第6話 段柳(たんやなぎ)一族の葬儀
その葬儀は盛夏のど真ん中という候で、夜の八時だったというのに、蒸し暑くて制服の黒ズボンが汗で貼りついて気持ち悪かったのを記憶している。
葬儀は極めて盛大かつ豪華で、場外に長蛇の列が続いていた。
僕は友人らとともに並んでいて、段柳とは誰だという話をしていた。同じクラスだということもあって、焼香に行くことになったのだが、肝心の段柳祐介がどういう奴か誰もよく分かっていなかった。
段柳家が金持ちであるという噂は誰もが承知だった。だから存在は知っていた。しかし、当人がほとんど学校に来なかったし、それだからか彼自身も内向的で、姿形が薄かったのだ。
それでいざ段柳祐介に話題のスポットが当たっても、さあ誰だったかと悩むことになる。
「どんな顔の奴だったっけ?」
「なんか色白の、細い奴だったような……」
「それで、背も小さくて、頭も小さかったよな」
「登校するたびに女子たちが騒いでいたよ。顔が良いし、身体の線が細いしで、人気があるんだよ」
「あと金持ちだしな。見ろよ、この参列者の行列」
僕は友人たちの会話をなんとなくで聞いていた。
段柳家は、その当主である段柳善治郎の祖父の代から運輸業界において幅をきかせるようになったのだと聞いた。
なんでも業界の変革期を支えたことから、その腕力が見込まれて、多くの業界人が慕って集まってきたという。それで、段柳家は現代の運輸業界においても無くてはならない存在であり、その現当主である善治郎の死にあたっては、先の見えない行列ができるほどだ。
僕の前に並んでいて五十代くらいの夫婦が最初だけこそこそと語っていたところで、後ろが僕ら高校生だと気がつくと、気を抜いたのか何の憚りもなく女の方がべらべらと話していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます