第11話友達
ファニーさんとお友達になって数日。
「マリーさん!!」
「あっ!!マリーさん、一緒にお昼行きましょう!!」
「マリーさん、私もご一緒します!!」
……と、やたら絡んできます。
常に付いて回られるので便利屋にも行けず、大変困っている次第です。
なんせ手洗い場にも付いてくるので、そこは丁寧にお断りしました。
──やっと巻きましたか?
今はファニーさんの目を盗んで、中庭の木の上に避難しながら今後のことを考え頭を抱えておる最中です。
これでは、殿下の依頼どころではありません。
ファニーさんの様子も伺っていますが、おかしな点は見つかりません。
これだけ一緒にいれば少なからずボロが出るはずだと踏んだのですが、まったくありません。
──ファニーさんは無関係でしょうか?
そんな事を考えていると、頭上から「キュルルルル」とルーナの鳴き声が聞こえました。
「ピーーーー」と口笛を吹き、私の場所を教えると直ぐに私の肩に降りてきました。
「どうしたんですか?──……おや?」
頬擦りをするルーナの足元を見ると、何やら文が括りつけてあります。
中を見るとティムさんからの便りでした。
『ちょっとマリー。最近こっち来ないけど、どうしてんの?元気ならいいけど、生存報告はしてよね。それと、ゴリさんから伝言だけど一旦アンデッドは置いといてこっちに来いって』
『仕事だってさ』と締めくくられておりました。
仕事なら仕方ありません。
丁度上手い具合に、本日の仕事は終了。しかもファニーさんもおりません。
──このまま行きましょう。
辺りを見渡し、人影がないことを確認してから木の上から飛び降り、素早く城の外へと出ました。
城を出て振り返ってもファニーさんの姿はなく、どうやら上手くいったようです。
ホッとしている暇もなく、便利屋へと急ぎました。
◇◇◇
「しばらく留守にしてすみません!!マリアンネ、只今到着致しました!!」
息を整える間もなく便利屋のドアを開けば、皆さんこちらを見て驚いた顔をされました。
「本当に来たよ!!」
「やったぁ!!俺の勝ちね」
「やだぁ、負けちゃったわ」
「僕らもまだまだやね」
えっと、何の事でしょう……?
「…………」
戸惑っている私の元にヤンさんがやって来て『ティムの手紙でマリーが来るか賭けていたらしい』と言われました。
「は?」
どうやら勝ったのはティムさん、ルイスさん、シモーネさん、ニルスさんで大変喜びながら小銭を数えています。
負けたのはジェムさん、レナさん、クルトさんで、悔しなりながら「次は勝つ!!」と意気込んでおります。
──……私は賭けの対象にされたのですか?
ファニーさんに追いつかれないよう気を配りながらここまでやって来て、仕事だと思って出来るだけ早くと休憩もしないで全力できたのですのよ?
そう思うと、段々腹が立ってきました。
「…………」
『おい、マリー?』とヤンさんが心配してくださいますが、私は大丈夫です。今から、彼らに私の鬱憤を晴らして頂きますので……
「──……さぁ、誰から私のサンドバッグになって頂きましょうか?」
ゆらゆらと拳を鳴らしながら近づくと、顔を真っ青にした皆さんがすぐにルイスさんが差し出して来ました。
「ちょ、ちょっと待って!!なんで俺!?言い出したのティムだし、俺勝ったよね!?」
「勝ち負けなしで、こう言うのはルイスって決まってるじゃん」
皆に押されて私の前に差し出されたルイスさんはまるで生贄の様です。
ジェムさんとクルトさんは拝んでいますしね。
「では、ルイスさん。覚悟は宜しいでしょうか?」
「ちょっと待って!!本当にお願い!!」
「往生際が悪いですよ」
私が拳を握り構えると、いよいよまずいと思ったのか「分かった!!俺の勝ち分マリーにあげる!!」と早口で捲し立ててきました。
その言葉に、私の拳もピタッと止まります。
「……賭けてたのは悪かったよ。これで許して?」
そう言って差し出してきたのは、先程の小銭。
しかも、それなりに入っています。
──この人達はいくら賭けてたんですか?
「まあ、ルイスもこう言ってることだし、許してあげなさいよ」
シモーネさんが私の肩に手をやりながら仰っていますが、皆さん同罪ですけどね。
しかし、まあ、便利屋に来る機会にもなれたことですし、今回は目を瞑りましょう。
私が落ち着いたのを見計らってクルトさんが「でも、仕事はほんまやで?」と私に伝えてきました。
「今ボスが依頼主んとこ行ってるけど、どうも魔物退治みたいだけどね」
ニルスさんも口を挟んできました。
魔物ですか……アンデッドといい、この国は今や安心できませんね。
──さてさて、どのような魔物でしょうか。
本日の報酬……ルイスさんの勝ち分15000ピール
借金返済まで残り5億6千728万7100ピール
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