第2話 転生一日目 1
「それが、我が国の建国の女神Iris様でございます。」
真っ白な生地に錦糸の刺繍が厳粛さを醸し出している。何の宗教かは分からないが、話も何もかも宗教色が強い。
目の前の四十代後半から五十代くらいの男性は、さっきから私の理解の範疇を超える話を続けている。もうどこから問い直したら良いのか分からない。
話している男性と同じ服装の人は他にあと三人。この集団の中では多分この人たちが偉い人たちなんだろう。
その後ろには私たち二人をぐるっと囲む様に円状にたっている男女。男も女も二種類の服装・・・仕事や立場によって制服が違うのか・・・。っていうか、本当に何?誘拐?拉致?って言っても我が家は母一人子ども三人の貧乏家庭。お金はないし、一般企業の一般事務員に脅したところで出せる情報もない。新手の宗教勧誘?これが一番しっくりくるか。
・・・それか、悠のサプライズ?フラッシュモブ?悠って実は日本にいるの?そもそも、この人たちの顔立ち、アジア人じゃないよね?日本ってこんな欧米系の顔立ちの人多いの?そう言う宗教?
「そして先ほどもお話しましたが、神様が救世主様へ石をお渡しになります。その石をお持ちの方が救世主様だと言う事になります。」
「それはどんなものなのですか?」
さっきから静かに聞いていた隣の子は突然声を出した。私は知らないことや理解出来ないことを何度も聞き返したり質問したりしていたけど、ちゃんと聞いていたのにこの状況を疑問に思わないって事?この子もしかして‘サクラ’?
「私どももそれを見たことはございません。前回この国に救世主様を召喚致しましたのは何百年も前の事でございまして。」
何?召喚って・・・悪魔やなんかじゃないんだから・・・海外のクライムドラマである、誘拐からの新興宗教の洗脳?やだ・・・怖い。
本当にどうしよう。誰も助けてくれないよね?だっていま春の連休中だし。あと三日は私の誘拐に気がついてもらえない。会社を無断欠席すればみんなおかしいって気が付いてくれるけど・・・
悠は今、海外出張中だし。昼夜が逆転してるからSNSでしか連絡してないし。時差十三時間あるところから捜索願って出せるのかな?悠、気がついてくれるかな?いや、出張行く前“友達と楽しんでこいよ。飲み過ぎんな”とかって暢気に言ってたしな・・・
「あっ!私、持ってました。石。」
返信なくても気にしないかもな・・・っていやっ、こっから見ても分かる・・・それプラスチック製のおもちゃかなんかだよね?一応ブリリアントカット風の形だけど。石じゃないでしょ。石じゃ。
「おぉ。これは・・・この世の物とは思えない透明度に、軽さ。この大きさでこの軽さは、神の遣わされた石かもしれません。」
いや、みんなもどんな物なのか知らないのね。確かに軽いよね多分。だってプラスチックだものね。
「救世主様ようこそ、我がゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンへ。」
「救世主様、お名前をうかがえますか。」
「利子です。」
「トシコ様、こちらの方は?」
「いいえ。知りません。赤の他人です。」
いや、救世主さん・・・私のこと助けてよ。私も救世してよ。この洗脳集団から。
「ロベール尊者、神殿の史書には、過去にも救世主様一人、渡り人様一人の同時に二人召喚された例もございませんでしたか?」
「うむ。確かにそう言う記述もあった。召喚術をしている際に側にいたりすると、そう言う事が起こりえる。」
って言うか、本当何なの?この状況。もう本当にどこなの?ここ。どうして隣の子は普通にこの状況を受け入れてるの?・・頭が痛い、クラクラする。
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