第11話豚さん

さて、困りました。

私は今ナタリーさんを担いでいる状態です。

そこにまさかの豚さん登場。しかも銃付きです。


──飛び道具は卑怯です。


「さあ、ナタリーを返してもらおう」


「……因みに、ナタリーさんをどうするつもりなんですか?」


「そいつは、バーリー公爵に嫁ぐことが決まってる」


バーリー公爵?


「バーリー公爵と言えば、一代で富を気づいたって有名ね。でも、バーリー公爵ってだいぶ高齢じゃなかったかしら?」


さすが、シモーネさん。男性に関しての情報は右に出る者はおりません。


「そうだ。あの爺さん、下の方も今だに健在でな。若い娘を探していたんだ。そこで、ナタリーの事を思い出してな。あの爺さんがくたばれば財産はナタリーの物になり、ワシの物になる」


ナタリーさんを生贄にするつもりでしたか。

ギリギリの所でしたね。


「せっかく、結婚相手を見つけてやったのに、ナタリーの奴そんな所には行かんと言い出してな。頭を冷やすために、ここに入れといたんだ」


「……ナタリーさんの事は分かりましたが、他の女性の方はどうしたんです?」


他の女性の方もその公爵様に嫁がせると言う訳ありませんよね。


「ああ、他の女はワシの愛人だった女だ。飽きたんでな。適当に売りさばこうと思って、ここに入れといたんだ」


──そう言えば、ナタリーさんの父親はクズでした。


「さあ、ナタリーを渡してもらおうか?」


「そこまで聞いて、渡す馬鹿はルイスさんぐらいですよ」


さて、困りましたね。

私はお荷物ナタリーを抱えてるので、逃げ切れるかどうか。


「……そうか。まあ、この屋敷の秘密を知られたからな。はなから生きて帰すつもりはないわ!!」


パンッパンッ!!


「──つっ!!!」


「マリー!!!」


足に銃弾が当たり、片足が使えなくなりました。

片足でナタリーさんを抱えているのは結構厳しいです。


──こんなに騒がしいのに目が覚めないとは、どんな神経しているんですかね。


「はははっ!!その足では動けまい!!安心しろ一発で仕留めてやる!!」


豚さんが再び銃口をこちらに向けてきました。

いよいよまずいと思った時──


「マリー!!!大丈夫!?」


「…………」


ギリギリの所で、ティルさんとヤンさんが駆けつけて来てくれました。

正直、遅いです。


「な、なんだお前達は!?ワシが誰だか分かっているのか!?」


「豚でしょ?」


ティルさんは素早く銃を奪い、ヤンさんが豚さんを締め上げています。


「お前、撃たれたのか!?」


あら?ジェムさん、いつからそこにいたんです?


「私よりナタリーさんをお願いします」


「わ、分かった!!」


「マリー、足を見せて」


シモーネさんが私の足を手当している間に、豚さんは外へ連れていかれてしまいました。


「ゴリさん達がいるはずだから大丈夫よ」


──出来れば一発殴っておきたかったんですが。


まあ、仕方ありません。しっかり法の裁きを受けてください。


◇◇◇


こうして、ナタリーさん監禁事件は幕を閉じました。

ミレーさんは、私が怪我したことを知ると泣いて謝られ、ゴリさんには小言を言われ、散々な日でした。


囚われていた女性達は保護され、ちゃんとした生活に戻ったようです。

……ナタリーさんは、流石に今回の件が堪えたらしく、随分大人しくなりました。


因みに、豚さんは爵位返上の上死刑、領地没収、屋敷の取り壊しが決まりました。




本日のお給金……ナタリーさん奪還80000ピール+怪我手当30000ピール+ミレーさんからの見舞金20000ピール


借金返済まで残り5億7千980万7100ピール

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