119.

「まっ?」


「本当ですって、千田さんも着てくださいよ」


「いや良いから、内容を教えてくれ」


「え〜と、VIT+3とAGI+5です」


「それってちゃんとHPも増えてるんですか!?」


「増えてますよ」


中々ヤバい情報を聞いた気がする、HPも増えるって事は普通にステータスが増えたのと変わらないって事じゃん、それって強くね?普通に衣類としての機能性もありそうだし一石二鳥じゃん。


「泉さん、それ一つ作るのにどれだけ時間掛かったり、素材って必要何ですか?」


「…っと、ウルフちゃん四匹ぐらいに、2日ぐらいです」


「普通に凄いな」


「着けるだけで凄い有難さね、その手間は別として」


「でも、解体が無ければ一日でいけちゃいますよ」


もっと防具が作れると発言した意味が繋がり、本人が望むのなら快く量産してもらいたい。


「良し、全力で解体作業を奴等に押し付けよう」


「貴方ね、露骨に作らせようとしないの、泉さんが作りたい分だけ作らせなさいよ」


「望奈さんも作らさない訳じゃないじゃないですか」


「私で争わないで下さい!」


平和に睨めっこをしていた俺と望奈さんの間に、ヒロイン的発言を繰り出しながら泉さんが割り込んだ。


「泉さんがモテ期と錯覚している」


「十分可愛いじゃない、見る目が無いなら私が貰うわね」


「それとこれは話が別です」


「あの〜千田さん、緋彩さん、彩寧ちゃんは一応私どもの者でして〜」


「え、残虐に重労働をやらせといて、いま大塚さん何か言いました?」


「はい、何も言ってませんです、はい。彩寧ちゃんの意志を、尊重してください」


「それで良いかな、泉さん」


「はい、大丈夫です」


「―それと毛布も八枚頂戴」


「はいっ……ん?」


「有り難う泉さん、毛布貰ってくね」


「……わたし、今、罠に掛けれれました?」


「いや、そんな事は無いから大丈夫だよ」


「…優李さん、緋彩さぁん、わたし今もの凄く違和感なくなくないですか?」


 毛布の件に関して望奈さんが敵に回る筈も無く、何故か大塚妹さんも黙認してるので、無事に毛布を手に入れられそうだ。


 言い方は悪いが、結局大塚陣営の誰かに流れるのなら、今日は俺達が貰いたい、俺は寝なければ別に気にしないが、特に九藤さん達五人は明日に備えて寝てもらわなければ、結果として毛布供給も遅れてしまう。


「その毛布ってさ、直ぐに他の人も作れる様になるかな?」


「作れる!と思いますけど、脂とか煙で干すのサボったら臭かったり、固くなります」


「スキルで、とかじゃないのね。ほんとお疲れ様です」


 まさかそんな方法で鞣し処理を行っていたとは、スキルで触って終了とかじゃ無いって、中々に生産職にキツく無いか?


「でも綺麗には落とせなくて、だからそのコートもどっちとも毛で隠しちゃったんですよね」


 確かに妹さんが着ている毛皮のコートは内側も毛がふさふさしているが、それはそれで痒がら無い人にはとっては最高だと思う、静電気はヤバそうだけど。


「いや更に凄いわ、本当に幼稚園生?」


 異なる毛皮を両面に張り合わせてるのなら、妹さんの毛皮みたいになるべく色の近い物で揃えなくても、黒と茶色で出来るならめちゃめちゃ欲しいんだけど、例え無理だったとしても性能的に欲しいのには変わらないが。


「なわけないじゃないですかあっ、しょうろくですぅッ」


 マジで色々バグってる気がする、その容姿で数カ月後には中学?そして小学生が殺って良い仕事じゃないよね?もうどうしちゃったのさ。


「小さいは最強ですよ泉さん、攻撃だって避けれます!」


「おぉぉ、それは凄いですっ!」


「良い様に言ってるけど、気おつけないとロリコンを通り越して犯罪者よ?」


「そんな怖い事言わないでくださいよ、至って割とマジで小さいに付いてのメリットを上げてるんですよ!?分かりますかっ男だって、小さくて可愛い可愛いなんて、女性から言われて言われて、カッコいいって言わたかったこの気持が!」


「…分からないけど、ごめんなさい。だから、少し落ち着いて頂戴」


「はい。言うて落ち着いてますが、小さい話流れで行くと年齢詐称の人は、どうやって見分けるん?泉さんは小学生でも幼稚園生でもどっちでも良いけどさ、中学、高校に際どい高卒年齢の人って詐称してる可能性あるよね?」


「そんなの同性が容姿を観ても分からないわよ。それこそ、貴方が大好きなゲーム的なスキルとかで何かないの?」


「あぁ、鑑定ですか。でもまだ認知してないんですよね。大塚さん、そっちで似たようなスキルの話って上がってますか?」


「いえ、此方もまだ聞いてません。兄が私に、一言も言ってない場合は保証しかねますが、ご了承下さい」


「その時はそん時って感じですので、情報を得たら共有という事で良いですか?」


「はい、構いません」


「それじゃ、毛布持って戻るね、余りにも遅いと毛布を求めてる人達が、凍死しちゃうよ」


「持ってきます、待っててください」


 小走りで再び奥の部屋に入って行った泉さんが、コートを持って来た時よりも更に身体を毛皮で隠されながら戻ってき、前すら見えていなかろう状況だったので、慌てて俺と望奈さんは受け取っていた。


「有り難うございます」


「ううん、こっちこそ毛布助かるよ有り難う。これで怪我人が減るよ」


「毛布が無いと怪我人が出るんですか!?」


「そうだよ、皆が毛布を求めて血のあらっ―」


「争いなんて無いでしょ、変な事吹き込まないの。泉さん本当にありがとうね、毛布貰って行くわね」


「はいっ、どうぞ。それと緋彩さん」


 泉さんに手招きされた望奈さんが耳を近づけ、何かを話しているが女子トークに首を安易に突っ込まないのが長生きの秘訣だ。


 そして毛布を持って俺と望奈さんはテントに向かい、大塚妹さんは泉さんの建物の周りの護衛を確認してから戻っていた。








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