第10話禁断魔術書
あの後、殿下からもう一つ重要な情報を聞きました。
それは……この城の図書館から禁断魔術書が無くなっていることです。
城の図書館は童話ものや、流行りの恋愛小説。各国の歴史にまつわる書物や哲学、経済、産業まで幅広く取り揃えてありますが、禁断魔術書は人目の付かない隠し書庫に保管してい
るはずですが、それが盗まれたと言うのです。
その魔術書には、禁忌とされている呪いの魔術や陣、それ等のやり方が事細かに書かれているのです。
そして、アンデッドの作り方も同様に……
そして、隠し書庫は厳重に施錠され、その鍵を持っているのは司書官様ただ一人。
当然真っ先疑われ、第二騎士団団長のフリッツ様と副団長のニコラ様による尋問が行われましたが司書官様のアリバイは完璧でした。しかし、隠し書庫の鍵は見当たらず。
司書官様は責任を負い、城を出て行かれました。
この件が発端で城に入り込んだ者がいると判明したようなのです。
──なるほど、それで私に飛び火してきたのですね。
しかしまあ、禁断魔術を持ち出すとは……中々やりますね。
考えながら廊下を歩いていると、柱の影からチラチラこちらを伺う人影が……
「おや?ファニーさん。私に何か用ですか?」
私が声をかけるとファニーさんはビクッと肩を震わせました。
どうやら驚かせてしまった模様です。
「あの、この間は、ありがとうこざいました。お礼が言えて無かったものですから……」
ゆっくり顔を出し、深々と私に頭を下げてきました。
この間と言うのは、サイモンさんから助けた件ですね。
「困っている方がいましたら助けるのが当然なので、お礼など不要ですよ」
「いえ、そんな事ありません!!マリー様が通らなければ、私はあのまま連れて行かれる所でした。本当に感謝しております」
物凄い勢いで私の手を取り、興奮気味に言われました。
「それで……」と付け加えながら
「私とお友達になってくれませんか?」
「は?」
まさか、対象者からの友達発言に耳を疑いました。
この方は教会とは、関係ないのでしょうか?……いえ、もしかしたら私が調査しているのを察し、仲良くなって気をそらすつもりでしょうか?
私が色んな仮説を立てていると「マリー様?」とファニーさんが顔を覗き込んできて「はっ」としました。
「……やはり、ご迷惑でしょうか?」
シュンとしながら尋ねてくるファニーさんに「そんな事ありませんよ」とついつい言ってしまいました。
「本当ですか!?嬉しいです!!」
ファニーさんは本当に嬉しそうに顔を輝かせていました。
ファニーさんがただの侍女にしろ、教会の者にしろ、こうなってしまったら仕方ありません。友達として接しましょう。
向こうも私の事を探る為に近づいたのかも知れませんし、それならばこちらもその策略に乗ります。
「マリー様?」
「……すみません。そのマリー様と敬称を付けるのはやめていただけますか?仮にも友達になったのです。マリーでいいですよ」
マリー様なんて呼ばれる程偉くもありません。
ただの平民ですから。
ファニーさんは暫く考えた後、頬を赤らめながら少々上目遣いで「マ、マリー……さん?」
と呼びました。
ズキュンッ!!
──なんでしょうか!!この可愛らしい小動物の様な方は!!
あまりの可愛らしさに胸が高鳴りました。
──惑わされてはダメですマリー!!気を確かに持ちなさい!!
スーハースーハーと深呼吸をしてからファニーさんに向き合います。
「──……ファニーさん。友達として忠告なんですが、頬を赤らめ上目遣いで物事を言うのはおやめなさい。特に男性には要注意です」
そう伝えるも、ファニーさんはなんの事か理解出来ていない様子。
こんな子だから狙われるのだと、判明しました。
なんとも危なかしい……
その後調査ついでに、見張る事にしたのは言うまでもありません。
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