第8話使用人

私とルイスさんは隠密用の服に着替え、早速捜査開始です。


まずは、侍女の方々の様子を観察しましょう。


この屋敷の侍女の方々は大変仕事熱心の様で、休んでいる方は誰一人いません。

どの方も忙しそうに動き回っています。


「……侍女は問題なさそうじゃない?」


ルイスさんが、小声で私に問いかけてきました。


「――いけまんせんね。そんな簡単に人を信用するものじゃありませんよ?」


「……マリーは、もう少し人を信用した方がいいと思うよ?」


そんな会話を交わしている最中、一人の侍女の方が周りを気するような仕草をしていることに気が付きました。

私はルイスさんに目配せし、後を追います。


侍女の方が赴いた先は、屋敷の裏にある小屋でした。


「……あいつ、こんな所になんの用だろうね」


「……黙ってください。気づかれたら水の泡です」


「相変わらず厳しいなぁ」


ルイスさんはそう言うと、大人しく黙って私の後に続きました。


しかし、ルイスさんの言う通りこんな所になんの用があるのでしょう?

この小屋は屋敷に比べて大分痛みも酷く、とても女性の方が訪れるような場所ではありません。


――こんな小屋の使い道など、何かを隠すぐらいしかありませんよね。


私は、この侍女の方が何かを隠していると踏みました。

当主のレナード様に言えない物。例えば、犬や猫の動物。はたまた死体とか、ですか?


――出来ましたら、前者がいいのですが……


「……あ、小屋の中に入ったよ」


「私達も行きましょう」


周りを気にながら小屋へと入っていきました。

すぐさま私達も小屋の中が見える窓を探し、中の様子を伺います。


そこにいたのは、侍女の方と……──リチャードさん?


「えっ!?うそ!?もしかして、逢び――!?」


「しっ!!黙ってください!!」


思わず声を上げたルイスさんの口を慌てて塞ぎましたが、どうやら中のお二人に気づかれたご様子。

「誰だ!?」と、リチャードさんが外に飛び出てきましたが、私達は間一髪の所で身を隠しました。

リチャードさんは辺りに人影がないことを確認すると、侍女を屋敷へと戻るよう指示を出し、自分も屋敷へと戻って行きました。


「……ルイスさん、足を引っ張らないでください」


「――ご、ごめん。だって、あの場面に見たら突っ込みたくなるでしょ!?」


いやいや、それは貴方だけです。

今の私達は、隠密ですよ?隠密の意味分かっていますか?


「……まぁ、リチャードさんが何かを隠している事は確かですね」


「あの侍女の事も調べないといけないよね」


「そうですね……──では、侍女の方はルイスさんにお願いします。……ヘマしないでくださいよ?」


万が一の場合、後始末はご自分でお願いします。


「大丈夫大丈夫。これでもマリーの先輩だからね」


そう言うと、ルイスさんは早速侍女の方を追って行きました。


――さて、私もリチャードさんを追いますか。



◇◇◇



屋敷に戻り、リチャードさんを探すと庭で衛兵の方と何か話すリチャードを発見致しました。


――ここからでは、何を話しているか分かりませんね。


気配を消して、近くまで寄ると話し声が聞こえてきました。


「……リチャード様、それでは……」


「……えぇ。あのお客人には悪いですが……」


――お客人?私達の事でしょうか?


「しかし、レナード様は……」


「――しっ!!……なにやら、子猫が迷い込んでいるみたいですね……」


「子猫?」


――……ちっ、ここまでですか。


仕方なく私はすぐさまその場から退散し、人目の付かない場所で一息つきました。


しかし、あの方リチャードさん、私達が思った以上にやり手のようですね。


――何とも、やりにくい……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る