第63話 作戦の開始です

 そして、移住計画が始まった。

 第一王子が捕まっているうちに移住を終わらせたい。まずは移住を受け入れた人たちから少しずつ移動してもらう。


 以前、移住計画の打合せをしていた時にフィロデンから

「ルイ殿、移住の計画はいいのだがどうやって移動するのかね?空に浮いているのだよ?」

「フィロデン様、それは今まで通りです」

「今まで通りと言うのは…」


 当日、移動日にルイの後ろには大きな虹の橋が架かった。この虹の橋はパルドブロムに架かっている。出来るだけ、かの国の近くから虹の橋を架けたかったのでパルドブロム付近にフィロデンや騎士に移動して貰う事になった。このフィロデンや騎士はかの国からの何百人もいる住民たちを目的地まで誘導してもらう為に来て貰うのだ。


 住民の魔力と今回はルイが魔力を提供している。その事はロザージュと話し合い済みだ。怖がる子供や老人たちは魔力切れを起こす事はないと安心させている。


 今回は魔力登録が面倒だとモナルダが言うのでモナルダが特別に魔力を投じ虹を誰でも通れるようにしてくれていた。そんな事も出来るのだなと感心していると、なんでも生贄になった少女たちへの少しでもの償いなのだそうだ。


「では、パルドブロムへ行きますよ。すいませんが、フィロデン様や騎士様たちの魔力は補填しませんのでご自身でお願いしますね」


 ルイも虹の橋を渡るのは初めてだ。そして数人の共を連れフィロデンが渡り騎士たちが渡った。キャラハン公爵も自分も渡りたいと、だだをこねたがお付きの人に羽交い絞めにされて止められていた。


 パルドブロムに着くと今度はかの国に虹の橋を架けた。あちら側ではロザージュとロザリオたち若い人たちが中心で頑張ってくれているようだ。


 そして、かの国に虹を架けると、続々とかの国の住民が渡ってきた。ルイの姿をみるとみんな口々に大丈夫か、大変だったな、ありがとう、などと言っている。ロザージュが生贄の話もしていたようだ。それになによりルイの肩には虹の橋の番人が止まっている。住民たちは神獣がルイ側に付いている事を改めて納得した。

 最初は百人ほど渡って来た。さすがにルイの負担も大変だろうと言う話になったのだが、百人を通してもルイはケロリとしていた。たぶん三分の一ほどの魔力も使っていない。面倒なので今度からもっと増やそうと思うルイだった。


「君だったのだね。虹の橋を消したのは…」

 フィロデンは改めてルイにぼやく

「えーー、違います!この虹はこのモナルダが支柱です。モナルダの意思であそこにずっと虹を架けていたし、モナルダの意思で虹を消したのです」

 フィロデンはルイの肩に止まっている青いオウムをじっと見た。

「そうなのかい、神獣にも意思があると…」


『いい男ね』

「なっ、、しゃべった…」

「モナルダ、びっくりさせないで」

『いい男にじっと見つめられると嬉しいじゃない』

「モナルダもフィロデン様がいい男だと思うのね」

『それはそうよ。ずっと人間を見て来たんだから』


 百人の住民たちの移動はフィロデンと騎士たちの先導されパルドブロムまで連れて行くことが出来た。住民は馬や牛などの家畜や他の多くの動物も連れてきていたので少々時間が掛った。大きな荷物は台車や荷台を使って運んだ。随分大変そうだ。これなら直接パルドブロムでも構わないなと思い始めた。パルドブロムが認めてくれれば直接送ろうとフィロデンに提案する事にする。


 そしてルイはしばらくはフィロデンとでパルドブロムに宿を取り日夜逆転生活をおくる事となる。


 数日経った頃にルイはパルドブロムに野営している住民たちに、サウーザの荒れ地に行く人はいないか候補を募った。荒れ地なので若い夫婦がいた方がいいのだがと説明をした。

 ルイは住民たちにこっそりとコンタクトを取り、荒れ地に行っても実りの苦労させない。内緒だけど神獣がこちら側にけっこういる。水害も起きないし、地には雲のウサギが雷を落とし農作物も元気になる。うまくいけば、かの国にいる土の属性もこちらについてくれて助けてくれるかもしれない。と、言って回った。ムーンとは話をした事はないがラグ爺とお友達だし助けてくれるだろうと思う。


 雷を落とした地には農作物が良く育つというのは前の世で聞いた事があった。本当かどうかは知らない。しかし、住民たちはよくわからないが良さそうだと荒れ地に行こうかと言う若い者が増えた。詐欺師の手口に似てるとルイは思ったが詐欺ではない。




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