第14話 戦場のロック

 アゥゴーの街。

 警備隊詰所にフロクを届けたロックとリルフィンは、そのままギルドへとやって来た。


「ロック、リルフィン」

「コミ姉ェ。それにリリアさん?」


 ギルドでは、パーティーリーダーのコミリアとギルドの受付嬢リリアが、何か話していたのだが、ロックと目があった途端手招きされたのだった。


「ロック。アンタに指名依頼。因みに私達3人は戦争に参加しない。ランクの事もあるけど、多分アンタの足手まといになるって思うから」

「コミ姉ェ。…僕は、受けようと思う。まだ、戦争に行く事、気持ちは整理出来てないけど。獣魔兵器…納得出来ない」

「そうね。その…理不尽って思う気持ち、それがアンタなんだし、アンタの力、アンタについて行く従魔達がハンパ無いの、そのやりきれない理不尽を正す為にあるんだと思う」

「あり…がと。コミ姉ェに言われると、僕もホッとする」

「では、ロック君。このアルナーグ辺境伯からの指名依頼、受ける事でいいのですね?」

 リリアの最終確認。

「はい、僕は戦争、行きます。あ、ごめん、リルフィン。今回は…」

「一緒だよ、ロック。私は、絶対一緒にいます」

「わかった。ありがとう、リルフィン」


 ロック達の指名依頼受諾は、領主アルナーグ辺境伯をホッとさせた。

「そうか。あの戦力はとても助かるからな。あぁ、セバスチャン、ライカー公爵と王太子にも連絡しといてくれ」

 準備中という事もあるが、この時アルナーグ辺境伯は王都ライドパレスにいた。


 王都の貴族街にて、辺境伯の別宅は公爵達の館区画に近いし、規模もそれ程変わらない。伯爵位とは言え、国境に接する広い領土を持つ辺境伯は、公爵に近い裁量と権限を持つ。ライカー公爵の領土は、その領都の名を取り、通称サリアナ公国と呼ばれているが、アルナーグ辺境伯の領土は、確かに人の住めない地域があるものの公国領を超える広さを誇る。1派閥の武を代表する貴族の名は伊達ではない。

 そのアルナーグ辺境伯の武力をもってしても、対抗するには骨が折れるトライギドラスと、その力を超えるであろうテイマーが味方でいてくれるというのは、戦争するにあたって、とても幸先の良い話と言えた。



「アルナーグ辺境伯から連絡がありました。例の凄腕テイマーが指名依頼を受けたとの事。これでトライギドラスが我が方の戦力です」

「それは重畳。1小国位を滅ぼせるテイマーと従魔、か。彼の獣魔兵器を一激で倒したと聞きましたが?」

「トライギドラスはAランクの竜種。これに勝てる魔物はS以上。となると、古代竜や伝説の神獣クラスですね。そうそう出会えるものではありませんよ、殿下」


 ウィリス王太子は、王の従兄弟であるステア=ライカー公爵の館に滞在していた。

「Aランクの竜種。よくもテイム出来たものだ。そのような者が我が国にいる。こんな幸運。本当に女神様に感謝だ」

「全く。それも此方の派閥の方に。アルナーグ辺境伯の忠節にも感謝せねばな。殿下、聞く処によると宰相殿は未だ法王国の本気度を甘く見ているようです。ノルク伯爵は流石に全力出撃するようですが後の者は」

「いいよ。それは挽回出来ない大きなツケになる。向こうを当てにしないですむ位の戦力が来てくれた事は本当に有り難い」



 一方その頃、宰相ラーデウス公爵は、

「法王国は獣人共を、その正当な地位に戻したいだけだ。ケモノのな。リーオー王国に攻め込んだとしても、我が国処かザルダン帝国にも本気では攻めて来ぬ。王太子は政治を知らぬ。此度の事で、学ぶであろう。私に任せておけば、国政は万事上手くいくとな」

