第61話 ハート的ざまぁでしょうか?
シオンとカインは帰り際にハートに謝罪をした。
「申し訳なかった。君に甘えていたようだ」
「あんな宝石ひとつで私の人生が決めらるなんてショックでしたわ」
「…」
気にしていないという言葉を期待したシオンはまた何も言えなくなってしまった。
「私はローズのお世話係りではありません。そういう方が必要ならば雇ってください。私はお断りします」
「ハート、ごめんね。君を傷付けるつもりなんてなかったんだよ」
「国の為にですか?ローズの教育も国の為だと思うのですけどね」
「そうだね…」
カインもいつもと違って厳しいハートになにも言い返せなかった。
シオンは徐にハートに近づいた。
「ハート、君が望むならフィロデン殿と離縁してサウーザに戻って来てもいいのだよ。そうだ、ローズと一緒に離縁して一緒に戻ってくるのはどうだろうか?もちろんローズのお世話係りとしてではないよ。ローズは荒れ地に送る。そして今度こそ君の愛する人と結婚をさせよう。僕にはその用意がある。君なら王妃の器だ。戻って来て僕たちでサウーザを盛り上げよう」
フィロデンがハートの後ろに控えているのにシオンはお構いなしに話を持ち掛けた。
「なにをおっしゃっているのです?」
「それがいいかも、ハートは兄上の事が好きだったのだろう?その兄上にノーズレクスに嫁にいけと言われてひどいショックを受けたんだよね。兄上は反省しているよ。今度こそ兄上はハートを幸せにするよ、帰っておいでよ」
フィロデンのこめかみがピクピクと動いている。
「私の事は結構です。この地でやっていくと決めましたから、ローズの教育をしてください。荒れ地にやってもそこの住民が困るだけです。サウーザの評判を落とす事になりますよ」
「ハート、いいんだ。もう自由になっていいんだよ。僕が支えよう。君は僕を支えてほしい」
シオンはハートの手を取りフィロデンを盗み見をしながら話を続ける。
「ハート、帰っておいでよ」
カインもそれに続く
ハートは呆れ返った。
はあ…
「あの…私がシオンを好きなどと誰に聞いたのです?」
「昔からそうだっただろう?」
カインは知っているよという顔でハートを見た。
「違います。私が好きだったのは…カイン、あなたです」
「「え」」ふたりは動きを止めた。
「私は幼い頃から同級生のあなたが好きだったのです、カイン」
ハートはカインを見つめながら話をする。シオンの事など見てもいない。
「でもお輿入れが決まって、あなたから嬉しそうに「ハートも婚姻おめでとう。よかったね、ああこれであのうるさいローズから解放されるよ。ハート、ローズをよろしくね」って、私は相手にもされてない所かローズのお世話係りの為に嫁ぐのかと…一晩中泣きました。私の人生は終わったのだと…」
シオンの顔は真っ赤でカインは顔面蒼白である。
「シオンは私が自分を好きだと思っていたの?それなのにローズと一緒にお輿入れをしろなんて面と向かって言ってたのね。ずいぶんひどい人…」
「そ…」
「私を国の道具としか見てなかったのよね。ローズもね…どこかに嫁ぐのなら面倒なお妃教育はしない。我が儘でも私に押し付ければ問題ない。そうよね、シオン」
「…」
「女をバカにし過ぎだわ、あなたは国ではいい指導者かもしれないけどひとりの人間としては最低よ。これお返しするわ」
ハートはネックレスをシオンに押し付けた。
「ローズをきっちりと教育して返してください。離縁はさせません。陛下にも王妃にも自分の娘くらいちゃんと教育しろとお伝えください!」
「ハート…」
「では、ごきげんよう。今宵は楽しい会食でしたわ。出口はあちらよ」
メイドがふたりを出口まで案内をする。
「ああ、そうそう。一言お礼申し上げますわ。シオンにカイン、素敵な旦那様の所にお輿入れさせて頂けて嬉しく思います。私はこのフィロデン様と一生添い遂げる事を誓います」
ハートはフィロデンの腕を取り、背の高いフィロデンを見上げる
「本当に幸せです」
そして、ハートはフィロデンの肩に顔を寄せた。
「私からもお礼を言おう、シオン王子。このように優秀で聡明な女性を我が国に嫁がせて頂けた。本当にありがとうございます。ハートは私が愛し幸せに致しましょう」
ふたりは見つめ合い、人目を憚らずキスをした。
「そ、それは…よかった、、」
シオンとカインは顔を引きつらせ、ハートの住まいを後にした。
▽
▽
「まあ、そんな事が、私も同席したかったわ、ふふふ」
あの貴族たちとの話合いの時は頼もしく見えたが、この会食は後のようで、帰りにパルドブロムの話合いは行くという事だったが大丈夫だろうかと心配になった。
「もうルイってば、でもルイはサウーザの王子たちの誰かに好意があると思っていたのに、そうでもないのね」
「よしてよ、フィロデン様の方が素敵よ」
「やめて~やめてよぉ~」
ローズはお妃教育ではなく一から貴族教育を始めるとの事で一旦サウーザに連れ戻されたとの事である。
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