メリーくんがやってきた

 しょうたくんの三番目のお兄ちゃん、みつあき兄ちゃんは電車で少し遠い中学に通っています。それでもこまめに家に連絡してくれるので、おかあさんは変なところで寄り道するような心配はしていません。

 ほら、今日もメッセージが届いてますよ。


――もしもし、私みつあきさん。今、校門の前にいるの


――もしもし、私みつあきさん。学校の最寄り駅についたの


――もしもし、私みつあきさん。今、電車に乗ったの


「しょうたくんのおにいちゃんって本当にまめに連絡くれるのね」


「それにしても、なんかメリーさんみたい」


 しょうたくんのお友達のママたちも困惑気味。

 ええ、もちろんわざとだと思いますよ。


――もしもし、私みつあきさん。今、バスに乗ったの


「あらら、そろそろ帰ってくるかもしれないね。おうち帰ろうか」


「やだ! もっと遊ぶ!!」


「でもお兄ちゃん帰ってきちゃうよ」


――もしもし、私みつあきさん。そろそろバス停につくの


「本当にメリーさんみたいだね」


 メッセージを見てあわてるおかあさんと苦笑するママたち。


――もしもし、私みつあきさん。今、バスをおりたの


 慌てておかあさんもメッセージを返します。


――おつかれさま。おかえりなさい


 送信するやいなや既読がついたかと思うと、また新しいメッセージが。


――もしもし、私みつあきさん。今、あなたのうしろにいるの


「うわぁっ!?」


 思わず変な声を出して振り向くと、そこには都市伝説……ではなく、満面の笑みの兄ちゃんが。


「やった、びっくりした? びっくりした??」


「心臓に悪い!!」


 おかあさんが兄ちゃんの後ろ頭を思い切りはたいたのも仕方がないと思いませんか?

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