 ワインを片手に、配下の武人へ指示していた。


 彼の目の前の机には、法王国からの密書がある。


 終戦後の取り決め。国境の青写真。

 試作兵器の実験的試用を主目的とした戦争。


 だが、法王国は、飛竜騎士団他、現状最強と言える師団兵団を揃えていたのだった。

 後日、それを知らされ狼狽える宰相。危うく国亡の危機に直面したかもしれない失策。『貴族派』に対し旗色が悪くなり、新たな派閥『王室派』を生み出す結果となる。



 そして、ライカー王国軍が、ウィリス王太子に率いられて出発した。


 ロックは、他の冒険者と一緒ではあったが、Aランクパーティー『悠久の風』と一緒の特別待遇、アルナーグ辺境伯の馬車の一団の中にいた。普通に考えれば、辺境伯軍の馬車に子供が乗っているのはおかしな事であり、違和感満載と言えるのだが、ここにいるのはアゥゴーの街の冒険者だ。ロックの事を知っている者ばかりである。

 途中、何回か魔物に遭遇するものの、C以上の冒険者しかいない集団であり、モノの数ではなかった。


 開戦して10日後。ライカー王国軍も無事、戦場たる法王国とリーオー王国との国境近く、バンナグ平原に到着した。


 布陣を終えたライカー王国軍の本陣。

 その天幕にリーオー王国軍とザルダン帝国軍の代表が訪れていた。

 リーオー軍代表、獅子族の獣人、ガルダ=リーオー第2王子。

 ザルダン軍代表、軍司令パック=レントン伯爵。


「ようこそ。私がライカー王国 王太子ウィリス。この軍の代表です」

「今回は我々の側に立って下さった事、心より感謝します。リーオー王国第2王子ガルダです」

「ザルダン帝国のレントン伯爵です。ライカー王国の参戦、女神の祝福があらんことを」


 早速、情報の共有・交流を行う軍首脳。

「やはり主力は獣魔兵器ですか。少しは数を揃えてきたという事か」

「連携は出来ないものの、個々の暴れっぷりが酷く現場が混乱してしまうようで。兵が魔物相手に慣れておらず、恥ずかしながら苦戦しております」

 顔をしかめるレントン伯爵。ザルダン軍は、今回それ程冒険者を動員してはいない。どうしても第3者という安易さが帝国中にあり、ギルドも動員に力を入れていない。また、帝国北部の、魔の山と呼ばれるギラズ山にアースドラゴンの群れが住み着いたのも大きかった。山の麓には帝国有数の穀倉地帯があり、護衛や竜退治にBランク以上が駆り出されてしまう。この辺り法王国の諜報能力の高さも伺えてしまう。

「恥ずかしい話です」

「まずは自国が優先。我が国の穀倉地帯に竜が出たとなれば、私も冒険者はそちらに行かせます」

「我らリーオー王国としては、来てくだされただけでも有り難いのです、レントン伯爵」


 その後の状況確認で、副将のノルク伯爵の顔色が変わる。

「ノルク伯爵? どうした?」

「殿下。どうやら宰相閣下は誤った情報を手に入れていたようです。私が耳打されていたものと法王国軍の規模が違う。しかも、飛竜騎士団の動きもある」

「つまり、法王国と宰相との間には何かやり取りがあった、と」

「おそらく。どうやら法王国は、我が国に出てきて欲しくなかったようです。と、言うより、我が国があのテイマーを連れて来て欲しくなかったというのが本音でしょう」

 派閥は違うとは言え、ノルク伯爵は副将として適格な分析をしてみせる。

「フム。そういう事か」

「ウィリス王子。それは、噂の凄腕テイマーの事でしょうか?」

「我が国でも噂は聞いています。従魔の強さがとても信じられない程だと」

 2人の外国人も色めき立つ。

「えぇ。何せAランクの竜種、トライギドラスが従魔なのですから。でも、彼はそれだけではありませんよ。従魔の数も6頭と、テイマーとしてかなり破格の腕です。更に本人も強い。戦闘に関してはAランク相当ときている。我が公国位ならば、彼等は互角に戦える。それ程の者達です」

