第15話 転生十五日目 終
「リオ様、大丈夫でございますか?」
里桜が神殿の聖徒から足の傷を治してもらっている姿を見ながら、リナは本当に心配そうに聞く。
魔獣討伐も大きいものはなく、手空きではあるにしても、足のマメ程度で聖徒から治癒魔法を受けられているのは、シドの娘である、アナスタシアの力が大きい。それがあるから、連日数時間にわたるダンスレッスンを受ける事が出来ている。
治療が終わり、里桜がお礼を述べると、聖徒はすっと部屋から出て行った。
「リオ様、こちらに渡ってきてから半月ほど。連日お休みもなくお勉強にダンスレッスンに…体を壊してしまう前にお休みを取ってくださいませ。せめて、午後のお勉強の時間をダンスレッスンにいたしませんか?ずっとお昼休みもろくにお取りにならず・・・」
リナは眉を八の字にしている。
「ありがとうございます。でも、あと二十日ほどで、舞踏会です。お相手をして下さる、オリヴィエ参謀に恥をかかせたり、迷惑をかけてしまったら申し訳ないので。礼儀作法もきちんと勉強しておきたいんです。こんなに急に練習するのは、舞踏会までにしますので。」
「兄の事はお気になさらずに。どうとでもなります。例え、リオ様が何か失敗をしたとしましても、それを補えないようなら男爵の爵位は謹んで返上すべきだと思っておりますので。リオ様は本当にお気になさる事などありませんよ。」
本気で言っている様子のリナに苦笑いをしながら、
「それにアナスタシア先生も、休みないんですよ。ダンスの時は休んで下さいと言ったんですけど、生徒が頑張っているのに、先生が休む事は出来ないと。そう言われると、練習中に気も抜けなくて、するとつい時間が過ぎてしまうんです。」
リナは、はーっと浅くため息を吐いた。
「わかりました。本日の夕食も鶏肉料理でよろしいのですか?もう何日も鴨肉、鳩肉、鶏肉ばかりですけど。」
こちらの世界では、鶏肉は平民の食べ物と言う意識があるようで、王宮で出される事はなかったので、敢えて頼んで出して貰っている。
「大丈夫です。鶏胸肉に疲労回復の成分が多く含まれていると聞いたことがあるんです。鳥って遠くまで飛んだりするでしょう?そう言う回復成分を持っているから、長距離飛べるんですって。鶏肉を食べて効き目があるのかは私には分からないんですけどね。それに、ここの料理人の方々本当に腕が良くて、いつもおいしいので大丈夫ですよ。」
「わかりました。午後の講義の時間が始まります。参りましょか?」
里桜は頷いて、立ち上がった。
利子は日本で言うA5ランクのステーキ肉を頬張りながら、リンデルに手紙を読ませている。
「その人の爵位は?」
「男爵様でございます。」
「じゃあ、断って。男爵の主催する茶会まで参加している暇はないから。次。」
渡り人が異世界から召喚された事が広まってからのひっきりなしのお茶会への誘いは、やはり利子が救世主だったと流布されてからはその数が倍以上になっていた。
「そう言えば、レオナール陛下から練習の日程について連絡は来たの?」
「はい。やはり、お忙しいので、連日とはいきませんが、当日まで数回は調整下さるそうです。」
「そう。ダンスの先生も、陛下はとてもダンスがお得意で、陛下に任せていれば大丈夫と言っていたし。少しは練習しているし。渡り人の方はどうだった?」
利子は、自分が主役となる日に練習不足で里桜より劣ることは避けたかった。
「午前、午後と予定を確認しましたが、全て座学でございました。エスコート役のオリヴィエ参謀も通常勤務をされているご様子で。」
「そう。」
利子は、フォークとナイフを置くと、考えふける。
結局、白金の魔力ではなかったけど、私の方が救世主だという事は、間違いないみたい。どの物語にしてもお披露目の舞踏会で、私が王様にエスコートをしてもらえるって事はやっぱり私がヒロインなのだろう。
出来れば、どの作品だったか思い出せれば良いのだけど。せめて、どの出来事で好感度が上がるとか、この先にどんなイベントがあるのかは・・・思い出したい、けど思い出せない。
まぁ、あの子は国軍の偉い人にエスコートを頼んだみたいだし。一度挨拶に来た二人のうち・・・一番偉い人は若い方だった気がするけど・・・。
国軍は平民が主体だと言ってたけど、一番偉い人ともなると、やっぱ貴族じゃないとだめなのかな、こう言う物語にはあってもおかしくはない設定だもんね。
今のところ、攻略対象は、王様のレオナール、騎士団長のジルベール、宰相のクロヴィス、王様の従兄弟のアラン。
全部で四人って言うのは少ないし、あの平民で国軍の二番手の人は出世できない様なバックグラウンドがある陰キャ設定なのかな。その辺りも含めて舞踏会の事、渡り人に確認してみよ。
「明日、渡り人呼んでもらえる?お茶に誘うわ。前回は私があちらへお邪魔したし。彼女、
「はい。かしこまりました。」
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