第5話 新天地に到着しました
私は婚約破棄をされ両親から娼婦館に売られそうになって三日、まだ空の旅の途中だ。夜中に移動をして昼間に休憩をしながらどこに移住するか見定めている。夜はなにも見えないので暗視メガネを掛けている。これも未納品だ。
城は夜、暗くて歩けないのだと言って注文された。なんで夜出歩く必要があったのかと思うが、そこは質問されないようなオーラを出すのだ。
不意に聞こえてきた声がある。盗聴器からの声のようだ。耳には盗聴器用のイヤリングをしている。魔力で波長を合わせると聞こえてくる懐かしい人の声、母親の声だ。どうやら第一王子に詰め寄られているようだ。母は自分の都合のいい言い訳を延々と繰り返し、そしてウソ泣きを始めた。
そして、ぼそっと聞こえてきた内容に震え上がる。
「…出し闇に葬るか…」
それは母の声ではなく、私を手元に置き利用しようとしてた男の声、第一王子だ。冷たく冷やな声に本気さを感じさせた。
私は第一王子のいつもしている指輪にこそっと盗聴を付与していた。第四王子が出す商品は私が開発してものだろう。それを増産して売っている。その権利は第四王子だ。それを確信したかった。もうただ働きはいやだと思うようになっていたのだ。
城に訪れて注文品を納品するときに、たまたま王子が指輪をはずして会話をするときがあった。どこに置いてあるのかと思っていたら手洗いの場所に置いてあったのだ。手を洗った際につけ忘れたのだろう。さっと指輪を取り付与したのだ。
王子たちは私が付与が得意であることは分かってはいるが、どうやって付与をしているかまでは知らない。そんなに簡単に付与できるなんて思っていないようだ。
第五王子と結婚させた後に白状させるつもりだったのかもしれない。
自然と涙が流れる。本当にそれだけだったのだ。少しは愛情があるのかもと思っていたがただの業者扱い。無料でさせていたのでそれ以下だ。奴隷だ。
付与魔法は時期に魔力がなくなり普通の宝石に戻る。もって一ヶ月だろう。常に魔力を込めなければならない。最後に王子に会ったのは二週間ほど前、その時はもう以前に付与した魔力は切れていたから盗聴は出来ていなかったがまた私の近くで指輪を外した。息子をあやす為に指輪を外したのだ。指輪で息子を傷つけるかもしれないと思ったようだ。心優しい第一王子だと思っていたのに、でも魔力を込めた。また利用されるかもと思ったからだ。そして今聞こえてきた声…闇に葬る…
私のことだろう…間違いなく第一王子の声だった…
木は森に隠せと言う。小さな街より大きな街でなりを潜めよう。
森を抜け、しばらく砂漠の上を飛んでいた。そして砂漠を超えて行き着いた場所は、水の都と言われている大国サウーザ王国
砂漠が続くのかと思いきや、急に広い森林そして海が見えた。大地には大きな川が続き、世界一の国家サウーザ王国、その大都市アルベルスに行き着く。ひとまずここで様子をみよう。
砂漠があることから、追手がこの国に来るまでしばらくは掛るだろう。なにより我が国より大国だ。とりあえず、人が多い所で身を隠そう。
元々、この国を目指して飛んできた。世界史を勉強していたときにいつか行ってみたいと思っていたのだ。銀行の発祥もこの国だ。もしかしたら出張とか出来るかもと思っていた。
夜明け前に魔法の絨毯から降り、絨毯を収納した。しかし、服装がやたらとお嬢様だ。王妃から頂いた豪華なドレスを着ている。第五王子に呼び出されたままの恰好で、とても砂漠を旅してきたとは思えない恰好をしていた。どこの国もそうだが大都市アルベルスに入るには大きな門を通らないと中には入れない。
困った。お金も祖国の金貨しかない。国がバレる。詰んだな。
しばらく森で考えようと、森の中から旅人を眺めていた。
失敗した。砂漠に入る前の街で服を購入していればよかった。夜中また引き返すしかないかな。
眺めていた旅人の服装を確認して夜中に引き返すことにする。身体の汚れは旅人に近いが服装がお嬢様だ。これでは門番に変に思われてしまう。
夜に引き返すとして森で休憩をしようと場所を探していると二人の男の人が茂みから現れた。さっと隠れて隠ぺい魔法で自身を隠した。本当に隠ぺいされているのかは自信はなかったが二人は気が付かず前を進んで行く。ちょっと興味が出てきて慎重に後をつける。二十分ほど歩くと数人の男の人が屯っていた。
そして岩のくぼみに数人の女性がいる。手首には縄が巻かれている。薄着で今はボロボロだが以前はキレイなドレスだったのではないかと推測される。攫われたのか売られたのか…胸がぎゅっとなる。私もこうなるはずだった。無属性で魔力が少なければ逃げられなかっただろう。
「もうすぐ馬車が来る。女どもにショールでも羽織らせ、口は猿ぐつわをして隠しておけ。門の兵士にバレるなよ」
「馬車はいつ来る?もう待機はつらいぜ」
「もうすぐだ。明日出発できる」
明日…
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