あゝ君腐りたまふ勿れ……あ、手遅れだったわ

葉澄環

哀れな腐女子の狂気である。

 懺悔します。私は年齢一桁で腐りました。

 あ、腐るというのは反抗期を迎えるとか非行に走るとかそんな物騒なものではなく、 B の L に 目 覚 め る ことです。今から語るこのエッセイもどきはBのL、つまりボーイズのラブの扉を開けてからこの身に起こった同人的変化を捲し立てていくものです。もう私は腐女子歴が数年前に成人してしまったので、どうしようもねえな? と思いながら読んでいただけると幸いです。大丈夫、すぐに終わりますから。

 私がまだ九歳くらいだった当時はインターネットサーファーの人口もようやく増え、個人サイトが林立し始めた頃合いです。ツ●ッター? ピク●ブ? そんな甘いサービスなんてないですよ。自力で好みのイラストや小説のサイト様を訪問して開拓するのです。まあそれはそれとして、当時ぴゅあぴゅあだった私がめちゃくちゃハマってたゲームのファンサイト(全年齢)を見つけてアクセスしたら……おわかりいただけただろうか。そこにBのLイラストが……載っていたのです。いわゆる神絵師さんの綺麗なイラストで。なにかが私の頭の中でビッグバンしました。

 そこからは早かったですね。ぴゅあぴゅあのぴの字もなくなり、授業中なんかは腐妄想が捗り、勉強をほっぽりだして、へたくそながらノートに推しのイラストを描きまくったものです。太宰治かよ。

 私は腐ってから五年目の秋、イラストの紙系グッズで同人デビューしました。紙系グッズとはなんぞ、と言えば、自分の描いたイラストを自宅のプリンターで紙に印刷し、ラミネートカード(通称ラミカ)やシール、缶バッチ、便箋などのグッズにすることと認識するために私が勝手に呼んでいる概念です。ああ、でも古のグラデ便箋を刷るときはお小遣いをやりくりして印刷屋さんにお願いしましたね。その印刷屋さんは現在同人界から退いてるみたいなんですが、いい印刷屋さんでした。紙系グッズは面積が嵩張るといけないのでカップリングイラストなどはほぼ描けず。紙系グッズサークルをやりながら、同人誌を出したいなとほのかに思いを馳せますが、イラストは描けても漫画が描けないし、当時は小説のお作法なんかも知らなかったので書き方がわからず……というかそもそもの話、作文が今書いてるこのグダグダ話を足取り軽やかに追い抜いて壊滅的に駄目だったもんで、本はいつかね……なんて夢見たわけです。そしてイベントの際に印刷屋さんが置いていくカタログを見て「うわ印刷代高っ! 自分の画力や筆力にこんな金額出せんわ」となり、そこで初めて同人誌を出すのはある程度収入がある人の娯楽なんだな……と悟りました。しかしながら当時の自分に今の私は言いたい。お前は金はないが二十五歳くらいになってからオフセット印刷より圧倒的に安いオンデマンド印刷に出会って、アホみたいに同人小説書きまくってめちゃめちゃ本出すぞと。あ、あと二十歳過ぎたら絵描けなくなるぞも追加で。私は病気を理由に大学を中退しているのですが、学生を辞めて、暇な授業をお絵描きでやり過ごす必要がなくなったら凄まじい勢いで絵が下手になりました。習慣って大事ですね! ちくせう、高校生のころは美術部で、デッサンは後輩より下手くそだったけどそこそこ賞もらってたのに! ですが、描けなくなったなら仕方ないなと受け入れました。

 さて、そんなこんなで絵が描けずに萌えを吐き出す術を失った私ですが、某刀のゲームをサービス開始と同時にプレイしてその日のうちにどハマりし、十日後くらいに「そうだ、小説書こう。このパッションは失われた画力で描く一枚絵にはまとめきれぬ」と京都に行くみたいなノリで作文マンになる決意をし、ワードをガッチャガッチャ言わせて推しカプの小説的な何かを書いたのです。そして勢いのままにピ●シブにぶん投げました。結果、ジャンル黎明期だったからかめちゃ伸びた。このクォリティでピクシブ一桁順位とは……? となった記憶があります。文章で萌えを描写するのが楽しくて一気に腐敗が進んでしまいましたし、ここで勢い余って本を出し始めたんですよね。最初の小説本がオンデマンド印刷ながら帯付きカバー付き文庫本百ページ超。そして東京遠征ライフもここからスタートします。そういや大人向けのえっちなお話を初めて書いたのもこの頃ですね。えっちなお話は正気を失うとできます。大人のお姉様方は是非一緒に正気を失いましょう! いや、正気を失いましょう! じゃねえよ。

 さらに時が進み、とあることがきっかけで某刀のゲームを去り、次は某文豪のゲームにハマりました。こちらもまた頭から突っ込むというやべぇハマり方をして、最初は小説オンリーで、短編集はもちろん長編やシリーズものの本も何冊か出していたのですが、このジャンルに来て何を思ったかイメージアクセサリーを作り始めてしまったのです。これもまた大きな転換。なぜならば、本より売れる、というかアクセサリーのためだけにBのLの島まで会場を泳いで来てくださる方が増えました。ありがとうございます。これって喜んでいいやつ? 喜んでいいやつだな。ワーイみんなありがとー! しかし、残念ながらここ二年ほどコロナ禍の憂き目によりど田舎在住の私は遠征はおろか隣県にも出られていません。人間とは、締め切りがないと同人誌を書けない業が深い生き物なのですが、私も例に漏れず小説をほとんど書かなくなり、最近はめっきりアクセサリー屋さんになっております。こんなに作品発表媒体変わるサークルはそうそう無い。そうそう無いんですよ。でも概念推しを作るのめちゃくちゃ楽しいからオススメです。イメージアクセサリーで推しカプカラーをチョイスして買ってくださる方が意外にいらっしゃるので、「ほほう……お目が高い……」と怪しい商人になれてこれもやめられないです。まあお前の趣味は金のかかる趣味だな! という話なんですけど。

 雑にまとめると「腐るのも悪くねぇし、たとえ萌えの具現化媒体が変わっても自分は自分のやりたいようにやれば楽しい!」という話なんですが、腐ることのデメリットは教えておかねばなりません。それは「一度腐ると一生完全に足を洗うのは不可能」……これにつきます。足をそれは入念に丁寧に洗ってきっぱりやめたつもりでも沼(ジャンル)が迫ってくるんですよ……恐怖ですね。腐敗してたっていいじゃない。人間だもの。たまを。

 これを書きながら自分の二次創作の●イッターアカウントの画像欄を漁っていたら、気が付けば五年以上ハマっている某文豪ゲームの第二の看板とも言えるあの文豪のイメージ短歌を発掘したので(このエッセイもどきを書いている時点で十ヶ月前のやつでした)、それを以て〆といたしましょう! どこまでもオタク!


  いづこかの速きに呑まれ散りし君

  ふたたびまみゆ友の手を取れ


おしまい。では、また逢う日まで。

葉澄環

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