第54話 少しずつ動き出します

「サウーザが最近、襲われた事は知っていますよね?」

「ああ、水龍だろう?」

「私も見たかったよ」


「はい、水龍は神の使いだと言われています。水龍は伝説の国の神獣だと言われているのです。私は以前から神獣について調べていて伝説の国がこのノーズレクスと繋がているという説があるのを文献で読みました」

 嘘です。カマをかけてみます。


「その水龍がサウーザに現れて驚きました。では伝説の国はどうなっているのだろうと。そして繋がっているこの国に来てみたのです」

「ほう…そうかね」

 ルイはやはりすべてを打ち明ける事に躊躇った。そして、でたらめな理由をでっち上げた。


「よく調べているね。確かにこの国と関係あるという説は昔からあるね」

 フィロデン様が肯定する。

「まぁそうなの?」

 ハートは何も知らないようだ。ではこのふたりは知っているのか

「ああ、そうだが実際はなにもないよ」

 やっぱり簡単には教えて貰えない。


「ルイ殿は面白い事を調べているんだね、結婚とかはしないの?」

「いい人がいたらしますよ」

「紹介しようか?」

「いえ、有難い申し出ですが間に合っています」

「ほほほ、そうかね」

 この話は終わりだな


「でも本当に伝説の国と繋がっていたのかと思うぐらいこの国は不思議ですね。変わった美味しい食べ物も豊富ですし、水の粉だって売っているのを見ました。すごく高かったですけど。あの水の宿にはいつか泊ってみたいです」

 諦めたルイはやぶれかぶれに話を膨らませた。もう帰る頃合いだ。


「ありがとう、自慢の街だよ。あの水の粉は秘密の取引先があるんだよ」

 気をよくしたキャラハン公爵がのって来た。

「秘密ですか?」

 ルイは少し前のめりになった。

「そうだよ、秘密だよ。ガルーナ王国っていう遠い国の小国さ」

「!?」

「父上、取引先をバラしてもいいのですか?」

「ははは、遠い国だよ」

「そ、そうですね。それだけではね…うふふふ」

 ルイは顔が引きつらないように必死に堪えた。


 ルイはどうやって宿に戻った記憶にない。


 ガルーナ王国が存在する?いえ、なかったはず…

 かの国に居た時は、ガルーナ王国はノーズレクスの事だった。でもノーズレクスの貴族は水の粉の取引先がガルーナ王国と言う…かの国の事をガルーナ王国って言ってるのかしら?それしか考えられない。なるほど、お互い秘密の取引先をガルーナ王国って言っているのね。


 ガルーナ王国はたぶん一部の貴族しか知らないのだろう。知っているのはキャラハン公爵とその子息だけかもしれない。この事が分かってもあまり現状はどうするか…

 かの国をぶっ潰すのは簡単だけど、住民をどうするか考えなくてはならない。少なくても城外にもたくさんの人がいる。かの国の人口は二十万人と聞いた事がある。


 キャラハン公爵は私が提供したであろうモノで今この国を盛り上げている。それで交渉出来ないだろうか…

 あと、なにがあるかな…あ、電話、FAXとか…お好み焼きとかすき焼き、しゃぶしゃぶ

 カレー、シチュー…えーと、、



「ねぇ、カミノア」

 カミノアはベッドの上でへそ天して寝ていた。

『ん?なに?』

「私が水の粉を作ってほしいと言ったら作ってくれる?」

『もちろん、この国の水をすべて粉に変えるよ』

「そんなにいらないわ、まずこれだけ作ってくれる?」

『いいよ』

 ルイはテーブルの上にあるコップに入っている水を渡す

「なにか負担になったりする事ってあるの?」


『特に…ないよ』

 猫のまま首を傾げ、いとも簡単にベッドの上にサラサラの水の粉が出来た。見た目はガラスが粉々になったような感じだ。もしかしたらカミノアに水の粉をたくさん作ってもらう事になるかもしれない。カミノアの負担になるのなら頼めないがそうでないなら有効ではある。


 ノーズレクスの王都にはルイがかの国の料理人にお願いしたレシピのお店がたくさん並んでいる。甘いスイーツ系の物などもあった。第一王子には夢で見た食べ物を食べてみたいと雑談として話をしていた。どうやらその事をすべて記録させていたようだ。道理でよく話を聞いてくれるなと思っていた。父や母が忙しかった為兄弟がいなかったルイには話を聞いてくれる王子たちが大好きだったのだ。


 ルイは水の粉と一緒に他にすぐに連絡出来るものを二国には売り込もうと考えた。取り合えず、FAXを作って早馬より早く連絡が付いて便利だと売り込む、次は電話かななどと考えていた。


 ロザージュとは毎日電話をしている。両親と兄は国を出る決意をしているらしい。王族には極秘で家族総出で外堀を埋めようと今は動いているようだ。まずは下級貴族から動いて貰って商人たちに話をして貰うとしているようだ。後は娘や息子が戻って来なかった家族、そして執事頭のヨニエルに声を掛けるとの事だ。やはり住民の説得は用意ではない。


 ロザージュには大変な事を任せてしまった。

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