「それは…、凄い…」

 噂以上の話に、絶句する両国代表。

 それが只の自慢話ではない事を、直ぐ思い知らされるのである。


「此方でしたか、殿下。ライカー公爵、ノルク伯爵」

「アルナーグ辺境伯、何か?」

 王太子の天幕にやってきたアルナーグ辺境伯。

「ロック君が、偵察してくれました。法王国は、かなり本気と思われます」


 驚く首脳陣。


「偵察した? 法王国の布陣をか?」

「これを…」


 広げたのは手書きの略地図。

 おおよその地形と布陣展開。部隊の規模、兵種。それらが割りと細かく書き込まれている。


「これは、本当に凄い。ここまで正確な物をどうやって?」

「ロック君…、例のテイマーですが、テイムしたレトパトとテイマーは、どれ程離れていても視界と思いを共有出来るとの事。レトパトは小さく戦闘力はスライム並みですが、飛行速度に飛距離、視力がずば抜けています。オーク討伐の時もそうでしたが、彼等の偵察能力は桁違いと言えます」

「本当に助かる。これだと、前面に獣魔兵器。結構広く展開しているな。後方に正規軍。騎馬隊。弓兵。こいつはいいとして、飛竜騎士団が此処か。奥にある上に2手に別れている。此方が本体で此れは予備? 先手を打って飛竜騎士団を何とかしたいが、こうも奥にあっては」

「それですが、ロック君が『何とか出来る、夜襲をさせて欲しい』と言っているのです。その事もあって、此方に伺いました」

「夜襲? 飛竜騎士団に夜襲をかけると? 」



 連合軍総本陣。

 各国本陣天幕とは別に、国境のバンナグ平原、リーオー王国側中央に臨時の砦があり、そこが連合国軍の中枢になっている。

 2国の代表とウィリス王太子以下ライカー王国の首脳陣も、場を総本陣に移していた。

 レントン伯爵やガルダ王子から聞かされた各国の副将や貴族達も、ロックの申し出に驚いたのである。

「この地図は、これは凄い。相手にこのような物を持たれては戦にならぬ! 」

「本当に味方で良かった。テイマーとはこれ程有能なのか?」

「レトパトがこれ程使えるとは? 何故今までこの偵察が行われなかったのだ?」

 軍人や貴族達が頭を捻る。


 レトパトは、割りと人里にも出没する小型の鳥型魔物だ。やや灰色の鳥で攻撃力もほとんど無いFランク。飛行速度と距離がずば抜けていて、行く先・拠点をよく覚えているので手紙のやり取りに使われる事が多い。テイムすれば使い勝手のいい魔物とは言われていた。だが臆病で人間嫌い、飛行速度がとても早いので捕まえる処か戦闘にもならないレトパトは、テイマー泣かせと言われる位テイムしにくい魔物だった。人間からも逃げ、戦闘にならないので人里にも出没してエサを探す事が出来るとさえ言われる魔物。最後には群れで向かってくるのでF、スライムというGの上の存在。ここまで偵察に使えるとは誰も思わなかった。


 そのロックが総本陣に来た時、流石にどよめきが起こった。噂に聞く、そして今見せたばかりの偵察能力。目の前の子供と結びつかなかったのだ。


「来てくれてありがとう、ロック君。アルナーグ辺境伯もご苦労様」

 アルナーグ辺境伯に連れられて本陣に来た子供2人。

 ロックとリルフィンが天幕の真ん中で跪き控えている。辺境伯自身は横の武将閣僚と共に立つ。

「まずはこの地図、本当に助かるよ。ありがとう」

「いえ。お役に、たてて良かったです」

「それで、飛竜騎士団への夜襲なのだけど?」

「手前に12頭、奥に4頭います。僕達で夜襲をかけ潰してきます」

 ざわめきが大きくなる。

「出来るのかい? 此処はかなり敵地の奥だが」

「僕達はトライギドラスの背に乗れます。その上でリルフィンの移動魔法『ワープ』を使えば、裏の沼地まで行けます」

「かなりの距離だが? 彼女の魔力は大丈夫なのか?」

「獣人ですが、私の魔力は9000ちょっとまで増えました。行く事は可能です」

「9000? 並の人間より高い魔力だね。獣人の君が何故?」

 種族的に1000を超える事も珍しいのだ。

「まさか! 君は魔狼族か?」

 リーオー王国は獣人の国だ。なので、そこにいる銀髪の少女が犬族等では無く狼族であろう事はピンときていた。魔狼族ならば筋力、魔力、敏捷性が並外れている。ガルダ王子の驚きは、テイマーの能力を知らされた時以上だった。


