42.会議②

 それから1人の自衛官が椅子を用意してくれた為、俺と望奈さんも座り。

  会議が再開されていた。




「今しがた改めてゴブリン達が何処に密集しているのか確認させたが、ゴブリン達はこの市役所のから北側300m程の場所に集まっており、今は何かの合図を待っているかのようにじっとしているそうだ」


 大島さんが今、部下から恐らく報告されたであろう内容を、会議室に居る全員が聞こえる声で話す。


「大島さん、範囲というのは何処までか分かっているのでしょうか..」


 一般人側の歳で白髪になったであろう商店街のまとめ役をしてそうなか弱そうな男性が大島さんに話しかける。




(この席順が意味をなしているのだとしたら、大島さんの一番近くに座っているあの男性は一般人代表とかだろうか?)




 俺は勝手に自己紹介したが状況が状況の為、俺達の為に他の面々が自己紹介をするなんて事はなかった為未だに俺と望奈さんは誰が誰なのか分からないで会議に参加しているのだ。


「大凡だがこの市役所を中心にして北に500m、南に1km、東と西に300m程の長方形の形が範囲らしく、そこには透明の壁が出来ており、出られないそうだ」


「やはり出られないのですね..」


 大島さんからの答えを聞いた、一般人の代表であろう人が予想は出来たであろう出られないという事に、がっかりするように反応した為、会議室にはその逃げられない、つまり死ぬか勝つかの二択を迫られての絶望感が漂い、それぞれの小言で一層暗さが増していた。



「だがそれは奴らゴブリンも同じであろう、この場であの数のゴブリンを全てを倒し我々が勝利する事によりこの街からはゴブリンがそれだけ居なくなるという事ではないか!」


 自衛隊側の大島さんから3番目の席に座っている、スキンヘッドのバリバリ戦闘系な体付きの男性が声を張り上げる。



「だからと言って本当に勝てるんですか?、我々市民はいまいち日本の自衛隊の戦闘力を知らなすぎるし、それに相手はモンスターです」



 市民側の高校生ぐらいの、生徒会長をしてそうな気の強い感じの男性が自衛隊の人達に向かって問いかける。



「それでだが、更に悪い事がもう一つ起こっている」


 大島さんが急に報告はまだ続きがあるんだと言う感じに話にはいる。


「まだ何かあるのですか?」


 1人の自衛官が問い返し、会議室の視線が再度大島さんに移る。






(おいおい止めてくれ、これ以上悪い報告って何があるんだよ、逃げられないだけで十分最悪だってのに)



「あぁ、実はな此処から南に1kmもあるおかげでこの市役所の更に後ろの自衛隊基地より更に南の病院、警察署や消防署、拘置所、企業の食品工場が入ってるおかげで食べ物には困らないのだが、東と西に300mしか範囲がなかった為、我々の基地は半分程しか入っておらず一部の格納庫及び弾薬庫が範囲外になっているようだ」





「はぁ?」


 誰が出したのかは分からないが、理解出来るがしたくない現実で無言になっていた会議室には誰かの間の抜けた小さな声がハッキリと響いてしまった。




(最悪だ、最悪だ、本当に最悪だ、無理だろそんなの自衛隊は俺が引き連れた沢山のゴブリンを圧倒的に倒したんだぞ?、だがそれは武器があったからだ、それが一部使えない?何の悪い冗談だよ…)




「敵は10万、対してこちらは自衛官が500名足らずと警察、消防合わせて100名と避難民の戦える者が100名足らず‥‥どう考えても数に差が・・・」






(あぁぁ、知らなかったし知りたくも無かったんだが、市役所と基地で自衛隊の人は今500名しか居ないのね。つまり、1人の自衛官がゴブリン200匹倒せば良いのね、うん、無理じゃね?)




 あまりにも負け戦な戦い過ぎる。


 俺でも諦めたくなる、一人頭200って無理でしょ。


 まぁ五島さんとかなら可能かもしれないよ?、それか潤沢な予備弾薬があるとかさ、でも大島さんのあの感じからして恐らくメインの弾薬庫は使えなく、弾薬もあまりに余ってる訳では無いのだろう。




 ならどうする、こんな事をしている間にも時間は刻一刻と迫ってきている。




 やはり防衛ラインを築いて、敵を減らしながら後退を繰り返すしかないか、嫌、それだと避難民から戦える者を増やしたとしても、自衛隊含め1000名でも1人100匹、1ラインで2匹全員が殺せたとしても50ライン分もの防衛ラインを形成しなくてはならない、そんなの不可能だ。




 仮に1ラインの維持の時に1人20匹で5ラインなら形成出来るか?、それなら市役所と今のゴブリンの間に一箇所、市役所に一箇所、自衛隊の敷地の境界で一箇所、自衛隊基地内で更に一箇所、基地を抜ける反対側の境界の一箇所、この五箇所で済むのなら時間的にも簡素な作りでも良いからバリケードとかを作れるはずだが・・・・






 そんな事を思っている間にも、市民側からはどうすんだッ、ちゃんと守れるのかなどの罵倒が自衛隊側に飛んでおり、話し合いなどと言える状態ではなく、自衛隊が黙って聞いて堪える感じで双方が過ごしていた。




(はぁ、バカらしぃこんな奴らの為に来たのかよ、こなきゃ良かった)




「喚いていても始まりません、大島さん提案があります、よろしいですか?」


 俺はさっさとこの会議室から出たいが為に話を持ち出したのだった。


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