車内

春嵐

第1話

 この電車から降りれば。もう、彼とは会えない。最後の日。

 いつも通りの、そんなに混んでない車内。わたしは座って、彼は立ってる。

 今日が最後。

 でも。

 わたしは、彼の名前すら知らない。これから、どこへ行くかも。分からない。

 いつも気軽に話してるのに。言葉が、出てこなかった。なんて言えばいい。どう伝えればいい。

 名前も知らないのに、好きと言うのは、オーバーすぎるんじゃないか。せめて連絡先でも。

 どうしても、踏み込めなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る