「奥の陣地をリルフィンとジンライ、スライに任せて、僕とドランでこの12頭を。やれます!」

「えと、ドランがトライギドラスだよね。後のは?」

 やっちまった? そんな表情のロックは子供そのものだ。

「です。ドランがトライギドラス。で、ジンライがアイスフォックス、スライがナイツスライム」

 出てきた名前がAとBランクばかり。周りが騒然となる。

「そうだ。皆呼ぶ」


 天幕の外に出る。

「『モンスターハウス』、出てきて!」

 テイマーのみの空間魔法。空間が開き、従魔達が出てくる。

 空にトライギドラスとレトパト。

 天幕前に降り立つアイスフォックス、ナイツスライム、フレイムコング、ポイズンスライム。

「今の従魔、これだけ」

「これだけって…、何時の間にアイスフォックスを? ナイツスライムなんて、あの森の中は勿論近くにだって…?」

「私は最初からロック様と共にいました。ビッグスライムから進化出来たのです」

 スライの語りかけに、絶句する首脳陣。

「は? 喋った?」

「ナイツに進化した私は、人間と意思疎通が出来ます」

 まるで笑うかのように、従魔達の声が響く。

「この…、この従魔達で?」

「飛竜…、ワイバーンはDランク。コイツらとなら大丈夫。飛竜騎士団潰して、そのまま法王国の陣地、引っ掻き回す」


 アイスフォックスはAランク。しかも竜種の弱みである氷魔法を得意とする魔物だ。連合国軍首脳陣に成功の希望が膨らんでいく。

「ロック君、では頼めるかな」

「はい。じゃ、リルフィン、行こ」


 モンスターハウスに従魔達を収容すると、ロックとリルフィンがトライギドラスの背に乗る。

「ドラン、頼むよ」

「パルルルル【O.K.】」

「ピルルルル【任せて】」

「プルルルル【行くぜ】」


 フワリ。

 風魔法なのか? 音も無くゆっくり舞い上がって行く。


「頼んだよ、ロック君」



 その頃、ミルザー法王国軍では、ライカー王国軍の到着の報告を受けていた。

「来たか。で、例の『法敵』はいるのか?」

「指名依頼という形でアルナーグ辺境伯が自陣に引き入れたと」

「そうか。では飛竜騎士団の諸君。あやつのトライギドラスは任せるぞ」

「所詮、子供が操る竜種1頭。我ら騎士団の敵ではありません」

「明日早朝にも仕留めてご覧にいれましょうぞ」

 まさか、陣地を細かく偵察されているとは夢にも思わない法王国軍。戦は夜が明けてから平原で。悠長に構えている感があった。


 だが、

「敵襲!!」

 騒ぎが大きくなっていく。

「どうした? 何が攻めてきたのだ?」

 火の手が上がる! あれは? 飛竜騎士団の陣地?

「飛竜騎士団が?攻められている? 何処からだ。あ、あれは?」

 上がる火の手に映し出される竜、トライギドラス。

「馬鹿な? 『法敵』め! 彼奴が攻めてきたと言うのか?」


「パルルルル【倒せ倒せ】」

「ピルルルル【殺せ殺せ】」

「プルルルル【ヤレヤレ】」

 竜の威圧と電光ブレスを放つドラン。ワイバーンが萎縮してしまっている?

