キ メ ラ の 出 現

秋の色

第1話 序章


「キメラ。あの子はその名をよく口にしていたわ。でも、まさか本当に、本当にいるなんて……。まさか、思いも寄らなかった……」

 

「キメラって? 想像上の怪物のあれですか?」


「いいえ。想像上ではありませんよ。実在します。あの化け物は、今に私の前にまた姿を現すでしょう」

 そう言った途端、女は目を血走らせて身体を痙攣させた。


「大丈夫ですか? いったい、どうしたんですか? そのキメラというは……」


「駄目よ。見つかってしまう。明かりを付ければ、あれに見つかってしまう。決して駄目よ。見つかったら最後。なにもかもお終いよ」

 

暗がりの中で女は酷くおびえている。


 いったい、何を見たというのだろうか。

  

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