第17話遭遇
本日は生憎の雨模様。
山の方では稲光が光っているので、酷い雨が降っていることが分かります。
こんな日は早めに仕事を終え、部屋で大人しくしているに限ります。
……と思っていたのはお昼頃。
あれから私は有言実行で仕事を素早く終わらせ、部屋へ戻るとびちょ濡れのルーナが部屋で待っていて、その足には括られた白い紙が……
これは見なくても分かります。ゴリさんからの招集命令です。
「はぁぁ~」と大きな溜息を一つ吐いたあと、びしょ濡れのルーナにタオルを掛け優しく拭き上げました。
そして「暖かくして留守番お願いします」と伝え部屋を出ました。
外は既に薄暗く雷も鳴り響いています。
私は濡れない様、防水コートのフードを深く被り『マム』目指して全力で駆け出しました。
雨が降っているせいなのか町に出ている人の姿はまだらです。
私は近道をしようと表通りから外れ細道を通ろうと足を踏み入れた瞬間、悲鳴が聞こえました。
「きゃーーー!!!誰か!!誰か助けて!!」
その悲鳴の主は女性。すぐさま悲鳴の聞こえた方へ向かいます。
悲鳴は細道を抜けた広場の方です。
そして細道を抜けると、目の前に飛び込んできたのは──……
「──なっ!?あれは……アンデッド……?」
今まさに女性に襲いかかろうとしているのは、真っ青な顔をし頬はコケ、所々朽ち果てている体を必死に動かしているアンデッドでした。
女性は上流貴族らしく、身に付けている物は上等な物です。
従者の方が必死に主人を守ろうとしておりますが足が震えています。
「……あ……が、が……あ……」
アンデッドは唸りながらも躊躇なく女性に向かっていきます。
従者の方が剣で斬りつけますが元々が死人。意味がありません。
従者の方はその場にペタンと地面に尻もちをつき動けません。
その様子を見たアンデッドは、すかさず女性へと手を伸ばしました。
「イヤーーーーーー!!!!!」
ドゴンッ!!!
寸前の所で私の蹴りがアンデッドに直撃。壁まで飛ばしました。
「今です!!早くお逃げなさい!!」
「えっ、あっ……」
アンデッドが体勢を戻す前にこの場を離れるよう促しますが、女性の方はどうも腰が抜けて動けぬよう。
従者の方を見れば、こちらはしゃがみ込んだまま気を失っております。
──ちっ!!
そうこうしている内にアンデッドは既に体勢を戻し、此方へ向かってきます。
このお二人を安全な場所に移している暇はなさそうです。
「イヤーーー!!助けて!!お願いよ!!お金ならいくらでも払う!!だから!!」
女性の方が私の服を引っ張り必死に懇願しています。
「分かりました!!ですから手を離してください!!」
服を引っ張られている為、動きが取れません。
しかも、こんな日に限って剣は城の私の部屋に置いてきてしまいました。
必死に服を引っ張りどうにか離そうとしますが、女性は恐怖で私の言葉が聞こえていない様子。
──女性を殴る訳にもいきません……どうしたら……
男性なら殴って服を離させますが、相手は女性です。
助けた相手を怪我されてしまったら本末転倒です。
どうしよもなく、途方にくれていてもアンデッドは動きを止めず此方へ近づいてきます。
「絶体絶命……って感じだね」
後ろから声がかかり振り向くと、そこには知らない男性が立っていました。
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