第16話 面接をしました
でも私は学園の才女よ。世界中の国々の歴史も色々知っているし国の事だって…
すべてあの国の人たちから教えてもらっていた。正しいとは限らない。あの国で外国人なんて見た事がなかった。
国絡みで自分の国の事を隠蔽しているの?なんのために?あ、でも留学は出来たはずよ。私の友人が学院にいってそれから外国に留学している。でもまだ戻って来てはいない。どこに留学したのだっけ?
ガルーナ王国、あの国が祖国の橋渡しをしていた。
「あの…」
「なにかね…」
「ガルーナ王国って知っていますか?」
「聞いたことがない国だが…」
「…」
「世界地図…、世界地図ってありますか?」
「世界地図?なんだねそれは?世界の地図?この大陸の地図の事かい?」
世界地図がない…世界地図の概念もない?世界地図はこの大陸だけではなく、たくさんの陸のたくさんの国々が乗っている地図なのだが…
「世界の地図なんて出回らないよ。自国の事が鮮明に描かれている地図なんて攻め込まれたら終わりだからね」
「そ、うですよね…」
「君は世界の地図を見たことがあるのかね?」
「わかりません」
「あるという事かい?」
「いえ、そうだと思って実は違っていたのかもしれない。だからわかりません」
世界地図を見れば自国の場所やガルーナ王国がわかるかもと思ったのだか…ああ世界地図も持ってくればよかった。金になりそうなものしか持ち出さなかった。世界地図も十分貴重なものだったのね。
翌日、シャルトル辺境伯と謁見を行うために、繁華街の中心地にあるアルベルスの一等地にひと際大きな屋敷にシラー男爵と向かった。普通のワンピース姿にいつもの金髪碧眼で挑んだ。
シラー男爵は信用の出来る人物だと言っていたが、若い女性に対してどういう感じで来るかは分からない。私は美女ではないが、物珍しいというのはあるだろう。大貴族に取り込まれたら身動き出来なくなるかもしれない。
「やあ、初めまして、ルイ殿。そんなに緊張しないでくれ。気楽にしてくれたまえ」
シャルトル辺境伯は気さくで明るい人だった。まだ若い。三十代ではないだろうか。
「私の父が早く隠居してしまったので、若くこのシャルトル辺境伯を継いだんだよ。まったく困ったものだよ。今両親は南の島でバカンス中だよ。呑気なものだよね、ハハハ」
聞いてもいないのにペラペラとよくしゃべる。
「さあ、君のことを聞かせてくれないか?爵位がほしいんだろう?場合によっては私が後ろ盾になるよ」
やはり、面接だ。
「私は、ルイと申します。かの国から参りました。国名は国の方針によりお答えすることが出来ません。ですので、かの国と言わせて頂きます。私はかの国で第五王子の婚約者でしたが破棄されました。その理由も個人的な理由ですので返答しかねます。王家の支度金が返せないとの理由で親から売られそうになりました。そしてこの地に流れ着いて付与師になろうとシラー男爵の弟子になりました」
以上で終わり
「ふむ、アピールが弱くないかい?もう少し自分をアピールしないと後ろ盾は得られないよ」
シャルトル辺境伯はバカではなかった。
「わ、私の付与の力は壮大だと思います。高価な宝石の付与も一日で何個も行う事が出来ます」
「ふむ…」
まだか…
「シラー男爵が一ヶ月掛かる付与を私なら半日で行って見せます」
どうだ!シラー男爵すいません!
シラー男爵の眉毛がピクリと動く
「うむ…まあいいかな、他にも秘密がありそうだけど…」
ギクッ
「まあ、シラー男爵が言っていたかの国の件は興味深い。おいおいと解き明かしていこうか」
「では…」
「いいよ。後ろ盾になろう。すぐにじゃなないけど国王とも謁見してもらうよ。いいね」
「は、はい」
準男爵くらいなら国王との謁見なんてしなくてもいいんじゃないかなって思っていたけど、やっぱりするのか…
シャルトル辺境伯とシラー男爵とで食事をしてその日は返された。爵位というと土地持ちだったりするのだが、男爵だとそんなでもないのかな。私の国の貴族は土地持ちはほぼいなかった。それはきっと土地がなかったからだ。小さな町はいくつかあったがそれは城から見える景色のみだった。ルイが魔法の絨毯でウロウロしていたのは行ける限り上空までいっていたのだ。街中を暗くても飛び回る勇気はなかった。誰かに見られると大変だと思ったからだ。
「どうだったね?」
アネモネが花を生けながらルイに聞いてきた。
「ん…大丈夫だった…よ?」
「なんだい?歯切れが悪いね」
「まだ(仮)だと思うのよね」
「ああ、仮ね…ま、仮でもいいさね。合格ってことだろう」
「そうね」
それからも月に一度は付与しにシラー男爵家に行くようになり、残った時間でこの国の貴族のことを勉強した。シラー男爵に紹介してもらい家庭教師を雇いアネモネの家で貴族の行儀見習いをしている。
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