第44話騎士団寮再び

熱を出し、倒れてから熱が下がるまで丸々3日かかりました。

ルーナが連れてきた牛により部屋を滅茶苦茶にされたので、一時的にテレザ様と同室になりました。

空き部屋があれば良かったのですが、丁度新しい侍女が入ってきて部屋がなく、仕方なくテレザ様のご好意に甘えさせていただきました。

テレザ様の手厚い看病により、無事に風邪を克服し本日から仕事復帰です。


そして、復帰最初の仕事して呼ばれたのは何故か、騎士団寮です。


──ここは、女子禁制のはずなのですが……


「おお、マリアンネ。病み上がりに呼び出してすまないな」


私の目の前にやって来たのは、第一騎士団団長のフリード様です。


「いえ、これも仕事の内ですので構いませんが、騎士団寮ここは女子禁制では?……まさかと思いますが、私を男性だと?」


生まれてこの方、男性に間違われたことはありませんが、万が一と言うことも有り得ますので。


「あはははは!!分かってる分かってる!!特例だ!!」


良かったです。

万が一にも男性だと言われたらどうしようかと思いました。


「それで、私は何故呼ばれたのでしょうか?」


「ああ、それだがな。ここは男しか居ないだろ?だからな、掃除が行き届かんのだ。ぼちぼち汚れが目立ってな。たまにこうして掃除などをお願いする為に侍女を呼んでいるんだ」


そう言う事でしたか。

確かに、男性だけでは掃除の手が行き届きませんね。


「……いつもは、テレザにお願いしていたんだがな。いい加減勘弁してくれと言われてしまってな……」


あのテレザ様が根をあげる汚さですか!?

それは興味深いです。


「しかも、ここは狼の巣窟でな。下手な侍女は呼べん。……たまにノリノリで名乗り出る侍女も居るんだが、明らかに掃除目的では無いのでな……」


──下心丸出しですね。


確かに、騎士ともなれば高給取りですから、この様なチャンスをモノにしたい方がいるのでしょう。

侍女の中にも数人、女豹の様な方がいますからね。

その様な方の獲物にならないよう、お気をつけください。

女豹に一度目を付けられたら最後です。骨の髄を吸い尽くすまで離れませんよ。


──狼より女豹の方が、ある意味タチが悪いです。


「そこで、マリアンネ。お前の名が上がった」


なるほど、そう言う経緯があったのですね。


確かに、私は狼だろうと野獣だろう屈する事はありません。

寧ろ、返り討ちにしてみせましょう。

ましてや、女豹にもなりません。


「無理強いはしないが、俺としてはマリアンネにお願いしたい」


頼られるのは嬉しいことですが、病み上がりにこの寮を一人でですか?

少々返事に困りますね……


「……テレザから伝言だが、特別手当出ると言っていたんだが……」


「やりましょう!!」


私が答えを出せず悩んでいると、素敵な言葉が聞こえました。

「特別手当」なんて素敵な言葉なんでしょう。


「……流石テレザだ、マリアンネの事をよく分かっている……」


ボソッとフリード様が何か囁きましたが、何を囁いたかは私にの耳には届きませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る