第12話 付与師になろう
夏の間、荒稼ぎをしたので資金はある。付与の店でも出そうかな。
無属性の者しか付与魔法は使えない。無属性は少ないながら一定数はいる。収納を付与する事を専門に商売をしている人もけっこういるのだ。依頼主の宝石に収納を付与し、後は自分の魔力を込めるということをすれば収納宝石は半永久的に使える。
一回魔力を込めてしまうと自分以外の魔力は弾かれて中身を出し入れする事は出来ないから盗まれても使えない。収納の主人を変更するにはまた付与をし直さないとならない。その時に収納されたモノは消えてしまうのだ。まあ宝石の価値は一緒だけど。
付与がどのくらいで請け負うものなのかリサーチをしないと。
アルベルスの繁華街には付与師専門街がいる。以前古着屋を周っているときに付与専門店が立ち並んでいるのを見たのだ。待合馬車で一時間半揺られて到着する。
たくさんの店が並び賑わっている。装飾品屋の隣には付与専門店が並ぶ。ちょっとは入ってみる。今日はオレンジの髪に緑の瞳だ。小さなアメジストのイヤリングとネックレスを身に着けている。これは近くの装飾品屋で買ったもので安値のものだ。
付与専門店と言いながら中古の装飾品も売られている。中には高価な物も売っていた。
「あの、お尋ねしますが、付与の金額ってどのくらいですか?」
会計の所に座っている男の人に聞いてみた。その男はルイを下から上に嘗め回すように見た。この人が付与師だろうか?
「あんたみたいなお嬢ちゃんには払えないような金額だ」
そう言うとそっぽを向いてしまった。まあ、金額だけ教えてもらいにきたのだから客ではない。
「金額だけでも教えてください」
「その身に着けているアメジストのネックレスに付けるのなら五十万ペントだね」
「え?た、確かに高いですね。ありがとうございました」
逃げるようにお店を後にした。
この安値にそんな値段?これに収納付与をしたところでハンドバックほどの量しか入らない。あの店の主人は態度が悪かった。小娘相手に嘘を言ったのかもしれない。
そう思い近くにある付与専門店に五・六件訪問し金額を確かめた。やはり四十万から七十万と言われた。あの態度の悪い主人より吹っ掛けてきた店もあった。あの店の方がずいぶんと安いではないか。ちょっと離れた付与専門店に行ってみる。やはり五十万から六十万だという。ちなみに高値の石に付与するならばいくらかと聞いたところ、高価な石なら百万からでダイヤとかルビーともなると五百万~と言われてしまった。宝石なしでだ。持ち込みでその値段のようだ。
嘘でしょ?私はあの王子たちにただでやらされていた。
あの第一王子の次世代の王太子であると証明の指輪にも付与をした。もちろん高価な指輪だったようで大容量の収納指輪が出来た。「ありがとう、助かるよ」たったその言葉だけだ。
なんてこった。
その日はストレス満載だった為、お土産にケーキを買って帰った。甘いものを食べてストレスを軽減しなければ、ショックで立ち直れない。
みんなでケーキを食べているとどうしたのかと聞かれた。
「実は付与師になりたいんだけどあまりにも高い設定だったからちょっと無理かもしれない」
と、打ち明ける。それは無属性と打ち明けているのも同じだがもうどうでもよくなっていた。
「ああ、あんたは無属性なんだね。それならそうさね、あんたが勝手に付与の代金を安くしてしまうとまたトラブルになるだろうね」
あまり安く設定してしまうと、今度は付与師たちから反感を買う。かといって周りと同じ付与設定にしてもこんな小娘に付与を頼まないであろう事はわかるのだ。
「無属性なんていいじゃないか、それにしても付与ができるんだな。ルイは」
無属性だからと言ってみんなが付与が出来るわけではない。
「なんで掃除婦になったのよ」
地盤がないもので…
「一回付与師に修行に出た方がいいかもだね、あんたは付与が出来るかもしれないが基準が分からないんだろうから」
「そうだけど…付与師は全員男の人だった。なんかこわいなぁ」
「大丈夫さね、私の知り合いに付与師がいるよ。その人に頼もう。男だけどもね」
「付与師に知り合いがいるの?」
「元だんなだよ」
「え?だんなさん?」
「元だよ。結婚したんだが子供が出来なくてね。愛人に子供が出来たから別れたんだよ」
「なんと言っていいのか…」
「もう十五年も前の話さね。ちゃんと離縁金もたんまりもらったし、指輪に収納も付けてもらった。よくしてくれたよ」
子供が出来なくて別れるのは、よくある話なのだ。跡継ぎがほしいのはどこの時代も同じなのだ。アネモネの元だんなさんはきちんと離縁金も渡している。ちゃんとしている人のようだ。愛人はちょっとだけど…
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