第66話 近づく終焉

 貴族もほぼ移動させた頃、シオンから連絡が入り、城の修繕も終わりそろそろ拘束して置くのも限界のようだと言って来た。あの騒動から半年ほど経っていた。



 今、ピティナスピリツァ王国には城に使用人として勤めている住民と国王と王妃、その家族といった者しかいなかった。ルイの元婚約者、第五王子もなにも知らずに城にいる。クラルテは第五王子を相手にしていないらしく何年も話をしていないらしい。

 ロザージュは執事のヨニエルと連絡を取り合い、城の使用人たちの受け入れを始めた。王妃、兄弟王子の妻子たちもお付きのメイドたちと連携し移動をさせる。そして元の国にお帰り頂く。


 ピティナスピリツァ王国はすでに雲がなくなり地上からでもはっきりと島が浮いているとわかるほどだった。その頃から大陸で多くの人から目撃され大騒ぎになっていた。

 色々と好条件を提示してもらったサウーザは第一王子を開放した。第一王子はやせ細りゲッソリとした様子で、ピティナスピリツァ王国の騎士団に連れて行かれた。


 しかし虹の橋はないので戻る方法はない。ピティナスピリツァ王国は限界まで島の高度を下げた。第一王子と騎士たちは近くに迫った王国を見上げた。そして島から白い光線が王子たちを包んだ。そして、その白い光は王子たちを島に吸い込んだ。


 大陸の面々はその光景を目の当たりにした。なんと高度な文明だ。戦争になったら敵わないだろうとパニックに陥った。



 移動手段がなかったピティナスピリツァ王国は以前ルイが開発した透明のエレベーターを使用するしかなかったのだ。そう、あれはだたのエレベーターなのだ。

 傍から見れば宇宙人に攫われるような構造に見える。ルイは意図的にしたのだ。ちょっとした遊び心だったのだが、大陸を恐怖に陥れる結果となってしまった。

 ルイはピティナスピリツァ王国が浮いているなどと知らなかったが、城の最下層から最上階まで行きたいのだと言う第一王子の夢を叶えただけだった。

 しかしこのエレベーターは二千メートルほどしか対応できず、国が高度を下げるしかなかった。


 そしてピティナスピリツァ王国は王子たちを回収するとゆっくりと高度を上げノーズレクスの方角に進んで行った。



 王子たちの回収をしている間に城に残っていた王妃や兄弟王子たちの妻子たち、その日の朝食を準備をしていた料理人やメイドたちは、速やかに移動してもらった。


 王妃や兄弟王子の妻子たち、そしてルイの母、お付きのメイドたちに連れて来られて虹の橋を渡って来た。母もまたルイを見て息を呑んでなにも言わず通り過ぎた。

「お姉さま?無事だったのですね。もう会えないかと思いました」

 弟のリーフレッドがルイに気が付いて抱き着いてきた。

「リーフ、あなたも元気そうね。でもごめんね。今は忙しいの、後でまたお話しましょ」

「はい、お姉さま」


 残りは戻って来た城の騎士団たちだ。ピティナスピリツァ王国の騎士たちはギリギリまで王族に仕えていた。この話をするとクーデターだと、反発する者もいた。しかし自分たちの親兄妹たちはすでに地上に移動をしている事を聞かされた。最後まで残った王族たちはどうするのだと面倒くさい事を言っている者いたが、ロザージュは一括した。


「この島と心中をしたいのなら残ればいいのよ。命令ではないわ。私の友人が頑張ってみんなを助けようとしてるのよ?もう説明はしたわ、王族に告げ口したいのであればそうすればいいわ。でももう住民はいないのよ?あなたたちは誰と戦うの?」


 残りの騎士団たちはロザージュの迫力に押され虹の橋を渡った。そしてその後にロザージュとその兄ロザリオが橋を渡って来た。今、ピティナスピリツァ王国に残っているのは等々、王と第一王子、第二王子、第五王子だけとなったのだ。


 その四人は第一王子を迎えれる為に第一王子の部屋に集まっていた。ゲッソリと痩せた第一王子を労わる為、兄弟が集まるように家来が誘導したのだ。そして「医者を呼んで参ります」と言ってその家来も橋を渡ったのだ。

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