第41話街外れの屋敷
「ヤン、ジェム!!」
ゴリさんのお兄様が潜伏しているとみられる屋敷に着き、先に到着しているヤンさんとジェムさんの元へ。
「……兄貴と見張ってたけど、人どころか獣の気配すらないんだけど、本当にいんの?」
確かに、この屋敷からは人の気配は感じられませんね。
ですが、ゴリさんは「いる」と一言。
仕方ないので、屋敷の中へ踏み込みます。
扉を開けると中は蜘蛛の巣や埃まみれで、所々朽ちています。
恐る恐る中に足を踏み入れますが、歩く度に床が軋む音が鳴っています。
──いつ床が抜けることやら……
ゴリさんは一階の奥にある部屋の前で足を止めると、いきなりその扉を足で蹴破りました。
あまりの出来事に目が点になっている私達を尻目に「行くぞ」と先に進んで行くゴリさんの後を慌てて追います。
部屋の中は相変わらず人の気配もなく、荒れ放題です。
それでもゴリさんは何も言わず、何か探している様です。
「……あった」
ゴリさんの見つめる先には、床に扉が取り付けられていました。
「
扉に手をかけ、ゆっくり扉を開くと地下に続く階段が現れました。
こうなると、私達もお兄様が潜伏していると確信します。
そして地下へと続く階段に一歩足を踏み入れた、その時……
「待ってくれ!!」
声がかかり後ろを振り向くと、そこには剣を構えたユリウス様とティムさん。
「お前ら!?」
「──……ごめんねぇ。何度も止めたんだけど、この王子言う事聞かなくてさぁ。仕方なく、僕も付いて来たんだけど」
驚く私達にティムさんが経緯を説明してくれました。
呆れた様子のティムさんに反して、ユリウス様の方は既に戦闘態勢です。
「──……はぁぁ~。ここまで来て帰す訳にはいかんだろ……」
説明を聞いたゴリさんは大きな溜息を吐くと、渋々承諾しました。
こうして二人加わった所で、気を取り直し階段を降りていきます。
降りていった先は地下通路になっておましたが、所々に灯りが設置してあり何の問題もなく先に進めます。
廃屋に灯りを設置しているという事は、これは確実に人が存在していると証拠になります。
「……あそこだ」
ゴリさんが仰る先にはドアがあり、隙間から灯りが溢れていました。
「……行くぞ」
ゴリさんの背を見つめながら、キュッと気を引き締め後を追います。
そして、ドアに手を掛けゆっくり開けました──……
キーーン!!!
開けたと同時に剣が振り下ろされましたが、ゴリさんが受け止めてくれました。
すぐさま戦闘態勢を取りゴリさんに加勢しようとしましたが「待て!!」とゴリさんに止められました。
よく見ると、ゴリさんに剣を向けたのは偽ゲルダさんだった方。
そして、驚くべきはこの部屋の広さです。
騎士団の演習場並の広さを有しておりました。
その広々とした空間で呑気に椅子に掛けている男性が一人。
──あの方が、ゴリさんのお兄様?
思っていた人物とは、少々違いました。
ゴリさんのように褐色でガタイは良くなく、色白で細く筋肉がある様には見えません。
顔もゴリラではなく、どちらかと言えば狸?です。
「やぁ、ルッツ。久しぶりだね。元気そうでなによりだよ」
にこやかにお兄様がゴリさん向けて声をかけました。
──あっ、笑い顔は似てます。
「兄さんも元気そうだな」
偽ゲルダさんと鍔迫り合いになりながらも、返事を返しておりました。
「マリア。戻っといで」
偽ゲルダさんはどうやらマリアさんと仰るようで、お兄様が声を掛けるとすぐにゴリさんに向けられていた剣を収め、お兄様の元へ。
「──……兄さん、教えてくれ。どうして、俺を狙う?」
ゴリさんも剣を収め、お兄様に問いかけました。
「どうして?答えは簡単だよ、ルッツ。君は生まれた時から僕のものなんだ。それなのに、君は僕の元から離れていったよね?」
お兄様の口から出た答えはとんでもないものでした。
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