながらお茶を一口飲む。


「そ、そう。エルシアさんに何か酷い事とかされたらいつでも言ってね。わたくしが助けてあげるから」


「は、はい。有難う御座います」


どことなくお姉さんぶった態度でそう言ってくる彼女へと、リリアーナはおどおどした態度で返事をした。


「その、わたくしの事覚えていないかしら?」


「へ?」


それから暫くお互い何も話せずに長い沈黙が続き気まずいとおもった彼女が口を開こうとした時セレスが話しかけてくる。


悲しそうな顔で彼女が言った言葉に驚き目を丸くした。


「覚えていなくてもしかたないかもしれないわね。まだ貴女は六歳でしたもの」


(こんなのゲームに出てこなかった。一体……!?)


戸惑ったのも数秒で走馬灯のように過去の出来事が頭の中に映像として流れる。


「もしかして、イリスさんのお姉さん……?」


「……!?」


一瞬だけよぎった幼少の頃の記憶。体が弱くて病弱だった友人イリス。彼女には一歳年が離れた腹違いの姉がいなかったか。それを思い出したので口にしてみると明らかに驚いた顔でセレスが目を見開いていた。


「覚えていてくれたのね。貴女とは一回しか顔を合わせた事がなかったからもしかしたら忘れてしまっているかもって思っていたけど」


「それでは、やはりイリスさんのお姉さんなのですね」


嬉しそうに微笑み言われた言葉にリリアーナも驚いて呟く。


「ええ。ですからわたくし達全然知らない仲ってわけではないので、もっと普通に話してくださっていいですわよ。なんならわたくしの事お姉さんだと思って接して下さっても構いませんから」


「え、えっと……どうしてそうなるのか分かりませんが、先輩に対してそれは大変失礼なのでは」


セレスの言葉に驚きと戸惑いで目線を彷徨わせながら答えた。


「わたくしが許します」


「ええっ……」


彼女の言葉にもう声を漏らすしかできなくなったリリアーナは困惑した顔のまま苦笑いした。


(何だかよくわからないけれど、セレスってこんなキャラだったんだ)


ゲーム画面では見る事が出来なかった彼女の別の一面を知った彼女は内心で呟き小さく溜息を零した。

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