第6話サイモンさんの結末
声を掛けてきたのは、ニコラ様でした。
サイモンさんは突然現れた副団長に明らかに動揺している様で、顔色がよくありません。
「嫌がる女性を無理やり連れて行くのは紳士ではないな……──その手を放せ」
ニコラ様の睨みにビクッと肩を震わせたサイモンさんは、思わず掴んでいたファニーさんの手を離しました。
ファニーさんはすぐにこちらに駆け寄ってきたので私が保護しました。
ファニーさんは怯えきっており、私にしっかり抱きつき震えています。
「もう大丈夫ですよ」
震えているファニーさんに優しく声を掛けると多少は安心したのか、私の顔を見上げて来ました。
その顔をまじまじと見ると、確かにお美しい方です。
私とは違い、守ってあげたくなるタイプでしょうかね?
「──庭師のサイモンだな?」
「……は、はい」
私がファニーさんを保護したのを見たニコラ様はジリジリとサイモンさんに近づき問いかけます。
サイモンさんは先ほどの勢いはどこへやら、素直にニコラ様の問いに答えています。
「お前は陛下の気に入りだからと、好き勝手しているらしいな」
「い、いや、そんな事は……」
ほう、これが初めてではない様ですね。
例え陛下のお気に入りだからと言っても許せることではありませんよ?
──そもそも、陛下が
案の定ニコラ様の言葉を聞いて、顔色がだんだん悪くなっています。
バレないと思っていたんですかね?
「陛下はお前の事など気に入りでない。むしろお前は今日限りでクビだ」
「は!?」
「それと、お前の師でもあるトムから伝言だが『お前が一人でも大丈夫だからと、城の手入れを任せたが間違いだった。お前は二度と私の元へ戻ってくるな』と」
「なっ!!?」
そこまで聞くと、サイモンさんの顔色は真っ青通り越して白に近い色になりました。
「──以上だ。分かったらささっと消えろ」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!ここを辞めさせられたら俺はどうすればいいんです!?師匠の元にも戻れないんですよ!?」
当然の事をしていたので仕方ないでしょう。
処罰としては軽い様な気もしますが、まあ、師匠のトムさんの所にも帰れない様ですし、路頭に迷うのは必然。
これから先は闇です。
サイモンさんは当然ニコラ様に詰め寄りますが、ニコラ様はそんなサイモンさんを軽蔑した目で睨みつけ「知るか」と一言。
「そもそも、こうなったのは自業自得だろ?それとも、自分が正しいと言えるのか?」
いつも私に向ける優しい笑顔とは違い、ギロッと睨みつけるニコラ様は私でも恐ろしくなる程でした。
「分かったら私の目から今すぐ消えろ。不愉快で仕方ない」
サイモンさんはギリッと歯を食いしばってはいましたが、それ以上は何も言えなくなりその場から走って逃げていきました。
サイモンさんの姿が見えなくなると、ファニーさんの震えがようやく止まりました。
「マリー、助けるのが遅くなってすまなかったね。怖かったろ?」
サイモンさんの姿が見えなくなると、いつもの様に優しい笑顔振り返りながら話しかけてくれました。
──先程とは別人ですね……
「いえ、もう少し遅ければサイモンさんに大怪我を負わせるとこでしたので、助かったと言えば助かりました。ありがとうございます」
「あははは!!それでこそマリーだね」
怪我をさせた方が大事でしたから、そこは本当に助かりました。
騎士ならまだしも庭師に手を出したら確実に病院送りです。
そうなると、慰謝料という名の借金が降り掛かって来るところでした。
「──……そちらのお嬢さんも大丈夫かい?」
私が抱きしめているファニーさんに手を差し伸べながら仰りました。
ファニーさんはニコラ様の笑顔に顔を赤らめながらも「大丈夫です。……助けて頂きありがとうございます」と述べました。
チラッとニコラ様の方を見ると、何やら目で合図をしてきました。
──ふむ。ここでは話せない内容ですね。
どうやら何か話があるようです。
話を聞く前にファニーさんをテレザ様の元へ送り届け、簡単に経緯を説明してから私は再び殿下の執務室を訪れました。
ドアを開けると殿下、オスカー様、ニコラ様がソファーに座り待っておりました。
「お待たせして申し訳ありません」
「大丈夫よ。さあ、座ってちょうだい」
そう促され、当然の様にオスカー様とニコラ様の間に……
そして話された内容は、当然サイモンさんの事。
私はこのお三方からサイモンさんも対象人物だと聞いていたのですが?
こうもあっさり対象者から外れるものですかね?
「サイモンの事だけど彼、やってる事はゲスだけど教会との繋がりはないことが分かったの」
「それはどうやってですか?」
「──……リークして来た者がいた。『サイモンは我々とは無縁。同士にするな』と」
私が尋ねると、オスカー様が答えてくれました。
どうやら、教会の方々はサイモンさんと仲間にされるのが嫌だったのですね。
しかしやっている事は違えど、似たもの同士な気も……
「──で、そのリークして来た人は何方ですか?」
「それは、分からん」
「私の机の上に書面が置いてあったのよ。……いつの間にかね」
なるほど。誰もいない時を狙い、置いていったのですね。
しかし、これで城の中に廻者が居ることは確実になりましたね。
引き続き警戒しながら城を回ると言う事で、今日の調査はここまでという事になりました。
そしてサイモンさんがいなくなり、ファニーさんとジャックさんのお二人に的が絞られました。
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