「可哀想だけど、このまま焼き払う! ドラン‼︎」

「パルルルル【ウィンストリーム】」

 強い気流で動きを封じ込める風魔法。

「ピルルルル【喰らえ】」

「プルルルル【喰らえ】」


 ボゥウワ!ボボボッ!ボォウウウ‼︎

 3つの口から放たれる竜の真なる炎。


「ギャアアアアアアア!」

「ワァアア! た、助けてくれえ!」


 気流に乗って駆け巡る炎。ファイアブレスとウィンストリームの合体技!

 ワイバーンも竜種である為、麻痺抵抗を持っていた。だから電光ブレスはそれ程キキメがなかった。しかし、威圧、気流、炎の凶悪コンボには全く太刀打ち出来なかったのである。

 ワイバーンは勿論、世話役や騎乗する騎士も迫る炎から逃げ惑い、まさに地獄絵図の様相を見せていた。


「そんな…、飛竜騎士団…、馬鹿な、最強の……。何故だ? 何故彼処が陣地だと『法敵』は知っている? 誰かが『法敵』に味方したのか? 我が陣に裏切り者がいるのか?」

「もう1つは? 予備隊はどうした? 何故動かぬ?」


「じゃあ、ジンライ、いくよ?」

「コーン!【しっかり捕まっていろよ】」

 リルフィンが騎乗しても、アイスフォックスの動きには全く影響がなかった。

「コーン!コーン‼︎【アイスアロー!】」

 駆け巡りながら氷魔法を唱えるジンライ。竜種と相性の悪い氷魔法のお陰で、ワイバーン4頭の動きは極端に悪くなっている。陣中の人間やワイバーンに銀竜の魔槍でトドメを刺していく。

「これで此方はO.K. スライ、そっちは?」

 陣地の門番? 背に鞭状の器官を持つ犬型獣魔兵器3匹を呆気なく倒したスライが剣を仕舞う。

「終わりました。急いでロック様と合流しましょう」


「申し上げます。飛竜の予備隊、アイスフォックスと獣人の小娘の為に全滅しました」

「飛竜騎士団、ワイバーンが全滅!騎士や世話人達も逃げ出せず壊滅状態です!」

「馬鹿な、これは夢? 悪夢か? 16頭の飛竜が全滅だと?」

 最強騎士団の呆気ない全滅。法王国本陣は混乱の極みにある。


 それを隠れて見ているライカー王国軍。

「トライギドラスがファイアブレスを使うと、あんなにも凶悪なのか? A+って恐ろしいな」

 奇襲部隊先鋒は、冒険者の一団で構成されていた。指揮をとるのはAランクパーティー『悠久の風』のリーダー、アラン。

「よっしゃ! 今だ! 掻き回すぜ‼︎」

 前面の獣魔兵器の陣地に突っ込んでいくライカー王国の冒険者達。暴走状態なら兎も角、寝に入っている魔物を討つのはC以上の冒険者にとって、そう難しい事ではなかった。混乱して、場合によっては同士討ちを始めてしまう獣魔兵器。

 結局此方も壊滅状態になっていく。


 帰りがけの駄賃とばかりリルフィン達と合流したロックは、そのまま弓兵がいる陣地に奇襲をかける。


「うわっ! て、敵襲!!」

「と、トライギドラス? ギャアアアアアアア!」


 バリバリバリバリ!


 電光ブレス炸裂。ワイバーン等竜種とは違い、人間達に麻痺付加の電光ブレスは致命的だ。動きが悪くなった処にロックが斬りかかっていく。


 輝く大剣をもって、閃光の様に動き回り、竜の如き強さで弓兵を倒していく。あっという間に接近されるので、全く弓を構えられなかった。

「何だ? あの子供は? 竜の子か? まるで輝竜だ!」


 これ以降、ロックには『輝竜』の異名がつくのだった。


 この奇襲で、ミルザー法王国は飛竜騎士団、獣魔兵器、弓兵師団を失ってしまう。人数規模としては1/4にも満たないモノだったが、主戦力をほぼ失ってしまったことになる。完敗、それも1人のテイマーによって。『法敵』への恨みは、大きくなっていく。


 その知らせに王太子ライズ=ミルザーは、無言で天を仰いでしまっていた。

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