第6話

私は、山下先輩から聞いた話をどうすれば良いのか分からなかった。

泣けば良いのか、蓋をして見て見ぬフリをするのか?


言葉を失う。こんな話、この世にあって良い話じゃない。


でもこれを言うと先輩の全てを否定してしまう気がした。

部屋を見た日から台湾有事も、先輩が所属していた部隊も調べた。

戦闘の記録はたまに吐き気を催す程だった。


それと先輩と山下先輩が付き合っていた事も、、ショックだった。


山下先輩に聞かれた

『明広とはどこまで進んだの?』

付き合っていない。ただ家には泊まった。何もなかった。例の部屋を見てしまった。

全てを伝えると山下先輩はいつも通り笑いながらこう言った。

『彼らしいね。昔のは捨てないで私のは全部捨てたんだ』



結局私の中で出た結論は、「干渉しない」だった。

そっと見守っておこう。

先輩は考えられない光景を見て体験してきた。だからもう思い出させる事は止めよう。




それからは山下さんと共にご飯を楽しみ帰ろうとした。

『あ…』

山下先輩が1ヵ所を見つめ口が開いたまま


そこに居たのは先輩と3人の男性。


先輩と目があった。

先輩も、山下先輩も、私も固まる。





目が覚める。今日程目覚めが中途半端な日は無い。


紛争が終わった喜ぶべき日?

紛争の死傷者を思い出す日?

人それぞれあるのだろうが、私は、、私は何を目的にすべきか未だに分からない。


東京某所にて毎年開催される慰霊祭には天皇陛下や総理大臣など、日本を代表する人々が参加する。その人々に混じり参加する一般人。


『『よ、今年も会えたな』』

「お、阿部に山田!元気そうだな。小池はまだか?」

『よ、今年も揃ったな、4人共』

「おぉ小池、んじゃ行くか」


式典を終えた彼らは会場を後にし店へと歩く。

元々同じ部隊で紛争を戦い抜いた4人だった。


「最近皆はどうなんだよ」


『俺はイマイチだなー』

阿部は明広と高校時代からの同期だった。3人の中で一番明広と仲が良く、現在無職。

『こっちはまあまあ』

山田は空挺団で仲良くなった仲で会社員へ変わる際の転職活動では明広と共に活動した。現在は会社員。

『俺はダメダメだね』

笑いながらもそう言うのは小池。戦闘で右脚を失い、治療までにモルヒネを使い続けて体はボロボロに。

現在は無職


4人はその後も他愛もない会話を続けていく。

そんな中で明広の動きが止まった。


『おい、どうしたんだよ。幻覚でも見たか?』

小池が笑いながらそう言うと阿部は『あの人達か?なんかあっちもこっち見て固まってるけど…呼ぶか、挨拶だな』と手招きをし始めた。


4人の席に近づく2人の女性、特に1人はずっと下を向き声も小さい。

阿部、山田、小池の挨拶も終わり、山下ら2人の挨拶も終わった。明広の同僚と後輩ということでもっぱら会話は会社の事だったが、盛り上がったらしく。

山田に至っては山下に連絡先を聞くまでに盛り上がっていた。

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