第47話 一致団結しましたよ

『ロザージュのお姉さんと叔母さんは僕の為に死んだんだね』

 ロザージュと別れてカミノアがポツリと言う。

「違うわ、王族が殺したの」

『そうよ、黙って見ていたのは私よ』

「だからって責任感じないで、モナルダ。すべて王族が悪いの」

『ぶっ潰すわ』

 モナルダが青い羽と黄色のとさかを広げる。

『ルイ、わしも居るゾイ』

「ふふ、わかってるわ、ラグ爺。まずは調査しないと」

 ルイは公爵様の宿に戻る。ちょうと夕食どきだ。カミノアはちょっと元気がなかったが、一緒にあの王族をぶっ潰そうと言うと「うん、死んでしまった子たちの為に僕頑張る」と言ってくれた。カミノアがいれば勝ったも同然である。


 ▽


 ハートはその頃、やっとノーズレスクの港に着いていた。一緒に船から降りる人たちに黒猫とオウムとウサギを連れた女の子を見かけなかったと聞いて回っていた。船便に乗っていたかもしれないが見つけられなかったのかもと思ったのだ。しかし、見たモノはいなかった。


 港の食堂に顔を出して聞き込みをすると、やはりルイは目立ったようで目撃情報が出て来た。食堂の女将に昨日の昼前にこの食堂で食事をしていたと言われたのだ。「ペットがいるから、お持ち帰り用に包んでほしいって言われたのでよく覚えているよ。表で大人しく日向ぼっこしていたよ」と言われた。


 昨日?昼前?訳が分からなかった。昨日の朝はまだパルドブロムの宿にいたはずだ。それが昨日の午前中にはもうノーズレクスの港にいた?同じような女の子がいただけだろうか…しかしペットを連れて旅をする人などそうそういない。しかも猫に鳥にウサギだ。

 その後はペットOKの宿に泊まり王都に行くと宿の主人と話をしていたのだそうだが、その宿からの足取りは分からない。王都に行く待合馬車にも乗っていなし馬の貸し出しもなかった。

 ハートとお付きふたりはすぐに王都に向った。王都には待合馬車で一週間は掛る道のりだ。しかも山道だ。急げばルイに追いつけるかもしれないとハートは思っていた。


 ▽


 夕食を終えたルイは、ロザージュの話をメモにまとめた。ロザージュの姉と叔母の話、ガルーナ王国の話、執事の話、これからの事。

 明日は一日フリーだ。宿も明日までここに泊まれる為、探す必要がない。ゆっくりと調査が出来るぞとルイは意気込んだ。

 ノーズレスクの図書館に向かう。ノーズレスクの図書館も本は貴重品の為お金が掛る。六千ツーク。ソレイドホークの図書館よりは安い。しかし、本の容量からするとソレイドホークの方が内容が豊富だ。

 まずはノーズレスクの歴史を調べる。もしかしたらロザージュの方が詳しいかもしれないが、自分でも調べた方が話が早いだろう。ロザージュも舞台鑑賞に忙しいかもしれない。


 *

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 ノーズレスクの歴史、大陸から移動してきた人たちで開拓された都と言われている。次第に王族が誕生し国を形成した。そして三百前から急速に国は発展した。その理由として水の粉を発明し高値で各国と取引をするようになり大金を得ることに成功した。ノーズレスクのみ水の粉に作り出せるとし有名になった。その時期から虹の橋が発見され、観光名所として有名になった。

 ノーズレスクは元々、陸続きであったが八百年前の大地震により、地面が変形し島国になった。その辺りは以前ピティナスピリツァ王国があったとされる場所で、水龍や虹を出せるオウムや雷のウサギ、土の蛇、炎の聖杯など、伝説の神獣が棲ます所と言われていた地域だったが、地震により根こそぎなくなった。しかし、ピティナスピリツァ王国はまだ存在している国として登録されている。しかしどこにあるのか分からない為、幻の国とされた。

 ピティナスピリツァ王国にあったとされる虹の橋はノーズレスクの見つかっているが虹の橋を出せるオウムの存在は明らかになっていない。

 多くの学者はその神秘に興味を持った。地震のため大陸が沈んだように思われているがノーズレスクの奥に流されて移動し、船で数時間の所に存在しているのではないかと思われている。それを長い歴史の中でノーズレスクが隠ぺいをしているのではないかという説が濃厚だとされる。


 近年では、望遠鏡やカメラなど様々な発明品が作り出されていて世界から注目をされている。発明者や開発者などは不明とされている。また最近食べ物に関しても安くて美味しいと話題になっている。ここ数年に新たに最高の付与師が誕生している。高価な宝石に最大限までに収納魔法を施すことが出来ると話題の付与師だ。しかし現在は各国の宝石を持って行方不明になっている。ノーズレスクの責任問題が問われる。近年の活躍はキャラハン公爵の功績が大きいとされる。


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 まとめれば、表向きはこんな感じだろうか。キャラハン公爵ってあの人のよさそうな公爵様よね。あの方が仕切っているのか…全部ノーズレスクから発信しているのね。どうやって連絡してるのかしら?電話かな。電話も作って渡してるけど世間一般には広まってないのよね。使っているのは貴族だけとかかな。

 もうずぶずぶね…元々陸続きでそこが浮いたのかな?すごいパワーだよね?ムーンって土の蛇なのかな?炎の聖杯ってなんだろう。


 神獣たちの説明している書籍もあった。ざっくりとまとめると水龍:水の神、虹のオウム:風の神、雷のウサギ:火の神、土の蛇:地の神

 炎の聖杯:その杯で水を飲むと不老不死になるという、虹のオウムが守っていて人間は見る事も触れる事も出来ない。


 触れる事が出来ないのに不老不死になるってなんで分かるのだ。無茶苦茶だな。モナルダが聖杯を守っていたのか、今は守らなくていいのかな?モナルダって風の神なんだ?神がなんか守ってるって変なの。ラグ爺は火の神?なんかピンと来ないな。後でモナルダとラグ爺に聞いてみよう。


 カミノアたちは外で待っている。動物を図書館には入れられない。

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