第68話 久しぶりの故郷です
しばらくするとマピオンが城から戻って来た。
「言う通りにしたよ、これで妻の元に行かせてくれるのだろう?」
意気揚々と戻ったマピオンはルイにご褒美を値だった。
「ありがとう、もちろん、あなたのたったひとりの妻の所に行かせてあげるわ」
「何を言っているんだい?ああ、君は知らないだろうけど、僕には愛人も含め最高に素敵な妻が五人はいるよ。まあ一番魅力的なのははやはり正妻だけどね。国もお金持ち出しね。この国が無くなるのであれば妻の国に行って上げてもいいかな?ふふ、君がヤキモチを焼くのはわかるけど、正妻の所にお願いするよ」
「あら、聞いた話だとあなたの浮気癖が気に入らないからと、これを機に正妻の方は離縁すると誓約書にサインをして祖国に帰ったらしいわよ。他の奥さんたちも同じように誓約書にサインをしてあなたとの関係を絶ったわ。残っているのは元メイドの人くらいかしら。下級貴族の方だったわね。まあ今はこの国を出たから平民だけど。その方の所に送るわね、では虹の橋を渡って」
スゥと虹の橋が現れた。
「え、え、ぼ、僕は聞いてないよ、、」
「知らないわ、早く行かないと虹が消えるわよ」
マピオンは消えると聞かされて慌てて渡った。これからは貧しい生活が待っている。それでも元メイドの奥さんは残ってくれた。感謝しかないだろう。
ルイは久しぶりの故郷を満喫しながらゆっくりと歩いて城に到着した。豪華絢爛だった城には人がいなくなったこともあり、わずかな時間で寂れたような感じがした。
「メイドはどこだ!マピオン!」
王は叫びなら城の廊下を歩いている。そのおかげですぐに所在がしれた。第二王子が第一王子を支えながら歩いている。それを見つけたルイはこっそりと後ろを追う。
マピオンには大げさに誰もいない事を騒いで王たちを部屋から出してくれと頼んだのだ。出す事に成功したら馬車を手配するとか言って戻って来いと言ったのだ。
王はずんずん前を歩いて行く。第二王子は第一王子を支えているので遅い。
「父上、待ってください」
「早くしないか!」
王はずんずんと進み階段を降りていった。王はマピオンを捜したがいないと分かると後ろを振り返った。王は息子たちが付いてきていない事にやっと気が付いた。
来た道を戻ると第一王子が廊下に倒れていた。
「ユリトス!どうしたのだ。ロロイカはどうした?」
「ロロは途中で私を置いてどこかへ行きました」
「どこにいったのだ。本当に誰もいないぞ」
「父上、肩を貸してください」
王は第一王子のユニトスを支えながら先ほどとは違う方向に歩き出した。王たちが向かったのはいつも立ち入り禁止区域になっている場所だ。王はユニトスと奥まで進むとそこには大きな扉があった。
王は「アボンド」と言うとその大きな扉が自動に開き、ふたりは扉の中に入ってしまった。
「あれは王の名だ。王族の血族でなけれな開けられない。それで俺を攫ったのか」
「もちろんです。この方法は他の国でも行っていましたから、どこかで血族が必要になるだろうと…」
ルイは前に進む王の姿が見えなくなった時、ロロイカが気付くように音を出した。
「誰かいるのか」
ロロイカが計画通りにひとりで様子を見に角を曲がった瞬間、ルイは人差し指を口に当てシーとしていた。その後ろには大きな口を開けた水龍が待っていた。そしてロロイカはルイによって捕獲されたのである。
捕獲されたロロイカは水龍の頭から顔を出しているなんともシュールな構図だ。
王の入った部屋にルイとロロイカと水龍が入った。王がいるかもと思ったがもう今更どうでもいいのだ。しかし入った部屋には誰もいなかった。ただ広い部屋があるだけだった。
「ここから先は知らないよ。俺も入った事がない」
ロロイカは残念だったねと言った。
『そこじゃ』
ラグ爺が赤い絨毯が敷いてある床に飛び移った。そして絨毯のある箇所を触った。
『ほれ、言わんかい』
「え?アボンド?」
そういうと床から地下に行く階段が出て来た。
『ムーンがよく外に遊びに行くときに見ていたそうじゃあ』
ある箇所を温めて血族が合言葉を言うと開く扉らしい。
現れた地下に続く階段は螺旋階段のようになっていた。暗い地下の階段には人が通るたびにセンサーが反応して光るようになっていた。これもルイが作ったものだ。
そして螺旋階段の最下層には、また大きな鉄の鏡扉が待っていた。ロロイカがトッテを触ると鏡扉は全面キレイに開いた。ルイもロロイカの背後から一緒にその部屋に入った。
部屋の奥には赤々と燃えるような等身大の女神像が鎮座していた。
王とユニトスは女神像を前にしていたが、扉が開いたことでこちらを振り返った。ルイはとっさに大きな水晶の陰に隠れた。
水晶の陰からこっそりと女神像を見ると赤々と燃えるような光を放っていた。そしてその姿は顔を歪め、助けを求めるような表情をしていた。
もしかして、あれがビアンカ…
等身大の女性の姿にルイは吐きそうになる。そしてその手には杯を持っている。毒でも飲まされたのだろうか
『あ、あれは炎の聖杯じゃない』
「え?」
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