43.会議③
俺はあれから大島さんに作戦を提案した。
俺が提案しようとすると周りの野次となりかけている連中が、文句を言いそうだったが大島さんがドスの利いた声で黙らしてくれたので俺は、何事もなかったかのように提案した。
提案内容の全体としては簡単だ。
非戦闘員を守りながら、精鋭部隊が敵の頭を叩く。
そもそもこのワールドゲームとかいう今回のこの戦いの人種の勝利条件は、恐らく敵のトップであろうモンスターの討伐なのだ、自衛隊のスキンヘッドがゴブリンを全て倒すとか言ったおかげで一時は前提を見誤る所だったが冷静に考えれば、勝ち方は至ってシンプルだったのだ。
それと同時に先程考えていた、五箇所の防衛ライン構築の話もし、大島さんがその案を採用すと言ったので大方の作戦はこれに決まったので今は自衛隊側と一般人側で少し修正しながら作戦をまとめている最中だ。
(流石に俺が1人で考えたより、どんどん良くなっていくな・・)
まず俺が提案した防衛箇所の内一つが変えられた、それは自衛隊基地で3箇所作るのが俺の提案だったが、市役所と敵の間を一箇所では無く二箇所にするそうだ。
理由を聞いたら、市役所と今の敵の場所までの間は捨てても構わんが、市役所はちと話が違うらしく、市役所と基地との間に余分にバリケードを築いてしまえば、我々が一旦市役所を捨てて取り戻す時にそのバリケードが敵に利用される懸念と、そもそも市役所とゴブリンまでの空いてる距離なら2箇所なら作れると判断したからだそうだ。
そして防衛してる間に攻める精鋭部隊、ほぼ決死隊は五島さんが選ばれ、必然的に提案者の俺も入れられ俺が入った事で望奈さんも入る事になった。
「何でそんなに望奈さん、静かなんですか?」
俺は作戦の調整を双方に任せ、横で静かに座っている望奈さんに小声で話しかけた。
「えっ?だって、面倒でしょ?あの人達の相手をするのは、それにこれは貴方が言い出した事だから相当ピンチにでもならない限り私が会話に参加する気は最初っからなかったの。」
(なるほど、この人そんな考えで横で静かにしてたのね・・)
「でも望奈さん、が助けたいアピールしてなければ来なかったんですけどね」
「良いじゃない、貴方の提案した作戦で話がまとまりそうなんだしさ、それに私達、後は此処で生きるか死ぬかの決戦をするだけなのよね..。」
ぁぁどうして、またそんな悲しそうな顔をするのだろうか、俺にはどうする事も出来ない望奈さんはこの戦いは負けると思っているのだろう、だからそんな顔をしてるに違いないはずだ。
俺でも諦めたくなる。
この状況で勝利だけを信じ前を向きポジティブに過ごすなんて事は、他人を助けようと行動する望奈さんでも無理だったか。
「望奈さん、心の何処かでこの戦い諦めてませんか?」
「そんな事は・・無いとは、言い切れないわね、ごめんなさい。」
「別に謝って欲しい訳じゃないので謝罪いりませんよ、それより勝手に死なれては困るんですが?」
「そうだったわね、何で私あの時あんな話を了承してしまったのかしら。」
「そうですよ」
俺は望奈さんに耳打ちする為に顔の向きを変え、そして一言発言する。
「この戦い終わったら初めてもらってあげますからっ」
これで馬鹿らしさで少しは戦いに負けるという諦め気分が、俺に対しての嫌悪感や危機感に変わるはずだ、場合によっては殺されそうだが。
「ッ!」
望奈さんは目を一瞬見開き、そのまま固まってしまった。
(あれ、横腹ぐらい思いっきり殴られるか、足を踏まれる覚悟をしていたが、心配しすぎのようだったな)
よく分からんが良いや。
そして作戦が決まり、双方で役割分担が終わったらしく俺にも話を聞くように言って最終確認が始まった。
この時、望奈さんが下を向いて顔を真っ赤にしてた事を知るのは、椅子の下にカバンごと置かれていたドクロンだけだった。
「それでこれより、我々は自衛隊が主導とした防衛ラインの構築と既に戦闘出来る市民を主導として避難民の移動及び、戦闘に加わってくれる者の呼びかけにかかるのだが、千田さんと緋彩さんの二人は五島と共に基地及び市役所周辺の地理を把握して貰いながら、戦闘が始まるまでは自由にしていてくれて構わない、恐らく戦闘が始まれば君達、精鋭部隊はまともに休める時が少ないだろうからな」
「それで良いのなら、こちらとしても有り難い話です」
「それでは皆、各自持ち場に行き準備を始めてくれ敵は待ってはくれないだろう、残り2時間30分しかないぞ急げッ」
大島さんの締で会議は終了され、双方の人達が一斉に席を立ち移動を開始する。
勿論俺と望奈さんはのんびり座っており、会議室のドア周りの人集りが無くなるのを待っているが。
(もう今日は疲れてばっかりだな、今から1時間でも仮眠しようかな・・集中力を維持するには悪い事じゃないだろうし)
「ぁ、あ、あのッ! 緋彩先輩ですよねっ」
そんな座り組に話しかけて来る女性とその横には会議室に入った時に思い出せそうで思い出せなかった男性が居たのだった。
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