第30話爺や

改めて、爺やが家族の一員に加わり、実家が更に賑やかになりました。


爺やは早速、お茶を入れたり、部屋の中を片付けたりと動き回っていますが、その顔は大変嬉しそうです。


私もまた爺やにこうして会えたことが嬉しいです。


「母様、こちらフラン様からの預かり物です」


「あら、ありがとう」


いそいそ包みを開けると、出てきたのは大きな卵。


──危なかったですね。手荒に扱っていたら割れていました。

フラン様、割れ物なら割れ物だと一言欲しかったです。


「ところで母様、この卵は食用ですか?」


「違うわよ。フランに面白い卵があるから孵化させてみないかって言われてね。──そうだわ。マリー孵化させてみない?私、結構忙しくてぇ」


また面倒な事を言い出しましたね……

そもそも、なんの卵かも知らないのに孵化させるなんて危険極まりないです。


「大丈夫よ!!フランも孵化させたことがあるって言ってたし、凄く可愛いみたいよ!!」


それは、フラン様が孵化させた個体がたまたま可愛らしかっただけで、全ての個体が可愛らしいとは限らないんですよ?


しかも、卵にしては結構な大きさ、重さですよ?

そもそも、自分で育てれないモノを貰うなど言語道断です。


「もう貰っちゃったモノは仕方ないじゃない?今更返すなんて、フランに失礼よぉ。ね、マリー。ママの一生のお願い」


……母様の一生のお願いは聞き飽きました。

母様の一生は何度も巡ってくるんですか?


まあ、確かに貰ってきてしまったモノは仕方ありませんね。

母様に任せていたら、生きれる命も絶えてしまうかもしれません。


「……分かりました。私が引き取ります」


「流石、私の可愛いマリーだわ!!……あら?」


母様は喜び、勢いよく私に抱きついてきました。


すると、卵が包まれていた布からヒラッと何が落ちました。

見ると、フラン様が母様に宛てた手紙のようでした。


母様はその手紙を読み進めていくうちに、顔が輝きだしました。


──何か嫌な予感です……


「あなた!!マリーったら、エリックのお嫁さんになるみたい!!」


「なに-----!!!?」


予感的中でした。


「マリアンネはまだ嫁にはやらん!!パパ寂しいじゃないか!!」


「旦那様!!私も同感でございます!!」


爺やまで、何を言っているんでしょうか。


──というか、結婚は承諾しておりません。


「よしっ!!ラース、エリックと力比べをしてこようじゃないか!!私に勝てぬうちはマリアンネはやらんわ!!わははははは!!」


「あらあら、困ったパパ達ね」


母様、いいから止めてください。父様本気で行く気なんですが?

爺やまで、いつの間にか脳筋に侵されてましたね。


──まったく、実家と言うものは心安らぐ場所と聞きますが、まったく安らぎません。


「……父様、家から一歩でも出てみてください。全力で止めに入りますよ?」


「マリアンネ!?パパよりエリックの方が大事なのか!?」


また変な方向に拗れましたね。


「正直、エリック様も父様もどうでもいいのですが、父様が城に行けば騒ぎになります。誰が始末書書くと思っているんです?」


「……マリアンネ、今サラッと、酷いこと言わなかったかい?」


気の所為です。あまり考えすぎると禿げますよ?


「あなた、いいじゃない。マリーが決めた人なら大丈夫よ。あなたより強いはずよ」


いえ、きっと私にも勝てないと思います。


「……分かったよ、ママ。──マリアンネ、エリックに伝えておいてくれ。結婚の挨拶はまず、私に勝ててからだと」


それは、一生挨拶できませんね。

まあ、結婚するつもりは微塵もありませんので、あいさつは不要です。


「さて、そろそろ私は城へ戻ります」


「もう行くのかい?」


父様があからさまに寂しがっていますが、私は城に戻ってサンドイッチをいただかないといけないのです。


「せっかくお会い出来たのに寂しいですな」


会いにまた来ます」


「ママとパパも忘れないでちょうだい!!」


そうして騒ぐ脳筋夫婦を背に、卵を持って城へと帰路に着きました。


自室に戻ると、まずは卵を厚手の布に包み温めます。


──早く出てきてくださいね。


卵を優しく撫でてから、サンドイッチを頂きました。




本日のお給金……料理長お手製サンドイッチ


借金返済まで残り5億8千100万2100ピール

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