雨と孤独と死とケトラ

nira_kana kingdom

雨編

プロローグ

"生きている"と感じなくなってから、どれくらいの時間が経っただろうか。


空の藍色は、どこか物憂げに浸ってるような、ないような。


彼らは私の心を適切に映し出してくれる。


時々、涙を溢すように雨を降らせる。


雨は何時だって私の心の安らぎだった。


葉からこぼれ落ちる一滴の雫。


雨宿りにいそしむ子供達。


どこからともなくひょっこりと顔を出す、かたつむり。


地面から跳ね返って、我先にと人々に飛び付く雨粒達。


そのどれもが、緻密に作られた私のためだけの福音。


雨の奏でる音色は、どんな楽器の旋律よりも美しい。


そんな光景が、いつまでも続いたらいいのに。


雨は私の心を洗い流してくれた。


少しの汚れだって見逃さなかった。


だけど、何故だろう。


最近、雨が降っても私の心は癒されない。


そう思うようになってしまったのは、私の中の"人間"が死んでしまったのかもしれない。

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