87.
再び手前の部屋に誰も居ない事を確認し、中に入ってから静かに扉を閉め、奥の扉に近づく。
取って部分に耳を近づければ、より明確に声が聞こえ中には最低でも四人居るのが分かったが、さてどうしたもんか。
間違いなく向こうに一人は近接戦特化の奴が居るだろう、そいつを即死させ無ければ面倒だ、なんせ俺の身体的ステータスは平凡そのものだ。
というかゲームですら魔法を使いたがる奴が少ないんだ、全員が近接戦のステータスをしている可能性だって全然あり得るのが更に厄介でしかない。
「はぁ..」
ため息を吐きながら、手が届く範囲にあった小物を無造作に上に放り投げ、落下した小物が床とぶつかり想像以上の音を出し、中の話し声がプツリと止まった。
「何の音だ?」
「おい、お前ら一応見て来い」
「へいっ」
「りょうかぃっす」
机に身を隠し扉が此方側に開くと、聞こえていた通り中から二人の男が身を出し、手に持ったライトで部屋を照らしながら見渡していた。
「何の以上ありやせん」
「一応廊下も見てこい、外のあの緑の生物が紛れ込んだのかもしれねぇ」
「でも、彼奴等は陸自の奴らが、相手してるんじゃありませんでした?」
「良いからッさっさと見てきやがれッ」
「へいッ!」
「すいやせん」
急かされた二人が扉を素早く閉め、廊下に通じてる扉に駆け足で近づき、制止した。
扉を閉めてくれたおかげで余計な手間が省けたな。
「でもよ、居たらどうすんよ。俺らで勝てるんか?」
「そんなの居たら急いで戻れば良いんだよっ、そしたら
藤山さんが倒してくれるさ」
「そうだな」
「良し開けてくれ」
「いやいや、俺より硬えだんから先に行ってくれよ」
「はぁ仕方ねぇなぁ」
何方が開けるかの譲り合いを済ませた二人が、扉を開けようと、片方の男が取ってに手を置き掴んでいた。
扉がゆっくりと開き、一人の男が先に廊下を覗き込む最中、もう一人の男の首を掻っ切ろうと背後から近寄り、ナイフを前に回す瞬間に男が不意に振り向いた。
「わぁッあ”ッ‥ぁぁ」
刃の向きを変えそのまま首に深く突き刺せたが、扉を開けていた男には完全に気づかれ、男が叫んだ。
「おいッ誰だてめぇえ!!!」
「マジックアロー」
即座に放った矢が男の頭を吹き飛ばし、止まる事無い勢いの矢が外壁に当たりコンクリを突き破り、大きな破砕音を出しながら飛んでいった。
急いで足元に視線を向け、振り向いた男が持っていたライトを踏み壊す。
ちッ完全に台無しだ。
叫ばれただけなら後ろの部屋の連中を殺せばどうにかなったが、挟まれる事を懸念してさっさと矢で殺したは良いが、やはり壁を突き破りやがったか最悪だ。
「何だ!?おい、お前ら‥‥‥」
後ろの扉が勢い良く開き大柄の男が姿を現すが、部屋の中に落ちたライトは踏み壊し終えてる為、奴らが俺の姿をハッキリと捉える事は無く、逆に開いた扉からは光が溢れ出ており狙うには何な苦労しない状況だった。
「マジックアロー」
暗闇から突如飛んでくる矢を大柄の男が避けれる筈もなく、無防備に突っ立て居た男の顔に大穴を空け、矢が部屋の壁を貫いていった。
「ひぃぃいッ藤山さんぁああんッ!?」
「お黙りッ敵はまだ居るんだ」
部屋の中から頼りない男の声が聞こえ、四人目とおもいきやその男を黙らす女性の声が聞こえ、女性が居た事に驚くと同時に、残った男より立場が上な物言いが引っかかった。
向こうの部屋の明かりが消され、こちら同様に部屋が暗闇に包まれ、何方からも姿が視認出来ない状態になって直ぐに声が聞こえた。
「誰だいあんたっ、どっから来た、警察の回し者かいな」
普通に面倒だな。
あの早さで明かりを消す事を躊躇わず、小賢しく話し掛けて来る辺、悪知恵が働く奴だろう。そんな奴と上手く話せる程俺の口は達者じゃない。
「マジックアロー・テトラ」
扉から溢れ出す光の形と、声の反響的に奥の部屋が俺が居る部屋より小さいと判断した俺は、壁に向け矢を放っていた。
外壁を貫く矢だ、隔てる壁が一枚あろうが外壁程の強度がある訳も無いのだから、人を殺すのに問題は無かろう。
腰の高さで放たれた四本の矢が壁を貫き、見えなくなっても聞こえて来る破砕音は段々小さくなっていく。
「マジックアロー・テトラ」
「ぁぁあああああぁあああぁああああ、腹がぁぁ...」
「ちょッ!?殺すかい!?」
位置をずらし放った矢が、今度は男に命中したらしく男の絶叫が聞こえるが、運が良い事に女の方には当たらなかったらしい。
「当たり前だろ何を馬鹿な事を言っている」
男が泣き叫ぶ中、聞こえるか分からないが、余りの馬鹿な質問に素で返してしまった。
「なぁ聞こえてるんだろ!?止めておくれ。私は人も殺しちゃいないし、重罪でも何でもないんだよ。なぁ頼む、何でもするからさ、ほら身体でも好きにしてくれて良い」
そんなのは最初っから分かっている、この建物内の全員が死刑囚ならどんなに気が楽だっただろうか。
「なら明かりを付けて出て来い」
「わぁ、分かったよ」
声量を上げ話した俺の声が向こうに届き、返事が返ってくる。
「俺は‥」
「うるさいよ、静かにしな」
部屋の中が明るくなり、壁に空いた穴からも光が溢れ出し、部屋の中を動く物が目に入り、それが扉の方に向かっていた。
姿を現したのは、寒くもあれば胸元が見える服にジーパンを着、止めてないダッフルコートを羽織った女性が長い髪を片手で触っていた。
「それで私は何を―」
「出てきてくれて有難う」
「良いだよそれで――」
「マジックアロー」
勢い良く飛んだ矢が廊下の男同様に顔を吹き飛ばし、女性の身体がバタリ倒れる。
「ヒィィィィィイイイイイッ―――勘弁してくれ、命だけわぁあああああ‥」
女性が中の男が再び大きな声を上げ叫ぶが、部屋に近づいた俺と目が合い黙った。
「マジックアロー」
命乞いされる前に終わらし、段々と重くなる足取りで俺は部屋を出ていた。
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