第50話美女と野獣

「で、どうやって、母親を見つけるの?」


テーブルを囲み、これからの事を話し合います。

早速シモーネさんが、質問を投げかけてきました。


確かに、この子の情報は少なすぎます。

悪い人は世の中にごまんといるのです。

その中からピンポイントで探し出すのは中々至難の業です。


「この子の家に行って手がかり探してみる?」


「……あると思うか?」


ティムさんの言葉に、ゴリさんが一刀両断しました。

確かに、この子の家に行っても大した収穫は得れないでしょう。


「…………」


「『手当り次第潰せばいいだろ?』と申しております」


「……馬鹿かお前は?俺らが捕まるわ」


皆さん頭を抱えて悩みますが、誰もいい案が浮かびません。

女の子は終始不安な顔で、私達の話を聞いていました。


「……あいつに頼むか……」


ポツリとゴリさんが仰りました。

その言葉を聞いた皆さんは一斉にゴリさんの方を見ます。


「誰ですか?あいつって?」


「ああ、昔馴染みの友人だ。……ただ、相当変わりモンでな……」


私が問うと、ゴリさんが教えてくれました。


ゴリさんに変わり者と言われる逸材ですか?

相当ですね……


とりあえず、このままこうしていても先に進めないという事で、明日ゴリさんのご友人の方の元へ行くことが決定しました。


しかし、そのご友人の方は人嫌いらしく、大勢では行けないと言うことになり、ゴリさん、ヤンさん、シモーネさん、私の4人が行く事に決まりました。


ルイスさん、ティムさん、ジェムさんはお留守番兼子守り役です。


ジェムさんは案の定「兄貴と一緒に行きます!!」と騒いでおりましたが、「あんましつこいと師弟の縁を切られるぞ?」とルイスさんに言われ大人しくなりました。

ルイスさん、たまにはいい事を言います。


まあ、確かにジェムさんはヤンさんの腰巾着ですからね。

一緒にいないと不安なのでしょう。


「さあ、明日に備えるぞ」


ゴリさんは、そう言うなりミレーさんに何かをお願いしておりました。



◇◇◇



「ちょっと!!本当にこんな所にいるの!?」


私達は今、森の道無き道を歩いております。

当然、シモーネさんから文句の一つや二つ出てまいります。

獣道すらない森の中を、ゴリさんを信じて突き進みます。


「いや~、昔は道だったんだがなぁ。こんな草木だらけになっているとはな……歳を取ったはずだ。あははははは!!!」


「笑い事じゃないわよ!!こんな事なら、私が留守番してたわよ!!」


シモーネさんは、飛び交う虫を払いながらゴリさんに文句を申しております。


しかし、シモーネさんは留守番できませんよ。ネリさんはシモーネさんを見ると泣き出してしまいますから。


シモーネさんの愚痴を聞きながら、どれ程歩いたしょうか?ようやく開けた場所に辿り着きました。


その場所は眩しいほどの木漏れ日が降り注ぎ、一面の芝生がそよそよと風に吹かれていました。

それはまるで、御伽噺の世界に入り込んだような幻想的な空間でした。


今まで愚痴を言っていたシモーネさんも、黙ってこの空間を眺めておりました。


「──誰じゃ?」


目の前の大木から声がかかりました。

見ると、大木の枝に一人の女性の姿が見えました。


「おお、久しぶりだな、シャーロット。俺だ」


ゴリさんが大木を見上げながら返事を返しています。

すると、女性の方は何メートルもある高い枝から飛び降りました。


「危ない!!」とシモーネさんが叫びましたが、女性の体はゆっくり地上へと着陸いたしました。


木漏れ日の中、舞い降りて来たその姿はまるで天女のようでした。


「なんじゃ、久しい声だと思い降りて来たが、ルッツか」


「久しぶりの友人になんだとは、ご挨拶だな」


ゴリさんのご友人、シャーロットさんは言葉を失うほど、お美しい方でした。腰まである美しい銀髪に切れ長の目。そして強調する所は強調し、締まるところは締まっている羨ましいほどの体つき。この様な方がゴリさんのご友人とは……。

正しく、美女と野獣。


──本当に天女の様な方です。……でも、それより……


「ゴリさん、名前あったんですか!?」


「しかも普通!!面白味も何もないわ!!」


ゴリさんに名前にあったことに驚きました。

シモーネさんも驚いたらしく、私に続いて一言申しておりました。


「お前ら、ぶっ飛ばすぞ!!!」


案の定、ゴリさんの雷が落ちました。


「はっはっはっ!!愉快な奴らじゃな。そ奴らはお前の嫁か?」


「「違います!!!!」」


思わず、シモーネさんと返事が被りました。

シャーロットさん、勘弁してください。私にも一応、選ぶ権利はあります。


「……お前ら、そこまで否定されると流石の俺も凹むぞ?」


いや、否定されないとでも思っていたんですかね?

シモーネさんに至っては、苦虫を噛み潰したような顔をしていますよ?


「はははは!!!──で、妾に何用じゃ?喜劇を見せに来た訳じゃなかろ?」


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