第二十節:覚醒

 赤……あたり一面が真っ赤だった。又、例の夢だと言う事は分る。もう、何度と無く見て居るから、いい加減慣れてしまったのだが、この夢は気分の良い物では無い。


 あたしは、赤い流れの中、何処かに向かって流されて居た。


 出口が見える。光輝く出口。其処に入っては行けない様な気がして、必至で流れに逆らう様にもがいて見たのだが、手足の自由が利かない。あたしはあっけなく、その出口から中に取り込まれ、中光景を目にした。天井からぶら下がる、大きく眩しいシャンデリア…正確に言えばちょっと違うのだが、その表現がぴったりだった。


 ――ゆっくりとした覚醒…


 あたしはベッドに起き上がって、ぼんやりと周りを見渡した。ユキの寝顔は相変わらず美しかった。そして月明かりに浮かぶ部屋の光景も。


 何かが起こる……


 あたしには妙な確信が有った。その日は決して遠く無い未来。あたし達は、その時、何を見るのだろうか…


★★★


 朝食は何時もの様に悪だくみ同好会の面々と一緒だった。あたしは、思い切って昨日の夢を話して見た。


「ああ、それなら、私も良く見るよ。この学園に入ってからしょっちゅうだ」


 ケイラがパンをちぎりながらそう言った。そして更に続ける。


「なんか良く分らないけど、赤い流れに飲み込まれて気が付くと、シャンデリアみたいな物がぶら下がったでかい部屋に出てるって言う…」


 ケイラのその話しに全員が頷く。あたしは、昨日の恭一郎の言葉を思い出した「この赤い色素はナノ・マシン。通信関係を司るデバイスだ」と言う言葉。


「ねぇ、あたし達って、ひょっとしてナノ・マシンの性で意識が繋がってるんじゃないの?」


 あたしは皆にそう尋ねた。おそらくは、このメンバー以外の生徒に聞いても、この手の夢は共通して見て居るに違いが無いのだ。


「でも、皆の意識を掌握して何の約に立つのでしょうか?」


 スェルの意見は、確かにその通りだ。他人に医師を自由に操る事に、どんなメリットが有るのだろうか……学園生活を円滑に進める為の道具だとしたら……元締めは生徒会……なんだか繋がりが見えて来た様に感じられた。しかし、恭一郎の態度が、妙に気に成る。この件から手を引け……学園生活の話に部外者が首を突っ込んで来ると言うのも不思議な話だ、いや、もっと別の次元の話に成るのだろうか。


「あの恭一郎って男……赤い色素は通信機器だって言ってましたよね」


 ナルルが何時も通り、ちょっと控えめに話しに割り込んで来る。あたしたちは一抹の不安を感じながら皆で顔を見合わせた。

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