第49話事件発生
ゴリさんは未だに黙ったまま、考えているご様子。
ふと、横を見れば飽きもせずに罵りあっているシモーネさんとセクスさんの姿があります。
まだ暫く終わらないだろうと、他の方々はヤンさんの指示で馬車の荷物を船内に運び入れている最中です。
「──あぁ、いたいた!!」
聞き覚えの声に振り向けば、馬に乗ったユリウス様とマルクス様でした。
突然の団長と副団長の登場に、セクスさんとドゥオさんは分かりやすく慌てています。
──何やら、様子がおかしいです。
ユリウス様もマルクス様も、目の前にいるお二人は見えているはず。しかし、お二人共一切捕らえようとはしません。
それどころか、不敵な笑みを私達に向けています。
「どうしたんだ?こんな所まで」
「いや、お前達に渡すものがあってな。……マルクス」
「はい。──こちら、陛下からの書状になります」
マルクス様から書状を受け取ったゴリさんは早速目を通しましました。
読み進める内にゴリさんの表情が曇り出し、最終的にはグシャッと書状を握り潰してしまいました。
「……あんの、クソ国王。面倒事押し付けやがったな……」
暫くブツブツ文句を口にしているゴリさんでしたが、大きな溜息と共に私達に向き合いました。
「よく聞け!!セクスとドゥオは、
「「はぁぁぁぁ!!??」」
本日二回目の叫びです。
「この二人は能力者だからな。監視する目的も兼ねている」
淡々と話すゴリさんに、私達は言葉を失っています。
「上手い具合に
ギロッとユリウス様を睨むと「ご名答」と詫び入れることなく開き直りました。
国王様からの
下手に断ると更に面倒なことになりかねません。
シモーネさんなど、ギリッと血が滲みそうなほど唇を噛み締めて悔しそうです。
片や爆乳が毎日見れると歓喜の喜びを吠えているルイスさん。
「──……はぁ~、まったく……お前の父親に伝えとけ。貸一だとな」
「承知した」
ゴリさんは頭を掻きながらユリウス様に伝えると「ふっ」と微笑みながらゴリさんの言葉を受け取っておりました。
そして、ゴリさんと話を終えたユリウス様は何故か私の元へやって来ました。
「……マリアンネ。お前の事は忘れない。私をあそこまで侮辱した者はお前が初めだったからな」
どうやらユリウス様はお兄様との戦いの時の事を根に持っているご様子。
私は不敬罪としてしょっぴかれるんではないかと、内心冷や冷やです。
「あはははは。安心しろ、罪になんて問わない。──……しかし、私の心は気づ付いたな。その代償は頂きたいな」
私の顔色を伺っていたユリウス様はそう言うなり、私の頬に優しく手を添えてきました。
不思議に思い、顔を見上げると──……
「チュッ」
唇に何やら柔らかい感触が……
「「きゃーーーーーー!!!」」
シモーネさんとセクスさんの黄色い悲鳴が響き渡りました。
「あ~あ、とんでもない大物釣り上げちゃったね」
「マリーは色恋に疎いからこのぐらいの刺激があった方がいいんじゃない?」
更にティムさんとルイスさんの声が聞こえますが、私はそんな事聞いている状況ではありませんでした。
「……また会いに行こう。それまでこの感触は忘れないでくれよ?」
耳元でユリウス様が囁かれた瞬間「ボンッ」と顔が沸騰したように熱くなり、そのまま倒れました。
「おっと」とユリウス様が受け止めてくれ、その後ゴリさんに引き渡されました。
「……あんまり、こいつをからかわないでくれ。こういう事に免疫がないんだ」
「はははは。倒れるとは思わなかったが、私はからかったつもりは無い」
「……まったく」とゴリさんの溜息が聞こえました。
こうして私が落ち着くまで出発が遅れてしまいましたが、新たに増えた仲間三人を引き連れエンバレク国へと向けて出港しました。
こんなに長いこと便利屋の皆さんと一緒にいたのは初めてで、中々大変ではありましたが、楽しかったのも事実。
先程までいい思い出で締めくくれる予定でしたが、ユリウス様の行動で全てが台無しです。
はぁ~とため息混じりに、遠くなっていく陸を見つめながら今回の旅を振り返りました。
こうして、長い長い家族旅行は幕を閉じました。
……その後しばらくの間、皆さんにからかわれたのは言うまでもありません。
今回のお給金……800万ピール(木箱の中身を7等分)+500万ピール(出張手当+傷害手当)
借金返済まで残り5億6千740万2100ピール
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あとがき
いつもありがとうこざいます。
グロッサ国編これにて完結です。
次回からは、またエンバレク国にてマリーさんが借金返済の為に奮闘します。
引き続き読んで頂けたら幸いです。
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