第19話完全体
「僕は完全体のアンデッドやん」
そう仰りながらフードを取り、顔をこちらに見せてきました。
青白い顔色ですが、死人だと言わなければ普通の人間となんら変わりはありません。
先程のアンデッドとは見た目が違いすぎます。
「いや、そんなはずは……普通アンデッドは意思を持たないはず。何故君は意思を持っているんだい?」
黙って聞いていたニルスさんが黒ずくめの方に問いかけました。
確かに襲ってきたアンデッドは意思を持っておりませんでした。
「それは、僕が自ら望んでアンデッドになったからやん。アンデッドになりたくなくて拒否した奴は意思を奪って肉体だけ貰ってるやん」
……外道の一言ですね。
私とニルスさんは顔を歪めながらアンデッドの方の話を聞きました。
「
そう仰ると、先ほどまで襲っていたアンデッドを黒ずくめのアンデッドが担ぎあげ、私たちの目の前におりました。
――いつの間に!!!??
私もニルスさんも全く気づきませんでした。
驚いている私達を横目に「じゃぁ、僕の役目は終わりやん。バイバ~イ」と手を振りながら消えて行きました。
残ったのは茫然と立ちすくむ私とニルスさんだけです。
「……見えましたか?」
「……いや?」
先ほどの動きを見えたか確認しましたが、やはり私同様見えていなかったようです。
「――……はぁぁぁ~。こうしてても仕方ない。ボスんとこ戻ろうか?」
「そうですね……」
悔しさは残りますが、いつまでもこうしている場合ではありません。
すぐにでも便利屋へと戻り皆さんにこの事を話、解決策を練る方が大事です。
こうして私達は急ぎ、便利屋へと向かいました。
◇◇◇
「なるほどな。経緯は分かった。ご苦労だった」
便利屋に飛び込んだ私とニルスさんの姿に皆さんが驚き、ジェムさんが持ってきてくれたタオルで頭を拭きながらアンデッドに遭遇した事をゴリさんに報告しました。
話が進むにつれ、皆さんの表情も厳しくなるのも分かりました。
しかし、それよりも報告しないといけないのはアンデッドに意思があった事です。
そして、その動きはグロッサ国聖騎士団長ユリウス様の神速クラス。
「うそでしょ!?神速!?そんな相手どうやって相手すんのよ!!」
レナさんの仰ることはごもっともです。
通常の人間では到底斬れることも、触れることも不可能。
便利屋始まって以来の危機的状況に皆さん俯き言葉を失います。
「何じゃ!?辛気臭いのぉ!!」
そこへ現れたのはシャーロットさんでした。
私はシャーロットさんにも先程のことを報告し、その為皆さんの顔色が良くなかったことを説明しました。
「なるほどな……」
シャーロットさんも顎に手をやり、険しい顔をしながら考え込んでしまいました。
ゴリさんとシャーロットさんが考え込んでしまっては先に進めません。
しかし、そんな沈黙を破た方がおりました……
「あぁ~あ。いやや、いやや。なんや、この重たい空気。辛気臭くてたまらんわ」
頭に手をやり、椅子を傾けて仰るのはクルトさんです。
「そもそも相手が自分より速いだけで何やねん。そんな相手これから先ぎょうさん出てくるやろ?今そんなん言ってたら僕ら全滅やで?」
真剣な顔をして私達に言及してくれたクルトさん。
しばらく沈黙した後「……ぷっ」
「あははははは!!!確かにお主の言う通りじゃ!!」
「やだわぁ、空気に飲まれる所だったじゃない」
「辛気臭いのは
「……まさかクルトに教えられるとは……」
クルトさんの一言でいつも通りの皆さんに戻りました。
士気を取り戻してくれたクルトさんに皆さんが寄ってたかり、茶化したりしては感謝の言葉を述べていましたが、当のクルトさんはとても気恥ずかそうにしていたのは気の所為ではないでしょう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます