第1話

別に愛に飢えている訳ではないけれど


心がなぜか満たされない気がして


私は初めて孤独を感じる。


別に友を欲す訳ではないけれど


物足りなさを実感して


私は真に孤独だと知る。


こんなにも与えてもらって生きているはずなのに


心の渇望は留まることを知らない。


欲しがらないと言えば言うほど


ちいさな悪魔が私の耳に囁く。


「いいか良く聞け、お前は人間の底辺だ。


しかも、お前はずうっとひとりぼっちだ。


これまでもこれからも


上っ面の関係で


誰もお前なんかに見向きはしない。


誰もお前なんかに味方しない。


そうやって満たされなさを育んで


腐った果実を産むだけの屍に成り下がる。


それでいいじゃないか。


不完全ゆえの脆弱性――――――


正義感ゆえの排他性――――――


自尊心ゆえの羞恥心――――――


実に不条理


だが、人間はそういう生き物だ。


これからもお前は蝕まれ続けるんだ。


生と死を形作った人間という名の蛇の目にな」


多くを語ったちいさな悪魔は


突然ふいと消えてしまった。


ああ、私はこの先もずうっと1人なのか。


消えない呪いが刻まれて


痛む胸を、押さえることしかできない私を


どうか笑ってください。

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