神に至る異世界転移者

寿司太郎

プロローグ

 とある高校...


「はぁぁ...」

「どうしたんだよスグル。」


 仲のよさそうなふたりが廊下を歩いていく。


 今にも死にそうな表情をしているのが僕、神白かみしろ すぐる

 16歳の高校1年生だ。

 見るからに陽キャなこいつは、幼馴染の堂本どうもと こう

 同じく16歳の高校1年生。

 全然タイプは違うが、昔から仲がいい。


「どうしたもこうしたもないよ。昨日発売の漫画の新作を買いそびれたんだよ。」

「ハハハ、なんだそんなことかよ。もっと重いことかと思ったぜ。」


 そうは言うが、実際めちゃくちゃショックだった。

 僕は漫画は発売初日に買うと決めていたのだ。

 仕方ないから、帰りに買うことにする。帰り道にある小さい本屋にあることを祈る。そんなことを考えていると、


「んじゃ、わりぃけど俺今日部活あるからよ。また明日な。」

 と、コウは申し訳なさそうに言った。

 コウはサッカー部だ。仕方がないから、一人で帰るとしよう。


「うん、また明日。」


 これから買う漫画の事を思うと気分も上がり軽い足取りで歩けた。

 しかし気づいてしまった。


「最悪だ。今日財布忘れた。」


 なんて運がないんだ。でも、よく考えると僕の人生は不幸なことが多かった。

 こんな些細なことから、結構重大なことまで。

 例えば、父親は僕が小さい頃に病気で亡くなり、母親は女手ひとつで僕を育ててくれたが、過労がたたって数カ月前に亡くなった。

 それからは、一人で頑張ってきたが、バイトの掛け持ちはなかなかきつく、そろそろ疲れが出た来たところだ。

 そんな僕の楽しみは、漫画やラノベ、アニメだ。とくに最近は、異世界ものにはまっている。理由としては、あんまり楽しくもない現実を忘れさせてくれるから、というのがある。

 そんなことを考えながら、暗い気持ちで信号を待ってると、白い猫が車道できょろきょろしている。危ないなーと思いつつも、信号も赤なのでどうすることもできず見ていた。

 すると、猫のことなど全く見えてなさそうなトラックがやってくる。

 俺はどうするべきか迷ったが、まだトラックも遠かったので、助けに行った。


「ほらこっちおいで。」


 とは言ったものの、ぼくは昔からあまり動物に好かれていなかったので、そう簡単にいかず、手こずってしまう。

 そうこうしている間にも、トラックは迫ってきて、もう間に合いそうになかった。

 迷っている暇もなかったので、取り敢えず猫を放り投げた。が、トラックはもう目と鼻の先だった。


「これはヤバいかも。」


 と思ったのもつかの間、そのままトラックにひき殺された。ちなみに、最後に思ったのは、


「こういうのは、異世界転生がお約束だよな。」 

 だ。我ながら能天気である。


 **********


「ここは...」


 気が付くとそこは真っ白な空間だった。周囲を見回すが何もない。


「ここが、天国?」


 純粋な疑問が漏れ出る。するとそれに反応したかのように


「近いが少し違う。ここは神界じゃ。」


 という、なんとも不思議な中性的な声が聞こえる。


「だ、誰?」

「我は神じゃ。」

「か、かみぃぃ!?」





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